米国政府の支援で、間もなくより多くの人たちが、日本初の正史や中国の政治経済に関する論文などを読むことができるようになります。

米国政府機関の全米人文科学基金(NEH)はこのほど、8世紀の歴史書「日本書紀」と紀元前1世紀の中国漢王朝の論文「塩鉄論」の翻訳を助成すると発表しました。

アジアの文化史に焦点を当てたNEHのプロジェクトは、文化遺産の保護に対する米国のコミットメントを促進する数多くの資金提供プロジェクトの一つです。こう述べるのは、芸術と人文科学の教育と研究に資金提供するNEHのアダム・ウォルフソン会長代理です。

紀元前141年から87年まで中国を支配した漢王朝の第7代皇帝・武帝の税制改革を論じた「塩鉄論」(© Pictures From History/Universal Images Group/Getty Images)

紀元前141年から87年まで中国を支配した漢王朝の第7代皇帝・武帝の税制改革を論じた「塩鉄論」(© Pictures From History/Universal Images Group/Getty Images)

「NEHのこれらの助成金は、教育者や研究者が歴史に対する我々の理解を深めるのを支援し、全米の文化施設のサービス拡大につながります」。ウォルフソン会長代理は1月11日、プロジェクトの発表に際し述べました。

NEHのアジア言語への支援は、古文書の翻訳にとどまりません。他のプロジェクトでは、日本のモダニスト詩人の遺産や、カシミア産業のモンゴル人牧夫の言語について研究します。

以下のプロジェクトが、助成金の対象となっています。

  • 日本書紀:フロリダ大学のマシュー・フェルトは、日本初の公式歴史書「日本書紀」を翻訳します。日本書紀は720年に編纂された日本最古の正史です。
  • 日本のモダニストの詩:ブラウン大学の中保佐和子は、日本初の女性モダニスト詩人、左川ちかの遺産について出版します。「左川の作品は、この時代の詩における最もダイナミックな変化と発展を形作るのに貢献した」。「左川ちか詩集(The Collected Poems of Chika Sagawa)」の序文で中保はこう述べています。
  • 桃花扇(The Peach Blossom Fan):ハーバード大学のワイ・イー・リー(Wai-Yee Li)教授は、明朝の崩壊を描いた17世紀の中国の戯曲を英訳する予定です。リー教授は、桃花扇を「中国の伝統の中で、歴史とその解釈の両方を劇表現に取り入れた唯一の作品」と説明します。
  • 塩鉄論:カリフォルニア大学サンタバーバラ校の アンソニー・バルビエリ教授は、2000年以上前の文献を初めて完全に英訳します。教授は塩鉄論を「紀元前1世紀の中国漢王朝が残した最も重要な古典の一つ」とし、「漢代の政治経済に関する貴重で不可欠な一場面を構成している」と述べています。
  • モンゴル語:インディアナ大学のキャサリン・グラバーは、モンゴルの牧夫たちがカシミアの取引で、言語を使っていかにして価値を構築したかについて執筆中です。

NEHは、200以上のプロジェクトに総額2470万ドルを助成しています。アジア言語のテキストや、他作品の研究や翻訳への支援金はその一部です。

NEHはウェブサイトで、「民主主義は知恵を必要とするため、人文科学における卓越性を促進し、全ての米国人に歴史の教訓を伝えることで、NEHは共和制を支え強化している」と述べています。

バナーイメージ:米国政府はアジアの著名な作品の翻訳に資金援助を行っている。1699年の作品「桃花扇」(The Peach Blossom Fan)がミュージカル化され、2006年10月18日に北京で上演された際のワンシーン (© China Photos/Getty Images)

*この記事は、ShareAmericaに掲載された英文を翻訳したものです。