3部構成の「米国の連邦制度」シリーズ。今回は地方政府をとりあげます。連邦政府州政府についての記事もご覧ください。

6年近くもの間、サンディ・エバンズ氏は、バージニア州フェアファックス郡教育委員会に、高校の始業時間を遅らせるよう求めていました。そして12人の委員から成る教育委員会の欠員募集に立候補することを決意し、見事に選出されました。その後、高校の始業時間を7時20分より遅くする取り組みを再開したのです。

2014年、エバンズ氏ら教育委員会に新たに加わった委員たちは、新任の教育長らの支援を得て、全米で10番目に大きいフェアファックス郡学区の高校の始業時間を8時10分にすることを認可しました。「これが唯一の課題だったわけではありません。でも、私が教育委員会で実現したかった最優先課題でした」とエバンズ氏は言います。

これが米国の地方政治です。

地方政府の役割

米国は、地方、州および中央政府が権限を分かち合う「連邦制度」を採用しています。国民は、日常的に、しかしさまざまな形で、異なるレベルの政府と関わるため、この制度は理解すべき重要な概念です。

「地方政府は、市民が最も多く関わりを持つ機関であることから、国民生活の重要な基盤です」。ワシントンにある米国立法交流評議会(ALEC)で国際関係と連邦制度を担当するディレクター、カーラ・ジョーンズ氏はこのように言います。地方政府は、上下水道、ゴミ処理、除雪、住宅や交通手段の提供、学習指導要領の作成、住民の安全確保など、住民向けに幅広いサービスを提供します。

例えば、市民からの緊急時の対応要請には、地元警察、消防隊あるいは救急医療隊が、要請を行なった家にかけつけ、状況を調べます。このような緊急対応をする人たちは、地方税を財源とする地方政府が雇用しています。

「これは統治の基本で、権限を全て中央政府に委ねるのではなく、州政府や地方政府に権限を委譲する、米国の連邦主義に一部起因しています」とジョーンズ氏は説明します。

以下の図は、立法府、行政府、司法府に属する主な機関です。

(State Dept./J. Maruszewski)

地方政府の数

2012年に実施された国勢調査(5年ごとに実施)によると、米国にはおよそ9万の地方政府があります。

全米50州の中で最も地方政府の数が多いのはイリノイ州で、約7000です。一方、最も少ないのはハワイ州で、21しかありません。

一般的に、地方政府は2層に分類されます。比較的規模の大きい郡(county、ルイジアナ州ではparish、アラスカ州ではboroughと呼ぶ)と自治体(municipality)または市・町(city/town)です。郡がいくつかの郡区(township)に分かれる場合もあります。

自治体は、その州の憲法によって異なりますが、さまざまな形態があり、村(village)、行政区(borogh)、町(town)、郡区(township)や市(city)と呼ばれています。

地方自治で大切な要素は協調です。例えば、フェアファックス郡教育委員会のエバンズ氏は初め、高校の始業時間を8時30分とすることを求めていました。「ことを成すには、譲り合いの精神が必要。他人の意見に耳を傾け、妥協することを学ばなければなりません」とエバンズ氏は言います。