ノエラニ・カーシュナー

アメリカは、経済成長のための雇用創出と気候危機対策を両立しています。

ジョン・ケリー気候問題担当大統領特使は、イギリス王立国際問題研究所(チャタムハウス)で開催された世界的な気候行動の緊急性に関する会合で、気候変動への解決策を「産業革命以降、人類が手にした地球最大の経済機会」と呼びました。

グリーン雇用は、地球保護に貢献するものです。代表的なグリーン産業には、再生エネルギー、電気自動車・輸送、エネルギーの効率化、水処理、自然保護などがあります。

風力と太陽光は、アメリカ国内で調達できる最も安価なエネルギー源です。この分野の企業は、国内外で数百万人もの雇用を生み出す可能性を秘めています。

太陽光で「明るい」雇用機会

エネルギー省は、2035年までに太陽光エネルギーは、最大で150万人の雇用を生み出す可能性があると試算しています。

テキサス州北東部のサムソン・ソーラー・エネルギー・センター。太陽光パネルを設置する作業員 (Courtesy of Invenergy)

テキサス州北東部のサムソン・ソーラー・エネルギー・センター。太陽光パネルを設置する作業員 (Courtesy of Invenergy)

ウエストバージニア州にあるソーラーハラーは、太陽光パネルを設置する作業員の研修と採用を手掛ける企業です。ダン・コナントが会社を設立したのは、歴史的に石炭発電への依存度が高いアパラチア地域で太陽光発電の需要があると認識したことがきっかけでした。コナントは、太陽光の仕事をバーモント州で始め、太陽光発電を手ごろな値段で提供することを目指すエネルギー省の官民事業「サンショット・イニシアチブ」の顧問を務めていました。

2017年に非営利団体「グリーンビルディング協議会」の取材でコナントは、「私たちが採用と研修を行い、太陽光業界で正社員としての仕事を与えた全員が、その後は太陽光推進大使として活躍しています」と語りました。「私たちは数多くのパネルを設置しており、ウエストバージニア初の太陽光パネルも設置しました。今後も普及拡大を目指しますが、太陽光は異質なものではなく、より身近なものだと感じて欲しいと思います」と述べました。

ソーラーハラーは現在まで、ウエストバージニアと近隣のケンタッキー州、メリーランド州、オハイオ州に太陽光パネルを設置しています。

インベンタジーは、アメリカ内外の風力タービンと太陽電池パネルに資金を拠出している (Courtesy of Invenergy)

インベンタジーは、アメリカ内外の風力タービンと太陽電池パネルに資金を拠出している (Courtesy of Invenergy)

風力が生み出す雇用

アメリカが現在、風力発電から調達しているエネルギー量は、国内全体の約8.4%にすぎませんが、バイデン大統領は、2035年までに炭素汚染のない電力部門の構築、2050年までに排出量実質ゼロの経済実現という2つの目標を掲げました。エネルギー省はそれまでに、クリーンエネルギー、特に風力が、アメリカ全体のエネルギー供給量の55%を占めると予測しています。

イワン・モラレスは、テキサス州のグリーンエネルギー分野で13年間働いてきました。風力タービン技術者として、マカドゥー・テキサス・ウインド・エネルギー・センターに10年間勤務し、現在は州北東部にあるサムソン・ソーラー・エネルギー・センターの運用・保守マネージャーを務めています。

両センターを所有するのは、「インベンタジー」です。シカゴに拠点を置くエネルギー会社で、国内外で大規模な持続可能エネルギー事業の開発、所有、運営を行っています。

モラレスは、航空機整備工としてキャリアをスタートしました。整備士として培った技術が風力タービン技術者になるのに役に立ったと言います。

「多方面で幅広い知識を得ることは確実に役に立つと感じています。(風力)タワーの上ではいつでも、燃料漏れや電気接触器の不具合を目にする可能性があります。タービンの動きを変えるさまざまな事がたくさんあります」

今ではモラレスは、クリーンエネルギー分野でさらに大きな影響を与えるチャンスがあると言います。サムソン・ソーラー・エネルギー・センターが完成すれば、アメリカ最大の太陽光発電所になります。

モラレスは実際に自分が目にしてきた経験から、アメリカのクリーンエネルギー分野の仕事は今後も増え続けると言います。

「再生エネルギーは未来への道であることに間違いありません。国が目指す全体的な方向性は、太陽光であれ、風力であれ、グリーン発電だと思います」

バナーイメージ:オハイオ州ウォルブリッジにあるファーストソーラーの工場。組み立てラインに並ぶ太陽光パネル。10月6日撮影 (© Tony Dejak/AP Images)