リー・ハートマン

アメリカは、世界各地の強制労働を止めさせようと懸命に取り組んでいます。中国を拠点とする漁船団がとった海産物の輸入を停止するのは、この理由からです。

税関・国境警備局(CBP)は、1年にわたる調査から、中国の水産会社「大連遠洋漁業金槍魚釣有限公司」が国際労働機関(ILO)の強制労働指標11項目全てに該当すること突き止め、5月28日にこの企業からの魚介類の輸入禁止を発表しました。

CBPは、賃金の未払い、劣悪な住環境、身体的暴力といった指標を強制労働の証拠としてあげました。

アレハンドロ・マヨルカス国土安全保障長官は、「労働者を搾取する企業にアメリカでビジネスする場所はない」と述べ、この命令は「遠洋漁業に出ている人たちの人権を引き続き保護するため」と説明しました。

この大連企業の漁船団の乗組員のほとんどは、インドネシア、ベトナム、フィリピンといった東南アジア出身者です。アメリカの法律は、受刑者、強制労働者、あるいは契約労働者が全て、あるいは一部の生産に携わった製品の輸入排除を定めています。政府は企業に対して、強制労働の防止とその対処のため、自社サプライチェーンの見直しを勧告しています。

CBPは1月に、強制労働の証拠があったため、中国・新疆地区の綿とトマト製品の輸入を禁止しました。昨年7月にも同じ理由から、新疆から輸入された人間の毛髪を使った製品13トンを押収しました。

国務省と労働省によると、中国政府は2017年から、100万人以上のウイグル人および新疆にいる主にイスラム教を信仰する少数民族を収容所に送り、その大多数の人たちに強制労働をさせています。

労働省が9月に発表した報告書「児童労働または強制労働によって生産された製品一覧表2020年版」によると、17品目が中国の強制労働者によって製造されており、他のどの国よりも多くなっています。

中国・新疆地区の工場で綿糸を処理する労働者。アメリカ政府は強制労働の証拠から、同地区からの綿の輸入を禁止している。 2021年4月20日 (© Mark Schiefelbein/AP Images)

中国・新疆地区の工場で綿糸を処理する労働者。アメリカ政府は強制労働の証拠から、同地区からの綿の輸入を禁止している。 2021年4月20日 (© Mark Schiefelbein/AP Images)

アメリカはまた、国際社会と連携し、労働者権利の支援に取り組んでいます。「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」には、強制労働によって生産された製品の北アメリカへの輸入を禁止する規定が盛り込まれています。

現在、世界貿易機関(WTO)で行われている違法・無報告・無規制(IUU)漁業の助長につながる助成金に関する交渉の一環として、通商代表部(USTR)は5月26日、強制労働はIUU漁業を伴うケースが多いことを指摘し、各国に漁船の強制労働を止めることを求める提案書を提出しました。

国務省のネッド・プライス報道官は5月28日、「アメリカ政府は強制労働を利用し利益目的で個人を搾取する者に対して説明責任を求める。国際パートナーと連携し、声なき者の声に耳を傾け、保護されるよう努める」と述べました。

強制労働の恐れがある商品や企業に関する情報は、こちらをご覧ください。

バナーイメージ:ジャカルタの在インドネシア中国大使館の外で行われた抗議デモで漁船の強制労働に抗議するインドネシアの漁業従事者。2020年12月 (© Bay Ismoyo/AFP/Getty Images)

*この記事は、ShareAmericaに掲載された英文を翻訳したものです。