海岸、ごみ埋立地、廃棄物の山、海に浮かぶ大量のごみ。この中で、ひときわ目を引くのがプラスチックです。炭酸飲料、水、ジュース類の空容器は、飲んだ人間より何百年も「長生き」します。

ただし、これは、もしリサイクルされなければの話です。

米国を代表する企業、ザ コカ・コーラ カンパニーとプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)は、意欲的、かつ時として斬新な方法で、リサイクルに取り組んでいます。

世界200カ国以上で1日19億本の「コーク」などの飲料を製造・販売する世界最大の清涼飲料水メーカーのコカ・コーラは、2030年までに、販売する缶およびボトル飲料に使われている容器を全てリサイクルする目標を掲げています。現在、リサイクル率は60%です。

ジェームズ・クインシー社長兼最高経営責任者(CEO)は先ごろ「廃棄物ゼロ社会」ビジョンを発表し、「ボトルや缶が地球を害するようなことがあってはならない。廃棄物ゼロ社会の実現は可能だ」と述べました。

コカ・コーラが販売する缶やボトルがごみとして捨てられることは、ある程度は避けられません。しかし、コカ・コーラで環境政策を担当するベン・ジョーダン上級ディレクターは、「誰が製造元かは関係ない」とし、製造する容器100%相当量の容器のリサイクルを目指すと言います。同社は、ボトラー社などと協力して容器の回収・リサイクルを推進します。

廃棄プラスチックが散乱するイギリス、プリマスの海岸。革新的な技術により、汚れがひどいプラスチック容器のリサイクルも可能となっている。(© Matt Cardy/Getty Images)

海岸に打ち上げられるプラスチックごみは、概して汚れがひどく、通常のリサイクル工程で処理することができません。しかしP&Gは、ボランティアと非営利団体がフランスの海岸で回収した海洋廃棄プラスチックを25%使用したシャンプー容器を製造し、「ヘッド&ショルダーズ」ブランドとして17万本を限定販売、ドイツでは5万本を売り上げました。海洋廃棄プラスチックの再利用を他のブランドにも拡大し、さらなる市場展開を目指します。

この海洋プラスチック再利用の取り組みでP&Gが手を結んだのが、テラサイクルです。同社はニュージャージー州トレントンを拠点に多くの企業と連携し、通常は廃棄処分となるさまざまな物をリサイクルする方法を編み出しています。企業にとって最大の目的は、利益を生み出すことです。しかし、テラサイクル創業者でありCEOのトム・ザッキー氏は、「企業が望むのは、持続可能な方法で利潤を追求すること」と言います。

P&Gが海洋プラスチック汚染に取り組むきっかけとなったのは、世界経済フォーラム、エレン・マッカーサー財団およびマッキンゼー・アンド・カンパニーが発表した報告書です。この報告書は、2050年までに海洋プラスチックごみの重さが海に住む魚の総重量を超えると警告しています。

フランス・マルセイユの海に漂うプラスチック容器(© Aurora Photos/Alamy Stock Photo)

ハーバード・ビジネススクールに非営利のキャリアに向けた人材育成を目指すプログラム「ソーシャル・エンタープライズ・イニシアチブ」を共同で創設した同校のカッシュ・ランガン教授は、多国籍企業は「環境対策の最前線に立っている」と述べ、環境対策は単なる慈善事業やイメージアップの手段ではなく、「今や事業に必要不可欠になった」と訴えます。環境に害をおよぼす企業は、監視団体が公表し「企業ブランドが傷つくことに」なると言います。

国務省は、卓越した倫理的価値観を示す事業を海外で展開する米国企業に優秀企業賞(Award for Corporate Excellence)を授与しています。2016年は、チリやフィリピンで廃棄された魚網をスケートボードやタイルカーペットにリサイクルし、海洋ごみの削減に取り組んでいるブレオとインターフェイスの2社が受賞しました。