松田夏実・大木結 在日米国大使館 報道室インターン

アメリカ大使館では、2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて、「Go for Gold(ゴー・フォー・ゴールド)」キャンペーンを実施しています。「Go for Gold」は、外交官との交流などを通じて、児童・生徒にアメリカへの理解を深めてもらうことを目的としています。アメリカ大使館はこのキャンペーンを通じて、2020年までに東京都内338の小・中・高等学校と交流を行う予定です。

「Go for Gold」キャンペーンのスタート

「Go for Gold」は、東京都教育委員会の協力のもと、都が主催する「世界ともだちプロジェクト」の一環として行われています。このプロジェクトは、2020年東京オリンピック・パラリンピックに参加予定の国を選び、その言語や文化を学ぶことで、児童・生徒が国際交流に取り組むものです。全参加校のうち特別支援学校も含む338校が、アメリカについて学ぶことになりました。

「Go for Gold」を主催するアメリカ大使館広報・文化交流部は、アメリカについての理解促進をミッションの1つとしています。多くの生徒がアメリカについて学ぶこの機会は大変貴重であり、アメリカ大使館としても、ぜひパートナーとして協力したいと考えました。そこで始まったのが、この「Go for Gold」キャンペーンです。2018年6月2日に小池百合子東京都知事とハガティ駐日米国大使が、参加校である小学校の運動会を訪問し、キャンペーンの開始式を行いました。

目黒区立菅刈小学校にて「Go for Gold」キャンペーンの開始式に参加するハガティ駐日米国大使と小池百合子東京都知事(2018年6月2日)

目黒区立菅刈小学校にて「Go for Gold」キャンペーンの開始式に参加するハガティ駐日米国大使と小池百合子東京都知事(2018年6月2日)

昨年11月16日に日本記者クラブで行われた講演で、ハガティ大使はこのように述べています。「英語で『Go for Gold』とは、『最善の結果を目指して全力を尽くす』という意味です。東京オリンピックは素晴らしいスポーツの祭典になると確信しています。しかし、私たちが考える東京オリンピックの最善の結果とは、日米両国民があらためて強い絆で結ばれることです。それを可能にするのが『Go for Gold』なのです」。このようにハガティ大使は、オリンピック・パラリンピックを、日米両国民を結びつける新たなチャンスと捉えています。「Go for Gold」は現在、アメリカ大使館の旗艦プログラムの1つになっています。

プログラムの3本柱

キャンペーンは主に、外交官による学校訪問、英語教員向けトレーニング、そしてオリンピック・パラリンピック選手との交流イベントで構成されています。

学校訪問プログラムでは、外交官が参加校を訪問し、アメリカについての授業を自ら行います。生徒からの質問にも外交官が直接答えます。外交官は幅広いトピックについて話しますが、特にアメリカの地理や文化、教育、そしてオリンピックについて話すことを楽しみにしています。

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学校訪問プログラムには、広報・文化交流部以外の外交官も多数参加しています。昨年10月には、ITを担当するケビン・ルベッシュ情報管理課長が、東京都練馬区の石神井中学校を訪問しました。700名を超える生徒に星条旗で迎えられたルベッシュ課長は、故郷のオレゴン州や、アメリカの高校での生き生きとした学校生活、そして自身の外交官としてのキャリアについて話しました。慣れない英語での講演に緊張していた生徒たちでしたが、後半の質疑応答では多くの手が挙がりました。ルベッシュ課長が退場する際には、生徒たちの自発的なスタンディングオベーションが起こりました。

練馬区立石神井中学校にて行われた「Go for Gold」イベントで講演するケビン・ルベッシュ情報管理課長

練馬区立石神井中学校にて行われた「Go for Gold」イベントで講演するケビン・ルベッシュ情報管理課長

アメリカ大使館の外交官は日本とアメリカの架け橋になる存在ですが、普段は大使館内の仕事が多く、日本の子どもたちと交流する機会は多いとは言えません。学校訪問プログラムは、外交官が大使館の外へ出て、日本の子どもたちにメッセージを直に伝える貴重な機会なのです。「Go for Gold」プログラムの責任者であるマイケル・ターナー文化・交流担当官はこう話します。「私たちの外交官としての仕事は、アメリカの文化を広め、両国の相互理解を深めていくことです。このプログラムから期待することは――今までそのような機会はほとんどありませんでしたが――子どもたちと実際に対話することなのです」

また、「Go for Gold」には、英語教員を対象としたトレーニングも含まれます。広報・文化交流部から助成金を交付された国際教養大学(秋田県)が、昨年から英語教授法のセミナーを行っています。これは、国内の小中学校の英語教員を対象とする研修で、2018年から2年間の予定で実施されます。昨年は、3日間の集中セミナーを、札幌・東京・名古屋で行い、全国から選抜された教員が参加しました。東京でのセミナーには、「Go for Gold」枠で7名の英語教師が出席しました。このセミナーは今年の夏も予定されており、「Go for Gold」対象校からは昨年以上の参加が見込まれています。

アメリカ大使館では、トレーニングの実施に加え、米国務省が作成した英語教材の無料配布も行っています。教材は、英語学習者用と指導教官用の両方が用意されています。これらは、学校訪問の際にも活用されています。

さらに「Go for Gold」には、大会や遠征で来日するアメリカ人オリンピック・パラリンピック選手を迎えた交流イベントもあります。選手たちは東京都内の参加校やコミュニティを訪問し、日本の生徒と交流することを楽しみにしています。イベントでは、トップアスリートによる実技指導や講演会が行われます。

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昨年8月には、オリンピック競泳部門で金メダルを獲得したケイティ・レデッキー選手との交流イベントが開かれました。都内のプールでレデッキー選手は、100人以上の生徒を前に実技指導を行いました。また講演会では、幼い頃に憧れていた選手とオリンピックで再会した話を披露し、このイベントに参加した生徒の中にも、将来自分と競う人がいるかもしれない、と生徒たちを励ましました。アメリカ大使館はこのようなプログラムを通じて、オリンピック・パラリンピック選手のように高い目標や志を持つことの大切さを、日本の生徒に伝えたいと考えています。

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2020年オリンピック、そしてその先へ

アメリカ大使館は、プログラムへの参加を通じて、将来アメリカを訪れる日本人の若者が増えることを期待しています。現在アメリカではクール・ジャパンの影響で、日本への留学生や日本語学習者が増えています。今後は反対に、日本からアメリカへの留学生が増えることが理想です。留学などの国際交流を通して、日本人とアメリカ人がお互いをより理解し合えば、日米間の友情はより強くなるでしょう。

「Go for Gold」は東京オリンピック・パラリンピックに向けた取り組みですが、2020年の夏以降はどうなるのでしょうか。その心配について、ターナー文化・交流担当官はこう話してくれました。「確かに『Go for Gold』はオリンピックに向けたプログラムですが、閉会式をもって全てが終わるわけではありません。私たちが築き上げているこの関係を、将来に向けて今後も必ず続けていきたいと思います」オリンピック・パラリンピックが終わっても、日米の交流はさまざまな形で続いていきます。アメリカ大使館のスタッフ一同は、皆さんがその一部となることを切に願っています。