リー・ハートマン

中国は、ロシアのウクライナ戦争で中立性を主張していますが、国務省のグローバル・エンゲージメント・センターによると、中国、ロシアの政府役人、そして両国の国営報道機関は、プーチン大統領によるウクライナ戦争とロシア軍の残虐行為について繰り返し偽情報を流しています。

プーチンによる戦争開始の20日前。2月4日、習近平国家主席とプーチンは、ロシアがウクライナ国境に10万人以上の兵士を配備している中でさえも、両国の友好関係に「制限はない」と発表しました。

フランスを拠点に報道の自由を訴える「国境なき記者団」によると、ロシアがウクライナへ猛攻撃を始めた2月24日以降、中国政府は、ウクライナに対する不当な戦争を「特別軍事作戦」と位置付けるロシアの偽りの表現に同調する姿勢を示してきました。

国境なき記者団のセドリック・アルバーニは、「ロシアのウクライナに関する偽情報は、もはや容認できないレベルに達しており、世界はこのような嘘が拡大していくのを断固として避けなければならない」と述べ、さらに「独裁主義国家の管理下にある報道機関からの報道は無視すべきだ」と訴えました。

ジャーマン・マーシャル財団の「民主主義を確保するための同盟」のブレット・シェイファーは、ワシントン・ポスト紙の取材に、ロシアのプロパガンダを拡大する中国の行為は、ロシアの攻撃の対抗措置としてIT企業がロシア国営報道機関に課した制限を事実上迂回させるものだと述べました。

残虐行為を否定する

ロシアによるウクライナ侵攻が本格化した直後、中国政府高官の劉暁明元駐英大使は、「中国はあらゆる国の主権と領土保全を支持する」と欺瞞に満ちたメッセージをツイッターに投稿しました。

一方、中国外交部は、ウクライナ主権に対するプーチンの戦争の非を他になすりつけるロシア政府への同調を続け、4月1日には、「NATO(北大西洋条約機構)は、ヨーロッパの安全保障とウクライナ危機において自分たちが果たしてきた役割を反省すべきだ」とツイッターに投稿しました。

ロシア政府のウクライナに関する偽情報を拡散する中国国営放送局CCTVの国際報道局CGTN。写真右側の建物が本社 (© Mark Schiefelbein/AP Images)

ロシア政府のウクライナに関する偽情報を拡散する中国国営放送局CCTVの国際報道局CGTN。写真右側の建物が本社 (© Mark Schiefelbein/AP Images)

3月末、ロシア軍が撤退した後、キーウ郊外のブチャで、路上と集団墓地を埋めつくす数百体もの遺体が発見されました。中国政府と中国共産党の国営放送局「中国グローバルテレビジョンネットワーク(CGTN)」は、「遺体はロシアを非難しようとする陰謀の一部で米国が並べたもの」というロシア政府の事実無根の主張をツイッターに投稿しました。

CGTNはまた、4月8日にクラマトルスクの駅を爆撃し、子ども5人を含む50人以上が犠牲になった攻撃は、ロシア軍ではなくウクライナ軍によるものとするロシア側の陰謀説を大きく伝えました。中立の監視団によると、中国政府の偽りの報道には何の証拠もありませんでした。

中国外交部の趙立堅報道官は、アメリカ政府がウクライナに生物兵器研究所を維持しているとする虚偽の主張を繰り返しました。これは第三者調査員たちが偽情報だと証明したものです。この報道官の主張は、多言語で世界中の人たちを対象に発信する偽情報キャンペーンの一環だったのです。

中国政府は国民にツイッターへのアクセスを禁止する一方で、政府役人はツイッターを使い、偽情報を海外で拡散しています。

しかし、この偽情報に誰が耳を傾けているのかは定かではありません。中国メディアに精通するジョージア州立大学のマリア・レプニコヴァ教授(グローバルコミュニケーション専門)は、国務省の会見で、発展途上国と西側諸国の大多数の人々は中国の外交官や国営報道機関を信用していないと述べました。

そして、「偽情報を流し、ロシアの声を伝えるような行動が、グローバル規模での世論形成でどれほど効果的なのか、少し疑わしく思う」と述べています。

バナーイメージ:ロシアが2月24日のウクライナ侵攻への準備を進める中、2月4日に北京を訪問し、習近平国家主席(右)に迎えられたロシアのプーチン大統領 (© Alexei Druzhinin/Sputnik/Kremlin/AP Images)