以前からオレゴン東部の牧場主は、牛の健康状態のタイムリーな把握に苦労していました。

そこに目を付けたメリッサ・ブランダオさんは、テクノロジー企業「ハードドッグ(HerdDogg)」社を設立。体重・病気・繁殖力などの動物の健康状態と所在地情報を収集する「スマート」耳タグを開発しました。この耳タグは、基本的には牛の耳に装着するコンピューターです。オンライン上の共有データセンター(クラウド)に情報を送り、牧場主がリアルタイムで牛の状態を把握することを可能にします。

「たくさんの人が同じものを求めています。家畜の群れについて多くの情報が必要なのです」と、ブランダオさんは言います。シリコンバレーのビジネステクノロジーの世界を離れた彼女は、精密畜産や農業技術を通じて農場主や牧場主の事業管理を支援しています。「自分のスマートフォンで直接家畜を管理できると、飛躍的に多くのことが分かるようになります」

彼女が特許を取ったテクノロジーは、オーストラリアのセントラル・クイーンズランド大学精密畜産管理学部やMLA(Meat & Livestock Australia)研究部門など、世界中の研究者が利用するデータと発見を生み出すほか、牛の牧場主の生活向上にも貢献しています。

この技術は牛だけでなく、ヤギ・羊・ヘラジカにも効果を発揮します。

ハードドッグ社の耳タグを装着したノルウェーの羊 (© Oscar Hovde Berntsen)

ハードドッグ社の耳タグを装着したノルウェーの羊 (© Oscar Hovde Berntsen)

ブランダオさんは、インドネシアの水牛の牧畜業者、ナイロビで牛の世話をする女性、サウジアラビアのラクダ使い、イスラエルの羊の牧畜業者からの電話にも対応したことがあるそうです。

ブラジルとオーストラリアの乳牛と肉牛、ノルウェーの羊、米国ワイオミング州のヘラジカにも、同社の耳タグが装着されていると、ブランダオさんは言います。

問題を解決するイノベーション

ハードドッグのような米国のハイテクにより、農業従事者や牧羊業者は、動物が必要とする世話を迅速かつタイムリーに提供し、群れの健康と生産性を高めることができます。これは、2050年までに人口90億を超える世界に食糧を供給しなければならない農業従事者にとって重要なことです。

来る世界起業家サミットにおいて米国は、ブランダオさんのようなイノベーターと世界中の投資家を一堂に集めます。今年の年次サミットはオランダで開催され、イノベーションを通じて繁栄を促進します。

米国とオランダは6月3日から5日まで、オランダのハーグで「世界起業家サミット2019」を共同開催します。起業家サミットの今年のテーマは「未来は今」。農業と食糧、連結性、エネルギー、健康、水の主要5分野が焦点となります。