チャールズ・ボールデン米国航空宇宙局(NASA)長官

チャールズ・ボールデン米国航空宇宙局(NASA)長官

 「やると決めたら世界も変えられます」。東京工業大学附属科学技術高等学校の生徒約150人を前にした講演で、チャールズ・ボールデン米国航空宇宙局(NASA)長官はこう述べた。2012年12月に東京を訪れた際、ボールデン長官は若者と熱心に交流し、「よく学び、一生懸命努力し、失敗を恐れてはいけません」と話し、積極的に夢を追いかけようと彼らにエールを送った。

 東工大附属高校での講演で、ボールデン長官はさまざまなNASAのプロジェクトを取り上げ、自らが参加した4回のスペースシャトルのミッションについて詳しく説明した。講演中も生徒たちに質問するなど、彼らが長官の講演を聞いているだけでなく、積極的に対話に参加した気持ちになれるように心がけた。話が終わると、長官は「ばかげた質問」などひとつもないと言って、生徒たちに遠慮なく発言するよう促した。そして最後には、「大きな夢を持って、自分のやりたいことをやろう」という言葉を生徒たちに贈った。

東工大付属高校でプロジェクトについて生徒に質問するボールデン長官

東工大付属高校でプロジェクトについて生徒に質問するボールデン長官

 講演に先立ち、ボールデン長官は生徒たちの科学プロジェクトの展示を見ながら、生徒たちと直接交流した。長官は生徒たちの説明に熱心に耳を傾け、研究について質問したり、研究の続け方についてアドバイスした。

 東工大附属高校訪問以外にも、ボールデン長官は「FacebookでNASA長官に質問しよう!」というイベントを通じて、日本の人々と意見交換した。Facebookには、小学生から専門家までさまざまな人から100件を超える質問が寄せられ、その中から選ばれた7つの質問にボールデン長官が自ら答えた。長官の回答はYouTubeで日本語字幕付きで見ることができる。

 ボールデン長官が回答した中には、子どもたちからのとても興味深い質問もあった。宇宙飛行士になりたいという夢をかなえるために、何をすればいいかという小学生からの質問には、「宇宙飛行士を目指すのはひとまず置いて、学校での成績をあげることに全力を尽くしましょう」と大変現実的なアドバイスをした。

 日本の宇宙開発に関する質問もあった。ボールデン長官は回答の中で、宇宙ステーション補給機「コウノトリ」や実験棟「きぼう」を開発した日本と日本宇宙航空研究開発機構(JAXA)を称賛した。コウノトリはこれまで3回、国際宇宙ステーション(ISS)に物資を輸送している。また「きぼう」は、ISSにいる宇宙飛行士が、実験装置を宇宙空間に出したり、棟内に取り込むことができるロボットアームを備えた最先端のカプセルである。長官は「日本には他のどの国も製造できない必要なものを作る能力があります」と評した。

 短い東京滞在中、ボールデン長官はあらゆる機会をとらえて、夢を追いかけること、そして自分にとって大切なことを決してあきらめないことを日本の若者に呼びかけた。そして「チャンスをつかみ、危険を冒す意思があれば、どんな逆境にも打ち勝てます。しかしそれには万全の準備が必要です。本当に、本当に、本当に一生懸命勉強しなければなりません。何度か失敗しても構いません。やり続けることです。懸命に努力して、失敗したからといって決してあきらめないでください」と励ました。