想像してみてください。ジョン・ルース駐日米国大使が、まぶしいスポットライトを浴びてスタジオに座り、コンピューターの画面いっぱいに映る日本各地の笑顔の若者たちと楽しそうに会話をしている姿を。一体どうしたというのでしょう。大使は政府の偉い人との会合や重要なイベントでのスピーチなどで忙しく、ティーンエージャーや若い社会人とビデオチャットをする時間はないのでは? 必ずしもそうとは限りません。この日、大使は対話型オンライン・プラットフォーム「Google+ハングアウト」を使った初のタウンホール・ミーティングで、日本の若者たちと対話しました。

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アメリカ政府は、国内そして世界各地の人々と交流する新たな手段として、Google+ハングアウトの活用を始めました。 最近では、オバマ大統領が「ファイアサイド・ハングアウト」で、このツールを使って全米各地のインターネットユーザーと接続し、その数日前の大統領一般教書演説で述べた政策や提案について議論しました。この他にもホワイトハウスは、家族の健康から人身売買まで、あらゆるテーマでハングアウトを主催しています。ケリー国務長官も「Google+国務省ハングアウト」で全米各地の市民とリアルタイムで会話し、米国の外国への関与が国内のアメリカ国民に及ぼす影響について話をしました。

ルース大使は2009年に日本に着任して以来、日本の若者たちと実際に会って話をすることを重視し、各地の大学のキャンパスを訪れて学生たちと対話をしてきました。またソーシャルメディアも積極的に活用しており、ツイッターでは6万人を超えるフォロワーがいます。5月22日、アメリカ大使館が企画し、ルース大使がGoogle+ハングアウトを通じて日本の若者たちと交流するイベントが開催されました。ルース大使にとって初めてのGoogle+ハングアウトで、沖縄、富山、渋谷、六本木の学生や若者たちとリアルタイムで双方向に対話し、日米安全保障同盟、若者同士の交流、リーダーシップなどに関する質問に、積極的に答えました。

その日、参加者たちは、この新しい異文化コミュニケーション・ツールを使って大使と話をする機会を、期待に胸を膨らませて待っていました。富山県の地方紙「北日本新聞」がこのイベントに向けた生徒たちの準備の様子を取材した記事によると、富山中部高校3年生の山淵あいりさんは、「どんどん質問して、自分を成長させたい」と語っています。

ルース大使が最初に答えたのは、渋谷教育学園渋谷高等学校からの、駐日米国大使としての役割についての質問でした。「大使の役割は、駐在する国で、米国大統領の代理としてさまざまなことに取り組み、駐在する国と協力することです。(中略) 私は日本中でいろいろな人たちに会っています。それは、皆さんが日米関係の将来を担う存在であり、今こうしてGoogle+ハングアウトでやっているようなことは、皆さんが私の国を理解する上で極めて大切だと思うからです。同じように、アメリカ国民にも日本に対する理解を深めてほしいと思っています。それが日米関係の将来を決めるからです」

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大使は、TOMODACHIイニシアチブについて詳しく説明しました。このイニシアチブは、東日本大震災からの日本の復興を支援し、日米の次世代に投資する官民パートナーシップです。富山中部高校の生徒からの「TOMODACHIイニシアチブは若者を世界のリーダーに育てるために何をしているのか」という質問に対し、ルース大使は次のように答えました。「私たちは、皆さんの世代が私たちの世代と手を携え、世界のさまざまな問題を解決するために必要な技能を大きく伸ばしていくと期待しています。その結果、皆さんが大きな成果を挙げると、私はとても楽観的に考えています。皆さんの可能性は無限です」

このプログラムは、沖縄県の若者たちが、沖縄の米軍基地問題について米国政府の代表と議論する機会にもなりました。沖縄キリスト教学院大学の学生が、沖縄の米軍駐留に対する県民の反応について、ルース大使はどう思うかと聞いたとき、大使はためらうことなく次のように述べました。「私は沖縄県民の感情をよく理解できます。また、さまざまな感情があることも知っています。基地を強く支持する人たちもいれば、そうでない人たちもいます。しかし、基地の影響を縮小することがとても重要だという点では、誰もが同意するでしょう。日米安全保障同盟はいろいろな面で非常に重要ですが、最も高いレベルでは、この同盟こそが過去50年以上にわたりこの地域の平和と安全保障を維持する主要な役割を果たしてきました」

学生のほかにも、六本木アカデミーヒルズの講座を修了した若い社会人3人が対話に参加しました。その一人は、コンセンサスを築く日本式のリーダーシップが多国籍チームでうまくいくか、と質問しました。大使は 「人の話を聞くこと、コンセンサスを築くこと、自分の人格の違う部分を見せることによってリーダーシップを発揮することも可能です」と答えました。「リーダーになる手段はひとつだけではありません。あなたが、典型的な日本式リーダーシップの特徴として挙げた、人の話を聞き、コンセンサスを築くという要素は非常に大切であり、グローバルな環境で大きな効果を発揮できると思います」

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ルース大使は、こうした真面目なテーマについて語っただけでなく、面白い質問にも答えています。例えば、ツイッター・フォロワーから「カラオケ十八番」を聞かれた大使は、「下手」だけれど、ミュージカル「バイバイ・バーディー」の歌を歌うのが好きだと打ち明けました。

質問のトピックは多岐にわたりましたが、この対話を通じて繰り返し出てきたひとつのテーマがありました。大使は、日本の若者が、外国、特に米国で学び、生活し、働く機会を活用することを何度も奨励しました。「外国に住んでみると、その国をほんとうに深く理解することができます。そうした体験に代わるものはありません。世界は素晴らしいところです。皆さんも、私がこの4年間日本に住んできたように、どこか外国に住む機会を得ることがあれば、そうした機会を逃すことがどれほど大きな損失になるか、理解できるでしょう」

北日本新聞の「教えて! ルース大使」と題した記事によると、富山中部高校の2年生田中みづきさんは、「一生にあるかないかの経験ができた」と語っています。同校の英語教師で英会話部の顧問を務める湯口千鶴子先生も、アメリカ大使館が東京から遠く離れた富山県の生徒たちに接触を図ってくれたことに感謝の意を表しています。英会話部では、英語でディベートをして、生徒たちの英会話力を育てています。「最終目標は、(日ごろの活動を)このような現実的なコミュニケーションにつなげることでしたので、まさに今回はその集大成ともいえる機会となりました」と湯口先生は述べています。「生徒たちは、タウンホールそのものから、そして関わった全ての人々から大変大きな刺激を受けました。若い彼らには、人生を変えるかもしれない大きな人生のポイントになったことと思います」

渋谷教育学園の生徒からは、大志を抱く日本の若者にとって最も重要な質問がありました。「この世界をより良くするために、私たちは日本人として何をすべきでしょうか」という質問に対し、ルース大使は次のように答えました。「いいですか。日本は素晴らしい国です。もう4年間も妻と日本に住んでいますが、私たちはこの国が大好きです。素晴らしい国です。 教育水準は高いし、豊かです。そして素晴らしい文化と歴史があります。 世界中の人たちが皆さんから、日本の国民から学ぶべきものがたくさんあります。それをテレビやインターネットを通じて学んでもらうだけでなく、皆さんが母国を代表する大使となって世界中に出かけていくことが必要なのです」。公式行事であろうと、キャンパス訪問であろうと、またGoogleハングアウトであろうと、ルース大使はあらゆる機会をとらえて、日本という国に対する深い称賛の気持ちと、日本の若者の将来に対する大きな期待を伝えています。

Googleハングアウトの様子はビデオでご覧になれます。