獅倉円 在日米国大使館 報道室インターン

米国における同性婚合法化運動推進のために2003年に設立された組織「Freedom to Marry」代表であり、タイム誌で「世界でもっとも影響力のある人物100人」にも選ばれたエヴァン・ウォルフソン氏が、今年2月米国大使館の招きで来日し、米国で同性婚が認められた意義について各地で講演しました。今回私はウォルフソン氏にインタビューし、全米で同性婚が認めらた意義と今後の課題について伺いました。

同性婚合法化運動推進のために2003年に設立された「Freedom to Marry」

同性婚合法化運動推進のために2003年に設立された「Freedom to Marry」(写真:freedomtomarry.org)

憲法における平等と自由の保障を再確認する歴史的判決

アメリカン・ビュー(以下“A”): 昨年、米国の連邦最高裁判所で同性婚を認める判決が下りましたが、これは米国社会にとってどのような意味がありましたか?

ウォルフソン氏(以下“W”):第一に、今まで法的に結婚できなかった人たちが結婚できるようになり、全米で100万人以上の同性愛者が法的に結婚しました。そして同性愛者自身だけでなく、その家族や友人など周囲の人々もこの判決を喜んでいます。今では多くの同性愛者のが、異性愛者と同じように結婚に伴う喜び、幸せ、安心感を感じられるようになっています。

第二に、これは同性愛者にとっての勝利というだけでなく、全てのアメリカ人にとっての勝利であり、人権の勝利でした。なぜなら米国憲法上で平等と自由が保障されていることを再確認する判決だったからです。また、この判決は米国民の考えを反映しています。というのも、私が1990年代に活動を始めた当初は27%ほどだった国民の同性婚に対する支持が63%に増えているからです。全米で70回以上の裁判を経て、最高裁が同性婚を禁止する理由はないという結論に至ったわけですから、とてもうれしく感じています。

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A:本件のような大きな社会的変化には時間がかかります。最高裁判所での勝利に至る転機となったのはいつですか?

W:同性愛者の結婚が認められるまでの約40年間、多くの議論を重ねました。話し合いを通じて、同性愛者はコミュニティーの一部であって、彼らにとっても結婚が重要であることを米国民が理解し、考え方が変化していったのです。政治家や裁判所に積極的に働きかけることも重要でした。勝利したときは喜びと、もう闘わなくていいんだという安ど感で涙が出ました。

A happy clip from Freedom to Marry's 7/9/15 VictoryCelebration award-winning video, created by Eyepop Productions.

2015年7月9日、最高裁判決の勝利を祝う人々(Freedom to Marryのビデオクリップより、created by Eyepop Productions)

A:必ず勝利するとずっと信じていたそうですが、それはなぜですか?

W:自分の生き方について周りの人に説明したり、同性愛者に対する異性愛者の誤解を正したりすれば、ほとんどの人は偏見を捨ててくれます。他人を憎みたいと思っている人はまれで、多くは敬意を持って人に接したいと思っています。私はずっとそう信じてきました。啓発活動を通じて人々の理解を促すことが私たちの仕事だと信じてきました。

A:同性婚が認められた今、今後の課題は何でしょうか?

W:米国では、政府が同性婚を認めず同性愛者に対する差別をしていた時代は終わりましたが、いまだに雇用、住宅の供給や公共の場での差別はなくなっていません。これらは今後解決していかなければならない課題だと考えています。

社会変革に必要な「対話」

A:東京都渋谷区は、日本で初めて同性カップルにパートナーシップ証明書を交付する制度を始めました。これは大きな一歩ですが、まだ同性婚の合法化が実現できたわけではありません。このような大変革を日本社会で起こすために私たち若者に何ができるでしょうか?

W:変革のエンジンは対話です。同性愛者や社会における公平さについて人々が話すことで変化が起こります。偏見が少ない若者は、話し合いの場をつくり増やすという点で大きな貢献ができます。アメリカでは若者が変革を主導していた側面もありました。日本でも同じことが可能です。

A:日本のメディアではLGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー)の人々はドラァグクイーン(女装した男性)のように表現されています。そのため、LGBTの人々は身の回りにいる、ごく普通の人だと思われていないのではないでしょうか?

W:ある調査によると、アメリカでは調査対象者の55%が身近に同性愛者の知人がいると答えているのに対し、日本ではこの数字はわずか5%です。一方で、私が今回の訪問で驚いたのが、同性愛者ではない人々が熱意を持って、この問題で日本を前進させようとしていることです。日本では、同性愛者自身がもっと自分自身について話し、理解してもらうように努める必要があり、一方で同性愛者ではない人も、誰をも平等に扱うという価値観を発信していかなければなりません。

A:日本の人たちに何かビデオを通して伝えたいメッセージはありますか?

身近な人と議論し、自分の意見を発信することから始めよう

私にとって初めてのインタビューであり少し緊張しました。「変化を起こす源はディスカッション、話し合いにある」というウォルフソン氏の言葉が非常に印象に残りました。40年をかけ、愛とつながりを多くの人に提供できるような大きな社会変化を起こしたウォルフソンさん。日本で多様性が受け入れられる環境をつくるには、若者の私たちが同性愛者について友達と話し合い、同性愛者と意見を交換するなど、身の回りでできることがたくさんあると思いました。同性愛や同性婚について何気ない会話や議論が増え、そこから生まれた活動が力になって大きな変化が生まれるのだと思います。私自身、まずは気軽に身近な人と議論し、自分の意見を発信することから始めようと思いました!  皆さんもぜひ、周囲の人と話し合ってみてください!