ノエラニ・カーシュナー

アメリカ国民は４年ごとに大統領を選出しますが、実際の国民生活に最も影響を与えているのは地方選挙です。

「地方選挙では、日々の暮らしとかかわりを持つ候補者を知り、自分の地域に真の変化をもたらす活動に参加する機会を得ることができます」。ワシントン州スクイム市議会に当選した新人議員5人の1人、ロウェル・ラスバンはこう言います。

全国1万9000超の市町村では毎年選挙を行うところもありますが、ほとんどが2年ごとに選挙を実施します。公職や業務内容はさまざまですが、選出された人の職業は、行政、立法、司法のいずれかに属します。

連邦政府にように、通常、州の公職は裁判官や検事総長が含まれます。

(State Dept./M. Gregory)

【図：地方選挙で選ばれる公職】
（上段左から）教育委員会：教育政策、予算、指導要綱、資源分配などを決める、第一審裁判所判事：ほとんどの民事、刑事訴訟の第一審判の裁判長、市長：市行政の全部局の運営・監督、保安官：犯罪捜査の指揮、逮捕状発布、地方刑務所の管理
（中段左から）監査：市財政の監督、計画・建築規制委員会：土地利用の監督・認可、市議会：市が提供するサービスの決定、予算運営、検察官：自治体政府に代わり犯罪の審理を行う
（下段左から）郡政委員：不動産登記や公衆衛生など郡政府サービスの運営、公共事業委員会：電気、水道、ゴミ規制、郡監督委員会：郡運営の監視、検視官：死亡事件・検死解剖の監督

自治体は、条例と呼ばれる地方独自の法律を制定し、土地利用や騒音などの規制を定めます。また、予算も独自に運営します。地方行政の仕事には、警察、消防サービスの提供、公立の小中学校の運営も含まれます。

ラスバンは自分が住む地域を良くしたいという思いから出馬を決意したと言い、11月の市議会選で対立候補を大差で破りました。また、スクイム市議会選の投票率は、地方選挙で過去最高を記録しました。

一方、ワシントン州ポートエンジェルス市教育委員会では、サラ・メスナーが11月に再選を果たしました。

カリフォルニア州コロナ市。市、州、連邦政府の選挙看板が立てられた幹線道路。2018年5月11日 (© Tim Gray/Shutterstock)

「地方行政が子どもたちに与える影響は、連邦政府の政策が与える影響よりはるかに大きいものです。どんな教師を雇用し、どのような指導要綱を用いて教える、子どもたちがどのような機会を得ることができるか。これらはとても重要度が高いものです」と言います。

アメリカでは、教育委員会の委員は選挙で選ばれ、選ばれた委員が地域の学校の教育目標と政策を定めます。

メスナーが教育委員会の委員選挙に出馬したのは2008年のことで、きっかけは子どもが通う小学校の財政状況を不安視したことでした。当選し、翌2009年からは、財政計画、指導要綱、学校の規則を担当してきました。

メスナーは、地方の公職に出馬を考える人は長期的に携わるべきと言います。

「まずは参加すること。教育委員会の委員は、学び、考え、物事を先入観なしでとらえるようになります」と言います。

アメリカの連邦制度がどのように機能しているかについては、連邦政府、州、地方の3部作シリーズの記事を参照ください。

バナーイメージ：2020年11月3日、バージニア州ミッドロジアン市ロビアス小学校。校内の壁画がある場所で投票する人たち (© Steve Helber/AP Images)