第45代大統領を選ぶアメリカ大統領選挙まで、残すところあと数カ月となった。アメリカ大統領選が4年に一度実施されることは世界中の多くの人に知られているが、選挙プロセスについてこれ以上の詳細はあまり知られていない。

アメリカ大統領選挙は、11月の第1月曜日の翌日の火曜日に実施される。この本選挙に先立ち、候補者は有権者の支持を得るため、公開討論会に参加し、全米各地で遊説する。討論会や遊説は他の多くの国の選挙でも行われるかもしれないが、アメリカ大統領選が他の国の選挙と違うのは、各州で民主、共和両党それぞれの予備選挙または党員集会が行われ、党の大統領候補を選ぶ全国党大会へ送る代議員を選出する点だ。予備選挙や党員集会は1月から6月にかけて行われ、7月から9月までの間に各党の全国党大会が開催される。全国党大会はテレビ放映され、本選挙がスタートする。各党にとっては、自党の指名候補を売り込み、ライバルとの違いを明確にするチャンスである。

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1970年代以降、2大政党が最終的に指名する大統領候補は、全国大会以前に判明する状況が続いていた。予備選挙・党員集会のシーズン終了前に、その候補者はすでに代議員の過半数を獲得していたからである。その結果、全国大会は主として儀式的イベントの意味合いが濃くなっていた。しかし今年は何十年ぶりのことか、全国大会の結果が開催前に判明していなかった。いずれの党も、最終的に7月に開催した全国大会で、ヒラリー・クリントン氏とドナルド・トランプ氏をそれぞれ党の正式な大統領候補に指名した。

アメリカ人自身も十分に理解していない、アメリカ大統領選の特色のひとつが、選挙人団制度である。この制度の下では、本選挙で米国の国民が投票する(=一般投票)のは、厳密にいうと正副大統領候補ではない。各州で、ある候補者に投票すると誓った「選挙人」のグループに票を入れるのだ。選挙人の数は、各州から選出される下院議員と上院議員を合計した数である。大統領に選ばれるためには、50州とコロンビア特別区538人の選挙人票の過半数を得なければならない。

選挙人団制度の下では、一般投票でどれだけ得票したかは最終的には意味を持たない。その結果、各州の選挙に基づいて与えられる選挙人票数が、米国全土の一般投票の得票数と異なるというケースも起こり得る。事実、これまでの大統領選で、一般投票では最高得票を得られなかった候補者が当選したこともあった。その最初の例は1824年の選挙で当選したジョン・クインシー・アダムス、直近では2000年のジョージ・W・ブッシュがいる。

 

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各州の選挙人票は、メーン州とネブラスカ州を除き「勝者総取り」方式により割り当てられる。すなわち、各州の一般投票で、たとえ僅差であっても最高得票数を得た候補者が、その州の選挙人票を全て獲得できる。一般投票が実施された時点で、各候補者が獲得した選挙人票数が判明するため、次期大統領は12月に行われる選挙人による投票を待たずに決まることになる。しかし正式には、12月の選挙人投票、翌年1月の開票を経て、大統領が選ばれる。そして1月20日の就任式を迎えるのだ。

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