ジェイソン・ハイランド 在日米国大使館 首席公使

アメリカには、翌年に大学進学を控えた高校生の子どもがいる家庭が行う「road trip」と呼ばれる昔からの習慣があります。これは、出願を検討している複数の大学を家族と共に車で訪問する旅のことです。出願する大学を決めるプロセスは子ども、親双方に相当のストレスを与えます。子どもは、「希望する大学に入れるだろうか?」とか「どこかに入学できるだろうか?」といった不安を募らせ、一方親はできるだけ子どもの力になろうとします。最善の対処方法は楽しむこと。アメリカには素晴らしい大学がたくさんあり、そのなかには必ずそれぞれの子どもにあった大学があるからです。

一家はステーションワゴンやSUV、ハイブリッド車―車は何でもいいのですが―に荷物を詰め、綿密な行程表を作って出発します。旅行期間は夏休みや秋の時期の1週間ぐらいです。ほとんどの大学では出願締め切り日を1月1日前後にしているので、行きたい大学を選んだり、夢を見る時間はたっぷりあります。

各大学キャンパスでは、高校の最終学年の生徒(時にはその弟や妹)と保護者を対象とした説明会を実施しています。親御さんのなかには、入学事務局の人に名前を覚えてもらおうと、子どもに質問をするよう、せかせる人もいます。説明会では、学科カリキュラムや大学生活の基本だけでなく、大学の成り立ちやその地域にまつわる興味深い歴史についても知ることができます。

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アメリカには素晴らしい大学が各地にあるため、西海岸、ロッキー山脈、南西部、中西部などroad tripはどこでもできます。特に秋の時期におすすめの行程は、ワシントンDCからペンシルベニア州を経由してアップステートニューヨークへと北上し、バーモント州とニューハンプシャー州を通ってマサチューセッツ州へと抜ける道のりです。運がよければ、秋の紅葉真っ盛りのアメリカの美しい田舎町を訪ねることができます。また植民地時代のアメリカの歴史や独立戦争、この地にいたたくましい先住民たちの歴史といった、創成期のアメリカを垣間見ることもできます。

ほんの数例ですが、この地域にある大学キャンパスの写真をいくつかご紹介します。個人的に風情があると感じたキャンパスは、世界屈指の名門校、コーネル大学です。マンハッタンから車で5時間、アップステート・ニューヨークの、のどかな町にあります。19世紀に大都市から遠く離れたこの地に大学を作った創設者たちを尊敬します。近隣には美しいフィンガーレイクスがあり、地元産のワインを飲みながら、翌日の予定をたてるというぜいたくな時間を過ごすことができます。

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日本の皆さんにも、車で大学キャンパスを巡るroad tripをお勧めします。たとえそれが、アメリカの美しい自然がある場所や興味深い場所を散策する口実だとしても、できるだけ多くの方にroad tripを楽しんでいただきたいと思います。