カマラ・ハリスは、女性、黒人、そして南アジア系米国人として初の副大統領に選出され、いくつかの「ガラスの天井」を比喩的に打ち破りましたが、スイス人アーティストのサイモン・バーガーは、副大統領の肖像画を文字通りガラスのひびで制作しました。

ガラスの天井とは、女性やマイノリティーの昇進を阻む目に見えない現実的な障壁を指す言葉です。ガラスの天井とは無関係に、バーガーはたまたま熟練したガラス職人でした。

バーガーはハリス副大統領の肖像画を安全ガラスで作りました。安全ガラスは、内部にプラスチックの層があり、割れると完全には砕け散らず蜘蛛の巣状のヒビが入ります。彼はガラスを叩く強さや長さを変えながら技術を磨き、そのひび割れが驚くほど本人に似た肖像画になるよう仕上げました。

バーガーが描いたハリス副大統領の肖像画は、2月初旬に目立つ場所に展示されました。ナショナル・モールと呼ばれる首都の代表的な公園に立つワシントン記念塔とリンカーン記念館の間です。

「ガラスの天井を打ち破るカマラ・ハリス副大統領」のクローズアップ。リンカーン記念館がガラスの向こう側に見える。2021年2月、ワシントンにて (© Carolyn Kaster/AP Images)

「ガラスの天井を打ち破るカマラ・ハリス副大統領」のクローズアップ。リンカーン記念館がガラスの向こう側に見える。2021年2月、ワシントンにて (© Carolyn Kaster/AP Images)

この企画は、米国女性史博物館と女性リーダーのネットワーク「チーフ(Chief)」が資金提供したものです。女性史博物館は、現在はオンラインコレクションの展示を行っていますが、今後は拡大してワシントンで実際の博物館として開館予定です。副大統領のガラスの肖像画は、クリエイティブ・エージェンシーのBBHニューヨークが所有しています。この作品は現在、モールから撤去されていますが、同博物館は将来の再設置を予定しています。また、近々展示ツアーに出す計画も検討されています。

「女性が選ばれること、特に選挙で選出されることには大きな意義があります。カマラ・ハリスが初の女性として、また初の有色人種の女性として米国の副大統領に就任したことは、米国史上画期的な出来事です」。博物館のホリー・ホッチナー館長兼最高責任者はこう述べています。

「今日の進歩は、カマラのように権利のために声を上げ、前進し、選挙に立候補した先駆者たちの遺産の上に築かれたものです」とホッチナー館長。「彼女たちがガラスの天井にひびを入れ、他の女性たちが打ち破れるようにしたのです」

現在はガラスの肖像画の写真に加え、これまでに上下両院の議員や最高裁判所判事、そして国務長官としてガラスの天井を打ち破ってきた女性を紹介する動画など、マルチメディアのラインナップがオンラインで公開されています。

バーガーはニューヨークの写真家セレステ・スローマンの写真をもとに、ガラスの肖像画を制作しました。彼が考案した技法では、金槌を使って明暗をつけます。暗い色の薄層からなる安全ガラスに白いひびを入れ始め、熟練した技術で絵画に見えるよう作ります。ハリス副大統領の肖像画は、高さ約1.8メートル、重さ約160キロです。

この肖像画には、特別に大切なファンがいます。ナショナル・モールでこの肖像画を見て「素晴らしい」と言ったセカンド・ジェントルマンのダグ・エムホフです。

バナーイメージ:「ガラスの天井を打ち破るカマラ・ハリス副大統領」を描いたガラスの肖像画。ワシントン記念塔を背景に。2021年2月 (© Shannon Finney/Getty Images)