500メートル走行といえば簡単そうに聞こえるかもしれない。しかし、それが月面だとしたらどうだろう。それほど簡単ではないかもしれない。

「ルナーXプライズ」(Lunar Xprize)は、グーグルが主催する月面探査レースだ。決勝に出場する5つのチームには、(1) 探査機を月に着陸させる、(2) 探査機を着陸地点から500メートル移動させる、(3) 高解像度の月の静止画像と動画を地球に送信するという3つの課題が与えられている。

この3つの目標を全て最初に達成したチームは、優勝賞金2000万ドルを手にする。たとえ月への到着が最初でなくても、月面を5キロ以上移動したり、過去のアポロ・ミッションの着陸地点から月のビデオ映像を配信できれば、数百万ドルの賞金を獲得できる。

「チームはそれぞれ限界に挑戦してきた」。ルナーXプライズのシニアディレクター、チャンダ・ゴンザレス・マウラーはこう語る。

1969年にアポロ11号で月に到達した宇宙飛行士は 、フィルムカメラでつきの写真を撮影したが、このレースに参加するチームは高解像度ビデオの撮影を目的の1つとしている (NASA)

1969年にアポロ11号で月に到達した宇宙飛行士は 、フィルムカメラで月面の写真を撮影したが、今回のレースに参加するチームは高解像度ビデオ撮影を目指している (NASA)

決勝戦出場チームを以下に紹介する。

ムーン・エクスプレス

ムーン・エクスプレスはシリコンバレーのスタートアップ企業。月は「8番目の大陸」で、宇宙探査の次の重要なステップと捉えている。また月の資源について解明し、開発・商業利用したいと考えている。同社の月面探査機はロケット噴射で月面を跳ね回る。

Moon Express

チーム・インダス

インドで技術革新に取り組む人々で構成されるチーム・インダスは「途方もない夢を持った普通の人が集まると素晴らしいことを実現できる」とチームの特徴を説明する。ECA(ヒンディー語で「1つの小さな願い」を意味する語句の頭文字をとったもの)と名づけられたこのチームのローバーはアルミ製で、2008年に公開されたピクサー・アニメーション・スタジオ製作の映画「ウォーリー」に登場するロボットに似ている。

Team Indus

シナジー・ムーン

メンバーが十数カ国から参加する国際チーム。Xプライズにエントリーしたが決勝進出を果たせなかった28チームのメンバーも含まれる。このチームのローバーは、カリフォルニア州に本社があるアメリカの航空宇宙メーカー、インターオービタル・システムズのネプチューン8ロケットに搭載されて月に向かう。

Synergy Moon

ハクト

東京を本拠地とするチーム・ハクトは、小型ローバー「テトリス」と「ムーンレイカー」を月に送る。2台のローバーは、長期間火山活動が休止状態にある溶岩洞の「天窓」の役割を果していると考えられる穴の探査を目指す。この溶岩洞は、火山活動が活発だった時期の遺物と考えられている。

Slush _Tokyo

スペースIL

スペースILは月面に着陸し、その後呼び燃料を利用して飛び立ち、500メートル先に再度着陸する宇宙船「ホッパー」を開発した。イスラエルに拠点を置くこのチームは、新世代の人々が科学と宇宙に関心を持つよう促したいと考えている。

Weizmann

 

 

2007年以来、30チーム以上がルナーXプライズを目指して競い合ってきた。その素晴らしい活動をYouTubeで見ることができる。

優勝賞金を獲得するには決勝戦参加チームは2017年中に打ち上げを成功させなければならない。