シャーリーン・ポーター 国務省スタッフライター

Curiosity sent home this self-portrait from the Martian surface

キュリオシティが火星から地球へ送ってきた自画像。キュリオシティのアームに取り付けたカメラを用いて撮影した画像の合成

 

 米国航空宇宙局(NASA)は2012年、他の惑星の神秘について詳細に調査し、これらの惑星へ到達するための新技術を開発して試験を実施した。こうした目標の追求にあたっては、他国の宇宙機関とも連携した。

 自動車と同じサイズの火星探査機「キュリオシティ」が8月、火星に着陸した。この光景を世界中の非常に多くの人々がインターネットで見守り、驚異と感嘆の声を上げた。

 キュリオシティは、NASAが火星に送った4機目の電動式車両であり、最も高度な機能を備えている。キュリオシティの任務は、過去のある時点に、生物が生息できる環境が火星に存在していたことを示す痕跡を見つけることである。

 2012年12月初旬に行われた説明会で、NASAの火星探査プログラムの主任科学者、マイケル・マイヤーは「大昔の川床に着陸した」と述べた。キュリオシティは着陸後数日以内に、水に削られて丸くなった小石を撮影しており、これによって、現在は乾燥しているものの、生物の存在に必要な基本物質である水がかつてその表面に流れていたことが確かめられた。

 キュリオシティの火星でのミッションは2年間である。カリフォルニア州にあるジェット推進研究所に置かれた本ミッションの本部は、生物が生息できた環境があったことを示す痕跡をさらに探すため、間もなくキュリオシティを近くの山へ向けて走行させる。

 キュリオシティに搭載された科学機器が、さまざまな火星の地形的特徴に関するデータを収集している。スペインの科学者が製造、提供した環境測定局が、一日および季節ごとの火星の気象変化の情報を記録している。この測定装置にはフィンランド気象研究所も寄与している。

 火星年1年分の環境データを収集すれば、何十年も先に人類で初めて火星に着陸する乗組員の生命を維持する方法を模索しているNASAの計画担当者や技術者は、非常に重要な情報を得ることになる。

 火星には大気がほとんど存在しないため、地表は太陽と宇宙からの高濃度の放射線にさらされており、それが将来の有人ミッションの大きな懸案事項のひとつとなっている。キュリオシティを取り巻く重要な環境要素である放射線量を監視する装置の設計と製作には、ドイツの宇宙機関が貢献している。

 ロシア連邦宇宙局は、水の検出に不可欠な機器を提供した。ダイナミック・アルベド・オブ・ニュートロン(DAN)と呼ばれるこの装置は、浅い地中の鉱物に含まれている水を検出する。

宇宙ステーション

Bill Shepherd, Yuri Gidzenko and Sergei Krikalev arrived on the ISS in 2000, beginning 12 years of continuous habitation.

2000年、国際宇宙ステーションに到着したビル・シェパード、ユーリー・ギジェンコ、セルゲイ・クリカレフ。これ以降12年間にわたり、長期滞在が続いている

 国際宇宙ステーション(ISS)は、NASAと他国の宇宙機関との間で行われている科学的協力の最前線である。そうした協力関係に基づくISSでの人間の長期滞在は、11月初旬に12周年を迎えた。交替でISSに滞在する各国の宇宙飛行士は、これまでに1500件を超える実験を実施しており、その多くは医学、環境、宇宙に関する人類の知識を向上させる成果を挙げた。

 8月に公表されたISSの研究結果では、数カ月にわたり無重力状態で生活する乗組員の骨密度をより効果的に維持するための技術が特定されている。地球から遠く離れた場所に行こうとする宇宙飛行士にとっては、無重力環境での骨密度の低下が新たなリスクとなる。

太陽系

 宇宙での国際的な科学的協力により、地球に対する私たちの理解も深まっている。NASAや欧州宇宙機関が提供するデータは、NASAの言う「グリーンランドと南極大陸における氷床消失に関する、今までで最も包括的かつ正確な評価」を専門家が下すために役立っている。グリーンランドや南極大陸の氷床の融解や分離は、気候変動やその結果としての海面上昇と関連づけられている。11月に発表されたNASAの調査によると、グリーンランドと南極大陸の氷は、1990年代に比べ3倍以上も多く失われつつあることがわかった。この研究では、ドイツ航空宇宙センターと連携した。

 水星での氷の存在も、2012年のNASAによる重大な発見であった。2011年3月に無人宇宙船が太陽系の最も内側を回る惑星である水星に着陸し、2012年には、決して太陽に向かうことがない水星の極地方のクレーターに相当量の氷が蓄えられているという説を支持する「説得力のある証拠」が見つかった。では、どれほどの量の氷があるのか? NASAによると、面積177平方キロメートルのワシントンDC全域に高さ3キロメートルを超える氷を敷き詰められるほどの量があるとのことだ。

 これらすべての活動を行いながらも、NASAは未来を見据えている。7月には、人間を宇宙へ輸送する次世代の宇宙船「オリオン」が試験のために納入され、有人宇宙飛行の記念すべき一歩となった。NASAはオリオンについて、長期の宇宙飛行で乗組員の生命を維持した後、大気圏に再突入する能力を有しており、これまでに設計された中で最も進化した宇宙船になるだろうと語っている。

 NASAと民間部門のパートナーは、オリオンを打ち上げて重力圏を突破させ、太陽系内の調査対象となる惑星を探査することが可能になる新たな宇宙ロケット・システムの開発も進めている。

 12月初旬、NASAは火星探査の長期計画を発表した。2030年代に予定されている有人ミッションに先立ち、ロボットを使った科学ミッションをさらに数回実施して、火星についての理解を一層深める予定である。