マイケル・ラフ

オードリー・デッカーとティボー・デッカー夫妻は、情熱にあふれたアーティストであると同時に、児童の人身取引、世界的な飢餓といった人権にかかわる問題に熱心に取り組む活動家でもあります。夫妻が目指すのは、この2つの融合です。

ティボー・デッカーはシェアアメリカの取材に、「アートとは、あらゆる事象をあらゆる世代に伝えるための世界共通語です。私たちはそれをプラスの形で活用したいとずっと考えていました」と述べました。

夫妻は2015年、この課題への解決策を見つけました。ニューヨークでNPO法人、ストリート・アート・フォー・マンカインドを立ち上げ、国際的に活躍する80人のアーティストを支援し、人権をテーマとした壁画の制作とそれらを主要都市の人通りの多い歩道に設置する活動を始めました。目的は、人権問題への関心を集め、行動を促すことにあります。

飢餓撲滅

メキシコのストリートアーティスト、カルロス・アルベルトGH(写真、右)の作品。デトロイトに設置された「飢餓をゼロに」をテーマにした作品。果物と野菜に囲まれた女性が、手に食器の形をした正義の秤を持っている。アメリカ最大の3D壁画 (@ streetartmankind)

メキシコのストリートアーティスト、カルロス・アルベルトGH(写真、右)の作品。デトロイトに設置された「飢餓をゼロに」をテーマにした作品。果物と野菜に囲まれた女性が、手に食器の形をした正義の秤を持っている。アメリカ最大の3D壁画 (@ streetartmankind)

デトロイト、ニューオーリンズ、ヒューストン、カリフォルニア州オークランドでは、「飢餓をゼロに」をテーマとした壁画が登場し、世界的な食料不安を訴えています。展示は、首都ワシントンとミシガン州バトルクリークでも予定されており、作品の中には、飢餓から必要以上の影響を受けるアフリカ系住民に焦点を当てたものもあります。

オードリー・デッカーはこの展示について、「これは社会変化に関することであり、あらゆる点において、いかにして社会をより良い場所に変えていくかを訴えるものです」と述べました。

人身取引と児童労働撲滅に向けて

キューバ系アメリカ人アーティスト、アブストラクの作品。マイアミに設置されている壁画「売り物ではない」は人身取引の被害者をテーマにしている (@ streetartmankind)

キューバ系アメリカ人アーティスト、アブストラクの作品。マイアミに設置されている壁画「売り物ではない」は人身取引の被害者をテーマにしている (@ streetartmankind)

壁画には、助けや希望を求める幼い子どもたちが描かれていることがよくあり、このような作品を見過ごすことはできません。マイアミに設置されたある壁画は、フェンスの後ろに若い男の子が立っている様子を描いています。タイトルは、「売り物ではない」です。

児童労働撤廃国際年の今年、アーティストたちは、危険にさらされている子どもたちをテーマとした広告を100点制作し、ニューヨーク全域のバス停や人目につく場所に設置しました。無料アプリをダウンロードし、壁画をスキャンすると、製作者や児童労働に関する専門家の意見を聞くことができます。

ティボー・デッカーは、「私たちはアートの多様性を引き出し、アートを大衆化させ、あらゆる人がアートにアクセスできるようなオープンな形の美術館をイメージしています。アートを肌で感じるためにわざわざ美術館に足を運ぶ必要はありません」と説明しました。

男女平等の実現

スペイン人アーティスト、ルラ・ゴセの作品。パリでの「平等を目指す全ての世代フォーラム」開催を伝える壁画 (@ streetartmankind)

スペイン人アーティスト、ルラ・ゴセの作品。パリでの「平等を目指す全ての世代フォーラム」開催を伝える壁画 (@ streetartmankind)

デッカー夫妻は長年にわたり、国連などの国際機関と協力し、持続可能な開発目標(SDGs)をテーマとした壁画制作に携わってきました。今年は、国連女性機関主催の「平等を目指す全ての世代フォーラム」と連携し、メキシコシティ、パリ、ニューヨークに壁画を設置しました。

官民の機関がスポンサーとなり、参加アーティストたちに資金援助を提供しています。デッカー夫妻は2022年、国連と協力して中東でストリートアートのプロジェクトを立ち上げる予定です。

オードリー・デッカーは、壁画を設置する場所について、「多くの人が働く場所だから、(壁画を設置すると)日々目をとめてもらえます。メッセージのインパクトが強烈であれば、より多くのコメントを得ることができます」と語りました。

バナーイメージ:カナダのエマニュエル・ヤラスの作品。非営利団体ストリート・アート・フォー・マンカインドと協力し、国連創設75周年のためにニューヨークの国連本部近くに設置された (© Mary Altaffer/AP Images)