ジョン・ケリー 米国国務長官

北極圏グリーンランドで溶ける氷河 (AP Photo)

北極圏グリーンランドで溶ける氷河 (AP Photo)

過激主義や伝染病から貧困、核拡散に至るまで、我々は今日、実に多くの地球規模の問題に直面している。これらの問題には共通した特徴がある。国境がないということだ。気候変動もこのリストに入っており、地球全体の大きな脅威となっている。

私はこれまでのキャリアを通じて、気候変動の問題について個人的に関心を寄せてきた。この問題については、各国の指導者および米国内で指導的立場にいる人たちと定期的に協議している。しかし、これは政府だけの問題ではない。誰もが影響を受けるのだから、誰もが関わるべき問題だ。よって、気候変動の問題には、各国政府および個人による国際協力と緊急の行動が不可欠である。

だからこそ私は本日、大西洋評議会が主催する「パリ合意への道」イベントの第1回会合で話をした。今年12月には、各国の代表が国連気候変動パリ会議において、意欲的で包括的な合意に向け協議する。科学的には、気候変動が及ぼす最悪の影響を回避する時間はまだ残されているが、すぐに時間切れとなるだろう。

パリで妥結しようとしている合意が間違いなく、重要な第一歩になる。この合意により、この問題の重大性および我々一人ひとりが解決に貢献する必要性を、世界各国が認識していることが明らかになるからだ。

リスクは高い。我々がこの重大な脅威に対して団結できなければ、将来の世代は我々の取り組みを政策の失敗として評価するだけでなく、集団でおかした、歴史的に重大な意味を持つ道義的失敗とみなすだろう。実際、弁明の余地はないだろう。科学者でなくても、世界がすでに変化していることを理解し、地球規模の気候変動が及ぼす影響を感じることができるからだ。

多くの地球規模の課題とは異なり、この問題にはすぐに活用できる解決策がある。エネルギー政策だ。正しい選択をすれば、気候変動の最悪の影響を受けて人類が永遠に破滅するのを防ぐことができる。我々には最悪の結果を避ける時間がある。ただし、クリーンエネルギーを利用するグローバル経済への転換を優先課題とし、自動車の動力源や住宅の暖房方法、事業の営み方について独創的に考えることができた場合に限られる。本当にそれほど簡単なことなのだが、そこに到達するのは簡単ではない。

では、この問題を解決するために必要なことは何か? まず、我々を正しい道に導くため、政策面で難しい選択をする政治的勇気を持った指導者たちが必要だ。オバマ大統領はこの課題を引き受け、真正面から取り組んできた。大統領の「気候変動行動計画」のおかげで、米国は2020年までに温室効果ガスの排出量を大幅に削減する国際公約の達成に向け順調に進んでいる。クリーンな代替エネルギーにも投資しており、家庭や企業でエネルギーをより賢明に使うようになっている。これは、間違いなく、米国史上最も意欲的な気候変動に関する行動計画だ。

しかし、いくら強調しても足りないのだが、この問題は1カ国だけで解決することはできない。先進国が、クリーンエネルギーに依存した将来の実現に大きな役割を果たすことは明らかだ。しかし、世界の温暖化ガス排出量の3分の2は途上国からのものであり、途上国も解決策に関与しなければならない。

我々は差し迫って必要なエネルギーのコストだけを考慮することはできない。二酸化炭素汚染による長期的なコストおよび生存コストも加味しなければならない。これらの要因をすべて考慮すれば、クリーンエネルギーを今追求するコストのほうが、気候変動が及ぼす結果の代償を後に払うよりも、はるかに安くつくことがわかるだろう。

クリーンエネルギーは気候変動の解決策だけではない。史上最大の経済機会の1つでもある。我々が気候変動で行動を起こせば、世界各地で膨大な数の雇用が創出され、経済が活性化されるだろう。我々は、過去最大のビジネス機会の1つを活用するチャンスに恵まれている。

そこに至るには、すべての国がエネルギーの使い方や投資についてより賢明になる必要がある。企業に対して賢くエネルギーを選択するよう働きかけなければならない。それに向かって全力を傾け、適切な連携関係を構築できれば、我々は米国の、そして世界中の地域社会に資する決断をすることができる。

簡単な質問をしよう。我々が行動を起こさず、気候変動に懐疑的な人たちが間違っていたら、どうなるだろう? 答えは明白だ。大惨事となることは間違いない。

結果がわかっていながら地球の未来を賭けるなど言語道断だ。不道徳であり、誰も取りたくないリスクをもたらす。我々は現実を見つめる必要がある。潘基文・国連事務総長が昨年9月に述べたように、地球はたったひとつしかない。

我々はこの共通の脅威に立ち向かうために必要な決意を固める方法を見いだすことができると、私は確信している。我々はパリで合意に達することができる。クリーンエネルギーに依存した将来への道を切り開くことができる。我々はこの課題に立ち向かうことができる。これは我々自身、子ども、孫に対する我々の責任であり、果たさなければならない責務だ。

*この日本語文書は、ジョン・ケリー国務長官が2015年3月12日に国務省の公式ブログサイト「DipNote」に投稿した文書の参考のための仮翻訳で、正文は英文です。オリジナルの英文はこちら:http://blogs.state.gov/stories/2015/03/12/noplanetb-tackling-climate-change-it-s-too-late