「一緒だよ。一緒にやるんだよ」。これは、ユニセフ親善大使でもある黒柳徹子さんが子どものころに通った学校の校長先生の言葉で、黒柳さんは今も「生きる道」としてこの言葉を大切にしています。その学校にはさまざまな子どもたちが通っており、中には障害を持つ子もいました。しかし校長先生は、そういう子どもたちを「助けてあげなさい」とは一度も言わなかったそうです。代わりに繰り返し子どもたちに説いた言葉が「一緒だよ」でした。

人を区別せず、何でも一緒にする。この精神は、私たちが社会の多くの問題に対処するときの共通の指針にもなります。レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー(LGBT)の問題も、その中のひとつです。米国では6月を「LGBTプライド月間」とし、LGBTの権利について啓発を促すさまざまなイベントが開催されます。日本では、6月7日にジョン・ルース駐日米国大使が各界からLGBT支援者を招き、公邸でレセプションを開きました。黒柳さんも出席者の一人でした。

今年のレセプションは、過去数年間にLGBTの権利の推進で大きな進展があったことを反映し、かつてない盛り上がりを見せました。ルース大使は、LGBTを取り巻く環境が急速に変わりつつあるなか、LGBTの権利について各国政府や一般市民が対話を始めることが重要であり、「LGBTの権利は人権である」とあらためて強調しました。

モデルの佐藤かよさんもレセプションに出席しました。佐藤さんは男性として生まれながら、14歳から女性として生活を始め、21歳のときにその事実をカミングアウトしたのですが、その理由として「本当の自分」としてモデルになるという夢をかなえたかったことと、いろいろな悩みを抱えている自分よりも若い世代に自分の存在を知ってもらい、生きる勇気を持ってほしかったことを挙げました。佐藤さんは、LGBTや性同一性障害は人間が持つ個性のひとつなので、LGBTだからといって人と違っているとは思わず、その個性を生かして、自分にしかできないことをするべきだと言います。そして近い将来、性別や生まれた境遇などで人を判断するのではなく、一人一人が個人として認められる世の中になり、性同一性障害やLGBTという言葉自体がなくなってほしいと望んでいるそうです。

レセプションで乾杯の音頭をとった尾辻かな子参議院議員は、日本で初めて同性愛者であることを公表した国会議員です。同性愛者であると自覚したのは18歳のころですが、それを受け入れられたのは23歳の時だったと語ってくれました。そのような自分の経験を踏まえ、尾辻議員は、LGBTの人々に寄り添い、孤立させないことが大切だと言います。そしてLGBTの若者に対しては「よくがんばっているね」と声をかけ、一人一人の意思が変われば社会も変わるということを伝えたいと思っています。そうした社会の変化の一歩として、尾辻議員は自らが国会議員になったことと、1977年に同性愛者であることを公表してサンフランシスコ市議に当選したハーヴィー・ミルクに触れ、36年前に彼が米国でまいた種が、今日本で芽吹いたと語りました。そして、LGBTの問題が日本で政治的課題になる日は近いと、前向きに考えています。

黒柳さんは言います。「人を差別・区別する心があると暮らしにくい。心が自由であればどこでも暮らせる」と。LGBTの人々を差別することなく、個性を持つ一人の人間として認め、違いを受け入れられる社会の構築を目指していこう―これこそ、LGBTプライド月間のレセプションに出席した3人のゲストからのメッセージです。