今年6月、オバマ大統領は、カリフォルニア州ヨセミテ国立公園の雄大な森と滝に囲まれて、こう話した。「この絶景は、iPadやテレビはもちろん、油絵でさえ捉えることができない。ここに来て、直接感じ取るしかないのだ。この公園には、世界最大の一枚岩エル・キャピタンや北米で最も落差のあるヨセミテ滝があり、シカ、ハヤブサ、オオヤマネコが生息し、樹齢2000年のセコイアもみられる。この場所には何か神聖なものがあり、これこそ、この渓谷の岩壁が「大聖堂の壁」と呼ばれたゆえんだ。ヨセミテでは人間だけでなく、何かもっと大きなものとのつながりを感じることができる」

オバマ大統領はミシェル夫人、娘のサーシャ、マリアと共に、米国国立公園局設立100周年を祝うため、ヨセミテ公園とニューメキシコ州のカールズバッド洞窟群国立公園で週末を過ごした。100周年を迎え、国立公園を管理し、レクリエーション、自然保護、史跡保存プログラムを通じてコミュニティーの参加を促す取り組みは2世紀目に入る。

2016年6月18日にヨセミテ国立公園で開催された "Every Kid In a Park" のイベントに参加する子どもたちと記念撮影するオバマ大統領とミシェル夫人 (AP Photo/Jacquelyn Martin)

2016年6月18日にヨセミテ国立公園で開催された "Every Kid In a Park" のイベントに参加する子どもたちと記念撮影するオバマ大統領とミシェル夫人 (AP Photo/Jacquelyn Martin)

1983年、小説家で歴史家のウォーラス・ステグナーは、「国立公園制度は、我々アメリカ人が思いついた最高の制度だ。まさにアメリカ的、民主的であり、アメリカ人の最も良い部分を反映している」と述べた。国民が楽しむため、そして国自身のために国家が自然を保護することを決めたのは、これが世界で初めてであり、1916年8月25日の国立公園局の設立はその象徴である。

1916年、ウッドロー・ウィルソン大統領は、国立公園局設置法に署名した。独自の管理組織と共通の目的を持ち、ワシントンに代表事務所を置く単一の連邦制度下に、現存する全ての公園と史跡を統合することを目的としていた。米国西部の広大で風光明媚(めいび)な国立公園は、今日も象徴的で重要な場所であるが、公園の定義は拡大した。国立公園局は現在、歴史的な公園や遺跡、国立記念碑、古戦場、軍事公園、レクリエーション地域、海岸、景観整備道路、湖岸など400を超える場所を管理する。ホワイトハウスや自由の女神像さえも国立公園制度に含まれる。

国立公園局創設100周年祝して米国郵政公社が発売した16枚の記念切手。国立公園や、関連する動植物、建造物が描かれている (U.S. Postal Service photo)

国立公園局創設100周年祝して米国郵政公社が発売した16枚の記念切手。国立公園や、関連する動植物、建造物が描かれている (U.S. Postal Service photo)

2015年3月、国立公園局と国立公園財団は、国立公園局設立100周年を記念して、公園に対する国民の意識を高め、教育を促すことを目的とする「Find Your Park 」(あなたの公園を見つけよう) キャンペーンを立ち上げた。このキャンペーンは、都会にある歴史・文化公園や、全米各地の自然、文化、歴史を保護し共有するプログラムに光を当てており、ウェブサイト(FindYourPark.com)のインタラクティブ・ギャラリーでは、一般の人々、国立公園局の職員や著名人から寄せられた国立公園にまつわる素晴らしいストーリーを知ることができる。

毎年3億人以上の人たちが国立公園を訪れ、思わず息をのむほどの景観と自然の驚異を経験する。しかし、国立公園の自然の美しさは日が沈んだ後も続く。ダークスカイ公園は、国際ダークスカイ協会により特に星空が美しいと認定された国立公園だ。デスバレー国立公園やナチュラルブリッジ国定記念物は、澄んだ夜空が見られることで有名だ。またアラスカ州のデナリ国立公園では、訪れる観光客がオーロラを見ることができる。こうした公園でキャンプをすると、夕食後天を仰ぐだけで、驚くべき数の星や銀河までも見ることができる。国立公園の中には天文学のプログラムを開催するところもあり、天体望遠鏡で夜空を見たり、先住民と夜空のつながりについて知ることができる。

2007年に世界初の国際ダークスカイ公園と認定されたナチュラルブリッジ国定記念物 (National Park Service/ Jacob W. Frank)

2007年に世界初の国際ダークスカイ公園と認定されたナチュラルブリッジ国定記念物 (National Park Service/ Jacob W. Frank)

国立公園を訪れる多くの人は、素朴なキャンプ場でのキャンプや、未開の地のハイキングを楽しむが、一方で「グランピング」(glamorousとcampingを合わせた造語) と呼ばれる、大自然の新たな楽しみ方も人気だ。グランピングでは、エアコン、専用バスルーム、心地よいベッドなど屋内の快適さを追求しながら、「美しいアメリカ」を楽しむことができる。グランピング施設は、モンゴル式住居ユルトの集落から、豪華な宿泊施設やスパ・サービスを提供する広大なリゾートまでさまざまだ。多くの施設でガイド付きのハイキングや、マウンテンバイク、スキーや釣りなどのレジャーが楽しめる。ヨセミテ、グレートスモーキー山脈、イエローストーン、シェナンドアなど多くの有名な国立公園にグランピング施設がある。

Lake Lodge Cabins lobby

イエローストーン国立公園にある宿泊施設レーク・ロッジ・キャビンズのロビー。イエローストーン湖の北岸にあり、1920年創業 (National Park Service)

馬に乗ってユタ州のアーチーズ国立公園を探索したり、フロリダ州のビスケーン国立公園の浅瀬礁でシュノーケルをしたりと、米国の国立公園には誰にとっても必ず楽しめるものがあり、国内外を問わず観光客の間で非常に人気が高い。国立公園保全協会によれば、海外からの観光客の5人に1人が米国滞在中に一度は国立公園を訪れる。旅行情報サイトのフォートラベルは、日本人観光客に最も人気のあるアメリカ国立公園のトップ3として、グランドキャニオン、モニュメントバレー、ヨセミテを挙げている。

国立公園の入園料は、私有車両1台につき数ドルから30ドルだが、小規模な公園の多くは入園無料だ。キャンプ場でのキャンプ料金も一晩30ドル以下と大変手ごろな一方、宿泊施設に泊まる場合、料金は施設によって大きく異なる。ガイド付きの散策、パークレンジャーによる説明会、キャンプファイヤー、そしてビジターセンターの展示物は通常無料である。国立公園によっては、入園料に無料送迎が含まれる場合もある。国立公園でキャンプをすると米国での旅行費用が安くなると、多くの人が認めている。

国立公園局設立100周年記念キャンペーンの名誉共同会長のミシェル・オバマ大統領夫人は、多くの人に「国立公園を訪ね、米国の美しい景観と素晴らしい歴史を楽しんでほしい」と言っている。