ローレン・モンセン

8月24日から9月5日にかけて開催される東京2020パラリンピックには、98カ国から4400人の選手が参加します。

パラリンピックは、インクルージョンを促進し、スポーツの素晴らしさを訴える世界最大の障害者競技大会です。陸上競技、水泳、アーチェリー、馬術、ボート、柔道、パワーリフティング、卓球、車いす競技の他に、今年の大会にはバドミントンとテコンドーが新たに加わりました。

アメリカ人選手の経歴は、この競技の種類に負けないくらい多彩です。注目すべき選手を紹介します。

エズラ・フレッチ(陸上)

16歳のフレッチ(写真上)は、アメリカ代表選手団の最年少メンバーの一人です。100メートル走、走り高跳び、走り幅跳びに出場します。

ロサンゼルスに生まれ、生後11カ月から義足を付け始めました。障害者競技者の支援者であり、ロサンゼルスで毎年開催される子どもと大人の障害者競技大会「エンジェル・シティ・ゲームズ」の共同創設者でもあります。

マット・スタッツマン(アーチェリー)

2016年リオデジャネイロ大会でのスタッツマン (© Christophe Simon/AFP/Getty Images)

2016年リオデジャネイロ大会でのスタッツマン (© Christophe Simon/AFP/Getty Images)

アイオワ州フェアフィールド出身のスタッツマン(38歳)は、3人の子どもを持つ父親でもあります。アーチェリーを始めたきっかけは、家族を養うための鹿狩りでした。生まれた時から両腕がなく、大人になって弓矢を扱う方法を自ら編み出しました。今では狩りに加え、アーチェリー競技に参加するようになりました。弓メーカーから支援の申し出を受けた時は、世界一のアーチェリー選手になると自らに誓い、世界屈指の選手へと成長しました。東京大会は3度目のパラリンピックになります。2012年のロンドン大会では、銀メダルを獲得しました。

ニューズウィーク誌の取材に、「アーチェリーは人生を変えてくれました。子どもを養うこともでき、人に知ってもらえるようになりました」と答えています。

ジェシカ・ロング(水泳)

2017年、メキシコシティで開催された世界パラ水泳選手権大会でのロング (© Hector Vivas/Getty Images)

2017年、メキシコシティで開催された世界パラ水泳選手権大会でのロング (© Hector Vivas/Getty Images)

ボルチモア出身のロング(29歳)は、アテネ(2004年)、北京(2008年)、ロンドン(2012年)、リオデジャネイロ(2016年)と4大会連続でパラリンピックに出場しました。金メダル13個、銀メダル6個、銅メダル4個を獲得したパラリンピック史上最強の選手の一人です。

シベリアに生まれ、生後間もなくアメリカ人夫妻の養子となりました。腓骨欠損症という病気のため1歳半から義足を付け歩行していました。子ども時代はとても活発で、祖父母の家の裏庭にあるプールでいつも泳ぎ、人魚ごっこをして遊んでいました。競技チームに加わったのは10歳の時で、12歳になる前に、アテネ大会に出場しています。

ダニエル・ローマンチャック(陸上)

ミネアポリスで開催されたパラリンピック予選大会。5000メートル走の決勝でのローマンチャック (© Christian Petersen/Getty Images)

ミネアポリスで開催されたパラリンピック予選大会。5000メートル走の決勝でのローマンチャック (© Christian Petersen/Getty Images)

ローマンチャック(23歳)は、2016年リオデジャネイロ大会で陸上競技全種目に出場しました。最近では、ボストン、ロンドン、シカゴ、ニューヨーク市の車いすマラソン大会で優勝し、世界最強の車いすマラソンランナーとして注目を集めています。

出身地はメリーランド州マウントエアリーで、二分脊椎症をもって生まれました。2歳になった時、両親がアダプティブスポーツのクラスに入れ、そこで松葉づえや下肢装具よりも車いすのほうがより活発に動けることを発見しました。クリフバー&カンパニーとの最近のインタビューでは、「車いすは自由そのもの。私は車いすに縛られているわけではないし、制約もされていません。車いすは私を世界各地へ連れ出してくれました。私にとってスポーツとは、自分や他人が思う限界を超え、その先に到達できる自由を意味します」と語っています。

チャック・アオキ(車いすラグビー)

2019年、東京で開催された車いすラグビー世界選手権。対カナダ戦でのアオキ (© Moto Yoshimura/Getty Images)

2019年、東京で開催された車いすラグビー世界選手権。対カナダ戦でのアオキ (© Moto Yoshimura/Getty Images)

アオキ(30歳)は、2012年に銅メダル、2016年に銀メダルを獲得したアメリカ車いすラグビーの得点王です。東京大会の目標は金メダルです。父方の家族が1900年代初めにアメリカに移住したことから日本にルーツを持ちますが、ミネアポリスで生まれ育ちました。II型遺伝性感覚および自律神経ニューロパチーと呼ばれる遺伝子疾患のため車いすを使っています。

もともとはバスケットボール選手でしたが、オスカーにノミネートされたドキュメンタリー映画「マーダーボール(Murderball)」を見て、ラグビーを始めました。2009年からは全米チームでプレーしています。現在は大学院に通い、国際関係学で博士号取得を目指しながら、非営利団体「クラスルーム・チャンピオンズ」を通じて若者の指導にあたっています。また、国際パラリンピック委員会の特別ブロガーとして、東京大会の様子を発信します。

スカウト・バセット(陸上)

ミネアポリスで開催されたパラリンピック予選大会。走り幅跳びに挑むバセット (© Christian Petersen/Getty Images)

ミネアポリスで開催されたパラリンピック予選大会。走り幅跳びに挑むバセット (© Christian Petersen/Getty Images)

8月18日に33歳の誕生日を迎えたばかりのバセットは、世界選手権で5度メダルを獲得し、2016年リオデジャネイロ大会に出場しました。生まれたのは中国・南京市。生後間もなく火事にあい、右足を失いました。7歳の時、ミシガン州北部の小さな町に住むアメリカ人夫妻の家に養子として迎えられ、そこでスポーツに夢中になりました。14歳になる前には、既に競技大会に出場するようになり、カリフォルニア大学ロサンゼルス校に進学した後は、大学生としてパラリンピックに出場しました。

メディア企業「ポップシュガー」とのインタビューでは、スポーツを通して、女性、アジア系、障害者選手という自分が持つあらゆる側面のアイデンティティーを受け入れるようになった言い、「スポーツにはあらゆる経歴の人たちを団結させ、励ます力があると今まで以上に感じるようになりました」と語っています。

オクサナ・マスターズ(自転車)

ミネアポリスで開催されたパラリンピック予選大会でのマスターズ (© David Berding/Getty Images)

ミネアポリスで開催されたパラリンピック予選大会でのマスターズ (© David Berding/Getty Images)

マスターズ(32歳)は、世界選手権とパラリンピック大会で数々のメダルを獲得してきました。生まれたのはウクライナ。脛骨欠損症のため、両足を切断しなければなりませんでした。7歳の時に養子となり、最初はニューヨーク州中部に住み、後にケンタッキー州に引っ越しました。冬はクロスカントリースキー、夏はボートとハンドサイクルで競技会に出場してきました。

2012年のロンドン大会ではスカルで銅メダルに輝き、その年の女性ボート最優秀選手賞に選ばれました。しかし、2014年のソチ冬季大会で背中を痛め、その後は自転車競技に転向しました。東京大会では自転車競技のみに出場します。

自身のウェブサイトで、「何か新しいものに挑戦し、自分が快適にいられる場所から飛び出すのが好き」と述べています。

バナーイメージ:5月30日、アリゾナ州メサで開催された「デザート・チャレンジ・ゲームズ」。走り高跳びに出場したフレッチ (© Christian Petersen/Getty Images)

*この記事は、ShareAmericaに掲載された英文を翻訳したものです。