校内活動で記者になるための能力は養われるのだろうか。プリンストン大学の学生が発行する日刊紙の元編集者、アナスタシア・ロヤッド・ダンジャノビックさんに、新聞製作の経験から何を学んだかを聞いた。

アナスタシアさんとデイリー・プリンストニアン紙編集部のメンバー (© Lilia Xie)

アナスタシアさん(左から2人目)とデイリー・プリンストニアン紙編集部のメンバー (© Lilia Xie)

大学1年生の秋にデイリー・プリンストニアン(プリンス)紙の編集部に加わったときには、この仕事を学業の合間にする趣味のように考えていました。けれど、その後3年間で記者としてニュース編集者まで上り詰めるなかで、肉体的にも精神的にも、想像以上に厳しく鍛えられました。

「プリンス」の記者として働き始めたころは、編集者たちから仕事を与えられていました。しかし、経験を積むにしたがって、自分の意見を提案するようになりました。毎週日曜日には、編集者に書きたい記事の概要をメールしました。

私を含め記者にとって情報提供者が身近すぎることが時々ありました。例えば、プリンストンの教授や友人に関係する記事を書くときです。このようなとき、編集者は別の記者に取材させ、偏りのない公平な記事になるようにしました。

編集作業をするアナスタシアさん (© Lilia Xie)

編集作業をするアナスタシアさん (© Lilia Xie)

私たちは、報道機関としての信頼性を保つために、論説で自らの方針の正当性を説明し、記者たちの「利益相反」を開示しました。

「プリンス」は大学から独立しており、特定の利益集団から恩義を受けているわけでもないので、学校のカフェテリアや「プリンス」のウェブサイトのコメント欄で大きな議論となるような、物議を醸す話題も記事にします。過去には、マリファナ所持で逮捕された学生の話から、大学の管理側が学生を性暴力から守る指針を決定したが、まだ十分でないと主張している人たちがいることまで記事にしました。

私たちの記事が怠慢や権力の乱用を明らかにすることで、学生たちが行動を起こしたこともあります。「プリンス」の記事で、大学側が性暴力の調査結果を公表しなかったことが明らかになると、学生たちの抗議活動が始まりました。その結果、大学の管理側はすべての学生を対象に再調査を実施し、新たなハラスメント対策を発表しました。

ほとんどの場合、「プリンス」記者の取材は「オンレコ」で、取材対象の発言を記録・公表します。情報提供者たちが単なる噂話を広めるために「プリンス」を使っていると読者に思われないよう、私たちは取材対象に対し、発言の記録・公表への同意を努めます。また、得た情報については、別の情報提供者に裏づけ取材を行います。しかし、「背景説明」や記録・公表しない「オフレコ」を条件に、取材に応じる情報提供者たちもいます。

「プリンス」の編集者たちは、記事の間違いだけでなく、その活動についても透明性を保つよう努めます。倫理規定を公表し、読者に私たちの報道姿勢を明らかにします。記事の執筆や編集過程で起きた事実誤認を発見したときには、記事が掲載された翌日にオンラインと紙面の両方に訂正記事を載せます。読者の信頼を得るためにも、間違いを認めることは大切です。ある意味、プリンス紙の訂正記事は誇るべきものです。

(© Lilia Xie)

(© Lilia Xie)

ジャーナリストの仕事

提案する

記事の内容を提案して、取材すべき情報提供者のリストを提出し、記事の内容がタイムリーであること、そして以前の記事との関連性を説明します。

利益相反を開示する

利益相反の可能性があるのは、記者と取材テーマ、情報提供者、報道機関との関係です。開示の一例を紹介します。「私は2012年の夏に、シェアアメリカを発行する国務省でインターンをしました」

中立であること

「プリンス」の記者は、否定的な報道の対象になっている個人や組織のコメントを求めることが義務付けられています。

取材の基本原則に従う

「オンレコ」取材の場合、情報提供者が記者に話す情報はすべて報道することができ、情報提供者が誰かを公表できます。「背景説明」の場合、提供された情報を使うことはできますが、提供者の名前を公表することはできません。「オフレコ」取材の場合、記者は情報を公開することはできませんが、背景的な知識として用いることができます。

間違いを訂正する

これは、私たちが訂正記事を出すときに使う定型文です。

訂正:記事の記載に誤りがありました。“___”とした箇所は正しくは“___”です。お詫びして訂正します。