2016年10月12日に、ケネディ大使とタレントの関根麻里さんがアメリカ留学について大使公邸でお話ししたインタビューの翻訳です。下記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文である英文はこちらからご覧いただけます。

関根麻里:本日はご招きいただきありがとうございます。大使とご一緒でき光栄です。(関根)麻里です。よろしくお願いいたします。

ケネディ大使:ようこそお越しくださいました。キャロラインです。

関根麻里:どうお呼びしたらいいですか。

ケネディ大使:キャロラインでかまいません。

関根麻里:最初に「A Broader View―人生を変えるアメリカ留学―」プロジェクトの立ち上げ、おめでとうございます。

ケネディ大使:参加していただきありがとうございます。さまざまな分野から多くの方たちが参加してくださり、うれしく思います。アメリカで素晴らしい経験をされた方々が、その体験談を話したいと思ってくださったようです。今、留学を検討しているけれども、留学に不安を感じている人もいるのではないでしょうか。

関根麻里:このプロジェクトを始めたのは大使のお考えと伺いました。

ケネディ大使:日本でお会いした多くの方々から「アメリカに留学して人生が変わった。帰国して夢を追求することができた。起業することができた。芸術家や科学者になることができた」というお話を伺いました。そして留学していなければ、行動に移す勇気や想像力を持つことはできなかったろうとおっしゃっていました。それを聞いて、彼らの体験談を若者に聞いてほしいと思ったのです。アメリカに留学する日本人や、日本に留学するアメリカ人が増えてほしいからです。私自身が日本でとても素晴らしい経験をしました。それをアメリカの人たちに伝えたいと思っています。ですからアメリカ人には日本を訪れるよう働き掛けていますし、日本の方々にもアメリカ留学を勧めたいと思っています。

関根麻里:私もアメリカに留学した1人です。ボストンのエマーソン大学に留学しました。

ケネディ大使:ボストンへの留学は忘れられない経験でしょう。

関根麻里:街もきれいです。大学もたくさんあります。そして素晴らしい芸術とエンターテインメント。スポーツも盛んです。

ケネディ大使:そうです。野球やアメリカンフットボールなど。私もボストンの大学に行ったのでよく分かります。私の学生時代に比べ、ボストンはさらに国際化されているでしょう。ですから自分と同じ国の人はいないだろうと心配する必要はありません。ボストンには世界中から数多くの人が集まっています。少なくともアメリカには全世界から集まっています。友達はすぐに見つかります。

関根麻里:ボストンでできた友人は、生涯の友となりました。実は、ある男の子に一目ぼれしました。友達のパーティーで彼を見かけたのですが、次の瞬間、別の男の子にキスしているのを見てしまったのです。

ケネディ大使:おやおや。

関根麻里:それで彼は女性より男性が好きなのだと分かりました。

ケネディ大使:それはそれで良いのですけれど、麻里さんとは縁がなかったということですね。

関根麻里:恋愛関係という意味ではそうですが、とても親しい友達になりました。

ケネディ大使:素晴らしいですね。

関根麻里:ショッピングやボーイウォッチングを一緒にしました。今でも連絡を取り合っています。

ケネディ大使:それは素晴らしいことです。外務次官がおっしゃっていましたが、学生時代に私が参加したパーティに彼も来ていたけれど、ダンスに誘う勇気がなかったそうです。何年もたってから私たちは再会したのです。

関根麻里:覚えていましたか?

ケネディ大使:いいえ(笑)。

関根麻里:いつまためぐり会うか、わからないですね。

ケネディ大使:何が起きるか分かりません。

関根麻里:異なる文化や背景を持つ多くの人たちと出会いますね。それで視野が広がりますね。

関根麻里:ところでプロジェクトの参加者はどのようにして選んだのですか。

ケネディ大使:最初は、日本に来て知り合った方たちにお願いしました。その後、ご紹介を受けた人たちへとその枠を広げていきました。アメリカではさまざまな分野のことができるのだと伝たかったのです。ですから、年上の著名なノーベル賞受賞者から、麻里さんや、ニューヨークでヒップホップダンスを学んだ「Project TARO」のメンバーのような(若い)方々、そして日本に戻って俳優をされている方や、三木谷さんのように起業した方々など、大勢の方々に参加していただきました。本当に幅広い分野の方々がいらっしゃいます。皆さん、いろいろなことをしていらっしゃいます。これは日本でも同じかもしれませんが、留学したことにより、別な方法で挑戦する自由を得たようです。失敗するかもしれませんが、そこから学んで刺激的な経験をするのだと思います。

関根麻里:わくわくしますね。

ケネディ大使:アメリカにはさまざまな種類の学校が数多くあります。大都市での生活が好きでなければ、地方に一般教養科目を学べる小規模な大学があります。都会の環境がよければ、ニューヨーク、ボストン、ロサンゼルスなどの都市があります。どの分野に関心があり、自分がどのようなタイプの人間かにより、自分に合う学校をたくさん見つけることができるでしょう。

関根麻里:勉強を続けていく過程で専攻を変えられるのは大変良いことだと思いました。

ケネディ大使:そうですね。日本では少し難しいようです。

関根麻里:日本では専攻を決めると、普通はその専攻で卒業しますが、アメリカでは多くの人たちが専攻を変えたり、専攻を2つ持つこともでき、また異なる分野に関心があれば主専攻と副専攻を持つこともできます。これは日本の制度と違う点です。

ケネディ大使:例えば私の息子は、私が大使として日本に着任した後、日本史を副専攻にしました。おっしゃるとおり、新たに専攻を加えることができます。

関根麻里:私は初め、マーケティングコミュニケーションを専攻にしましたが、副専攻に心理学を選びました。

ケネディ大使:その2つは関連していますね。

関根麻里:そうです。とても面白いです。

関根麻里:異なる文化背景を持つ人たちとのコミュニケーションでは、何を心がけていますか。

ケネディ大使:観察することと、話をよく聞くことです。自分のやり方が一番と思っていたことに、他の人がどう対応するのか、という点に興味を抱くことです。米国にいたときに、多少はこのような経験をしていたかもしれませんが、日本にいる今のほうが、このような経験を多くしています。日本には、日常のささいなことで、米国とやり方が異なることがたくさんあります。

関根麻里:例えば?

ケネディ大使:ミーティングの設定の仕方や、道の歩き方など、本当に小さなことです。正解はありませんが、異なる2つのやり方があり、私が思い付かなかった、斬新かつ異なった方法を取り入れている様子を、毎日楽しんで見つけています。

関根麻里:違いを観察し、楽しむこと。違いを理解し、自分のスタイルで順応すること、ですよね。

ケネディ大使:そうすれば、自分に最も合ったものを選ぶことができます。聞くことも大切です。心を開いて、助けを求めることを恐れてはいけません。これは、自分の国に住んでいても大切ですが、新しい場所ではこうする必要が一層あります。

関根麻里:勇気を持つことですね。

ケネディ大使:私たちはみな、心の底では勇気を持っています。しかし、その気にならないときもあります。

大使にとってこのプロジェクトが重要な理由は?

関根麻里:大使としてこのプロジェクトの重要性はなんですか?

ケネディ大使:最も大切なこととして、私は、このプロジェクトが個人の人生を変えるという信念を持っています。しかし、同時に私は大使として、日米両国についての思いがあります。日本に着任して以来、最も感銘を受けたのは、日米関係の深さです。しかし、最近、特に米国では、この2カ国間関係の重要性を理解していない風潮が見られます。日米は最も緊密な友好国であり、この日米関係の礎は、数世代にわたって交流し、互いに学び合い、互いの国で生活し、ビジネスや科学分野での連携してきた両国民です。だからこそ、私たちは次世代のために、私たちの両親や祖父母の努力から生まれた、現在私たちが幸運にも享受している恩恵や恵みを守り続けたいと考えるのです。また、その伝統を守る必要もあります。だから、両国の学生には、互いの国で勉強してほしいと思います。そうすれば、将来、今日の世界が直面している問題をはじめ、さまざまな課題に協力して取り組むことができるからです。日米は医療分野での危機や世界的な感染症への対策で連携しています。宇宙開発でも協力しています。日米の宇宙飛行士による火星探査の共同計画も進行中です。芸術、文化分野でも、素晴らしい交流があります。基礎科学でも共同研究を行なっています。つまり、日米両国で過ごした経験を持つ学生には、たくさんの機会があり、しかも、それは拡大し続けています。

オバマ大統領と安倍首相がこの(日米の留学生数を2020年までに倍増させる)目標を掲げたのは、これが日米両国の未来にとって非常に重要だと認識しているからです。大使としての私の役割は、日米の留学生数を2020年までに倍増させる目標を達成するよう働きかけていくことです。

安倍首相には「A Broader View」に参加してもらっています。ですから、カリフォルニアに留学していたとき、今まで食べたことのないイタリア料理を作る女性の家に下宿していたことや、キャロル・キングやビーチボーイズを聴いていたことなどを知っています。私も、首相がカリフォルニアに「里帰り」したときにご一緒させていただきましたが、首相は、留学先の南カリフォルニア大学からジャケットを贈られていました。巡り廻って、またこの場所に戻って来られたことをうれしく感じられたことでしょう。大学の学生にとっても、誇らしい瞬間だったと思います。

ケネディ大使:充実した留学生活を送った人から話を聞くことは、より多くの人に留学してもらう、最も有効的なきっかけとなります。

関根麻里:お互いの国をより深く理解するために。

ケネディ大使:その通りです。日米の協力が必要な問題はたくさんあります。麻里さんがおっしゃたような、留学で芽生えた友情や友人たちとつながりを保っていれば、いつか一緒に働いて、より大きな成果を生み出すような日が来るかもしれません。

関根麻里:このプロジェクトを通して、多くの人の視野が広がることを願っています。

ケネディ大使:私もです。このインタビューが、米国留学のきっかけとなることを願います。

関根麻里:今日はありがとうございました。

ケネディ大使:こちらこそ、ありがとうございました。