ジェイソン・ハイランド 在日米国大使館 首席公使

ジェイソン・ハイランドは現在、在日米国大使館の首席公使を務めている。語学の学習を趣味のひとつとし、日本語も堪能で日本の映画や文学にも造詣が深い。これまで職務や研究活動で何度も日本で暮らした経験があるが、2014年からの今回の駐在でNHKの朝の連続テレビ小説の大ファンになった。ハイランド公使から見た朝ドラとはどのようなものだろうか?

 

「びっくりぽん!」―先日、仕事でつき合いのある日本人の方々と会食したとき、この言葉を使ってみました。NHK連続テレビ小説がどのくらい日本の社会に浸透しているのか知りたいと思ったのです。反応は上々。その言葉にピンときた一同は、皆笑い出しました。

皆さんご存知でしょうが、「びっくりぽん!」は朝ドラ「あさが来た」のヒロイン、白岡あさの驚いたときの口癖です。何を隠そう、私は朝ドラの大ファンです。昔、日本に住んでいたときは時々見る程度でしたが、15年ぶりに日本に戻ってきてからは、見事にはまってしまいました。既に終盤にさしかかっていた「花子とアン」から始まり、その後の「マッサン」では、すっかりとりこになりました。国境を超えた夫婦愛、一人の日本人起業家の壮大な物語、日本でのウィスキー作りの歴史を組み合わせたこのドラマに、まさにくぎ付けとなったのです。ヒロインのシャーロット・ケイト・フォックスさんには私もお目にかかる機会がありましたが、当時日本語が話せなかったにもかかわらず、感情を込めたせりふ使いで、圧巻の演技力を見せてくれました。

個人的にケーキ作りにあまり興味がないからでしょうか、「まれ」にはさほど夢中になりませんでしたが、能登の風景や、ウィスキー作りとはまた違う分野での起業の苦労、複雑な家族模様を興味深く見ていました。

毎朝8時からの朝ドラを楽しみにしているので、見逃した日は本当にがっかりしていました。でもある日、NHK総合だけでなくBSチャンネルでも一日に数回、再放送されていることを知りました。この意味で朝ドラはまさに「ubiquitous」。つまり、いつでも見ることができ、見逃したとがっかりする必要などなかったのです。

日本の歴史を勉強している者にとって、こうした朝ドラは、20世紀初期の日本人の暮らしや、日本初の女子大学のような画期的な機関や制度の創設、さまざまな産業の創成期に直面する苦労などを事細かに描写しており、引き込まれます。ファッションもドラマに花を添え、特に明治から大正時代にかけて和服と洋服を融合させた着こなしは、目にも楽しいものです。

朝ドラが作り出す社会現象も面白いです。私は「五代ロス」には陥りませんでしたが、女性起業家としての白岡あさの成長、そしてドラマで語られる家族の役割や女性の社会進出の機会などに興味をかきたてられました。

私は、この15分のドラマを、日本の社会や歴史について考察し、普段耳にすることのない方言を覚える機会として活用しています。

明日から「とと姉ちゃん」が始まります。このドラマ、どのように展開していくのか、待ちきれません。