へザー・ドレッサー

 米国と日本は長年にわたり、エネルギー安全保障と環境の持続可能性という、2つの課題に連携して取り組んできた。2010年、両国はハワイ州および沖縄県と共に「クリーン・省エネルギー開発と展開に関するハワイ州・沖縄県のパートナーシップ」を創設した。このパートナーシップを通じ、沖縄とハワイは共通の目標の達成に向け、経験と専門知識を共有している。

2012年3月24日、米国エネルギー省のフィリス・ヨシダ次官補代理(前列右から4人目)、マーク・グリック・ハワイ州エネルギー長官(後列右から4人目)ら、沖縄を訪問したハワイ・沖縄クリーンエネルギー・パートナーシップ・タスクフォースのメンバーに、宮古島市の「かたあきの里」のエコ・モデルハウスを案内した、同市の長濱政治副市長(前列左から3人目)(写真提供 在沖縄米国総領事館)

このパートナーシップは、数百年も昔にさかのぼる沖縄とハワイの文化・経済交流の長い歴史と、亜熱帯性気候に属する小さな島しょ群で構成される県と州という共通の特性を生かしたものである。いずれも太陽光、風力、バガス(バイオ燃料の原料となるサトウキビかす)、バイオエタノール、海洋エネルギーなどの技術、電気自動車、エネルギー効率について関心と経験を有している。どちらも観光とエコツーリズムの推進に関心があり、地元の経済成長を支えるため電力供給を大幅に増やす必要があると考えている。しかし一方で、高価な輸入化石燃料に依存しているというプレッシャーも感じている。パートナーシップを通じ、米国のエネルギー省と日本の経済産業省は、ハワイ州政府の「ハワイ・クリーンエネルギー・イニシアチブ」と沖縄県の「沖縄エネルギービジョン」にそれぞれ明記された、沖縄とハワイのクリーンエネルギーに関する目標の達成に向け支援するため、技術的専門知識を提供する。

これまでのところ、ハワイと沖縄は「省エネビル」「スマートグリッド」「再生可能エネルギー」「人材交流」の4分野で協力している。2011年の秋には沖縄県の建築技師と建物管理業務担当者がホノルルを訪れ、ハワイ側の担当者と共にエネルギー効率に関する研修に参加した。その後、2012年3月には米国の国立再生可能エネルギー研究所の専門家が沖縄を訪れ、糸満市の建物管理業務担当者が同市の庁舎改修案を作成する中、庁舎のエネルギー評価を行い、参考意見を提出した。

同じく3月24日、宮古島市役所の下地洋子さんから市街地型エコハウスの説明を聞くタスクフォースのメンバーたち (写真提供 在沖縄米国総領事館)

2012年2月には、琉球大学付属中学校とハワイのプナホウ学園の中学生がエネルギーとエネルギー効率について学習した後、自宅をできるだけエネルギー効率の良いものにするにはどのように設計変更をしたらよいか、そのアイデアを競うコンテストに参加した。インターネット上で生中継されたその表彰式で、1人の沖縄の生徒は、ハワイと沖縄、そして全体として米国と日本で、エネルギーの利用に違いのあることが分かってよかったと感想を述べた。

一方、ハワイ・エレクトリック・パワーと沖縄電力の両電気事業者もこのパートナーシップを通じ、情報交換を始めた。両社は、日本企業のスマートグリッド技術を実証し、スマートグリッドの導入拡大に伴う技術的課題を特定するマウイ島でのスマートグリッド・プロジェクトを発展させ、今年から人材交流を始める予定である。

ハワイと沖縄は、海洋温度差発電(OTEC)の分野でも協力している。これは1970年代の石油ショックを受けて開発、実証された技術だが、まだ普及には至っていない。ハワイも沖縄もOTECに適した立地条件にあり、いわゆる「基底負荷」電源を供給する上で、この技術の潜在的な役割に注目している。「基底負荷」電源とは、昼夜を問わず、1日を通じて発電量が安定している電力のことで、雲量や風速などの自然条件に左右される太陽光発電と風力発電の変動性から影響を受けない。

ハワイ州と沖縄県は、この技術に関する情報を共有する勉強会を何度か開催しており、その結果、沖縄県では、数年以内に久米島沖でOTECの試験プロジェクトを始める決定をした。潜在的な可能性を秘めた次世代エネルギー資源を理解、研究するこの取り組みは、今回のパートナーシップで促進できる協力の好例である。

ハワイと沖縄のクリーンエネルギー・パートナーシップは、国際協力や人材交流、情報交換を通じて共通目標の達成を加速させる可能性があることを示しています。ハワイと沖縄が連携すれば、米国と日本のクリーンエネルギーの未来を主導することができる。