ハナ・チェイ カリフォルニア大学ロサンゼルス校

アメリカの大学文化には多くの伝統がありますが、中でも最もユニークなのは「グリークライフ(Greek Life)」でしょう。

グリークライフとは、「フラタニティ(fraternities)」や「ソロリティ(sororities)」という社交クラブに所属する学生コミュニティーのことです。フラタニティは一般的に男性だけまたは男女混合の組織で、ソロリティは女性だけの組織です。学生はこれらの組織の中で、カレッジライフやその後の人生を特徴づける多くの伝統とネットワークに加え、さまざまなチャンスやイベントを経験するのです。

グリークライフという言葉は、ソロリティとフラタニティがギリシャ語のアルファベットに由来する独特の名前であることから生まれました。こういった名称は通常、2つまたは3つのギリシャ文字の組み合わせで構成されています。例えば、全米最大規模の社交クラブであるシグマ・カイの名前には、シグマ(Sigma)とカイ(Chi)というギリシャ文字が使われています。他にも、カイ・オメガ(Chi Omega)、カッパ・アルファ・シータ(Kappa Alpha Theta)、シグマ・アルファ・イプシロン(Sigma Alpha Epsilon)などが、人気のソロリティとフラタニティです。

UCLAのフラタニティ「アルファ・ファイ・オメガ」。2020年冬学期に加入した新メンバーがバナーを掲げる

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フラタニティやソロリティにはさまざまな種類があります。一般的なタイプとしては、ビジネス、社交、ボランティア、そしてアカデミックなものがあります。多くの学生は、自分と同じような関心を持つ人たちのコミュニティーを見つけるためにグリークライフに参加し、これらの組織が提供する社会的に強くつながった経験を楽しみます。

カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の学生、エスター・アンさんは、社交ソロリティと社会奉仕をするフラタニティの両方に所属しています。

「私が所属するソロリティとフラタニティは、社交的なサークルとネットワークを提供してくれるので、決して孤独を感じることはありません」とアンさん。「クラブの人たちのおかげで、最高の自分になりたいと思うようになりました。故郷から離れたこの場所で、何人かの親友を見つけることができたのは間違いありません」

フラタニティやソロリティでの生活が多くのチャンスを提供してくれることを考えると、これらの組織に加入するには複雑なプロセスや激しい競争があるのもうなずけます。大学には豊富なギリシャ語の団体があります。多くの学生は、まず彼らの興味を引きそうな団体を選ぶことからグリークライフの一歩を踏み出します。

グリークライフには「ラッシング(rushing)」という言葉があります。これは、学生がさまざまなソロリティやフラタニティを調査し、自分に最も合う団体を探す期間を意味します。しかし、全ての学生が一番気に入った組織に入れるわけではありません。ソロリティやフラタニティへの入会は非常に競争率が高く、選考では学生の社交性や勉学に向ける態度などの要素が考慮されます。

このラッシュプロセスの後、学生は所属するフラタニティあるいはソロリティの手ほどきとなる「イニシエート」を受けます。場合によっては秘密の儀式が行われ、新規入会者は、握手の仕方やモットー、儀式など、その組織に特有のことを学びます。このイニシエーションプロセスは組織によって異なり、一般的には学生がそれぞれのソロリティやフラタニティの正式なメンバーになることを意味します。

入会すると学生は、そのソロリティやフラタニティの目的に合わせた多くの社会的なつながりやイベントに参加することになります。例えば社交ソロリティに入会した場合、コミュニティーの絆を深めるために複数のパーティーや社交的な集まりに参加することも珍しくありません。

ペンシルベニア大学周辺の住宅地には、フラタニティもしくはソロリティ用に使われているポーチ付きの古い大きな一軒家が多数ある (Spiroview Inc./Shutterstock.com)

ペンシルベニア大学周辺の住宅地には、フラタニティもしくはソロリティ用に使われているポーチ付きの古い大きな一軒家が多数ある (Spiroview Inc./Shutterstock.com)

また、多くのソロリティやフラタニティは、「ビッグ」と「リトル」と呼ばれるプログラムを提供しています。このプログラムでは、「ビッグシスター」と呼ばれるソロリティの有力メンバーが、「リトルシスター」と呼ばれる新メンバーの教育係(メンター)となります。この伝統により組織内の絆が深まり、ソロリティやフラタリティの枠を超えた友情が築かれます。

グリークライフでの絆は、コミュニティー内の現役メンバーだけに限られません。実際にフラタニティやソロリティへの参加を充実させるのは、その組織の卒業生ネットワークとのつながりです。卒業生とは、既に大学を卒業したソロリティやフラタニティのメンバーです。この同窓生ネットワークを通じて、メンバーは卒業後に指導を受けたり、他の方法では得られないようなインターンシップや求人を優先的に紹介してもらったりすることができます。

「グリークライフは素晴らしいサポートシステムを提供してくれるだけでなく、他のキャンパスでグリークライフに携わる卒業生や学生と出会うユニークな機会も与えてくれるのです。とても気に入っています」とアンさん。「誰もが仲間と知り合いになり、つながりの輪を広げ、情熱や興味を共有して互いにサポートしたいと思っています。とても協力的でフレンドリーなコミュニティーなのです」。

バナーイメージ:ルイビル大学(ケンタッキー州)のソロリティハウス (4kclips/Shutterstock.com)