ローレン・モンセン

「料理は異なる文化を知る上で重要な要素」

こう語るのは、フレディー・ビッツーイだ。スミソニアン博物館にある国立アメリカンインディアン博物館のレストランで総料理長を務める。ここは、先住民の食材の現在と過去をつなぐ「架け橋」的存在のレストランだ。

ビッツーイは、「西洋文明は長きにわたり、西半球原産の食材は自分たちのものとして主張してきた」と言う。彼が目指しているのは、この誤りを正すことだ。

Bitsoie uses Native American cooking traditions at the museum’s restaurant. (© Carol Guzy)

博物館内のレストランで提供されるビッツーイの料理は、アメリカ先住民の伝統的な料理を取り入れていることが特徴だ (© Carol Guzy)

ビッツーイは、ディネ(ナバホ)族の出身。2016年、国立アメリカンインディアン博物館のレストラン「ミシタム・ネイティブ・フーズ・カフェ」で先住民初の総料理長に就任した。

「ミシタム」は、デラウェア族とピスカタウェイ族の言葉で「さあ食べよう!」という意味だ。ビッツーイは、さまざまな先住民文化を反映した料理を創作し、博物館の企画展を盛り上げる。

ビッツーイの料理の特徴は、先住民が昔から使う食材を取り入れていること。レストランメニューは4カ月ごとに変え、あらゆる人の口に合う「伝統的かつモダンで人気のある食材」を使った料理を提供する。

Bitsoie cooks meat in the kitchen of Mitsitam Native Foods Café. (© Carol Guzy)

ミシタム・ネイティブ・フーズ・カフェのキッチンで肉を焼くビッツーイ (© Carol Guzy)

「シェフは、どんな料理が流行っているか、『食の世界』で何が求められているかなど、常にアンテナを張っておく必要があります」とビッツーイ。メニューは季節感を大切にし、博物館の特別イベントにも合わせている。

メニューには通常、展示テーマを引き立たせる料理を取り入れる。しかし、ビッツーイはテーマにとらわれず、自由な発想で料理をアレンジする。

「料理やレシピのヒントは、旅行や自らの体験から生まれます。時には、他の人が作ってくれた料理やレシピからインスピレーションを得ることもあります。私たちは、伝統的なレシピをアレンジし、飽きのこない料理を作ることを心掛けています」

ミシタム・ネイティブ・フーズ・カフェは、先住民の地域ごとに5つのエリアに分かれている。

ビッツーイのお薦めは、「ノーザン・ウッドランズ」のクラムスープ。数百年前の古いレシピを基にしたもので、ニューイングランド・クラムチャウダーの元祖といえる。

Fry bread, a Navajo treat, is one of many offerings at Mitsitam Native Foods Café. (© Carol Guzy)

ナバホ族のスナック「揚げパンは」、ミシタム・ネイティブ・フーズ・カフェの看板メニューの1つ (© Carol Guzy)

「サウス・アメリカ」のお薦めは、チキンとライスのコリアンダー添え。ペルー大使館から招待したシェフが考案した料理で、新しくメニューに加えられた。

「グレート・プレーンズ」の人気料理は、バイソン肉を使ったバイソンバーガーだ。一方、「メソアメリカ」の最新料理は、シーフードの「ポソーレ(煮込み料理)」だ。

ポソーレは普通、豚肉や鶏肉を使う。「この料理をシーフードと組み合わせることは普通ならあり得ないけど、ノース・バンクーバー島に行った時に、シーフードを使うアイデアを思いついたんだ」とビッツーイは言う。

Bitsoie loves introducing new dishes to his guests. He says being the executive chef of Mitsitam Native Foods Café is his “dream job.” (© Carol Guzy)

新しい料理を生み出すのを楽しむビッツーイ。ミシタム・ネイティブ・フーズ・カフェの総料理長職はまさに「理想の仕事」と話す (© Carol Guzy)

一方、「ノースウエスト・コースト」で人気があるのは、ビーツと海藻のサラダだ。

ビッツーイは、ユタ州とアリゾナ州で育つ中で料理の面白さに目覚め、大学の時には料理学校にも通った。ワシントンに来る前から、既にニューメキシコ州でシェフとして活躍。受賞歴もある。

ミシタム・ネイティブ・フーズ・カフェの客足は絶えることがない。ビッツーイが作り出すおいしい料理求めて、地元の人や観光客がこの場所を訪れる。

「ミシタムの料理を食べようと世界中から人がやってきます。その人たちを失望させたくないからね」