リー・ハートマン

先端技術は多大な利益をもたらします。マイクロチップは、電気製品を稼働させたり、宇宙探査を指揮したりするのに使われます。また、原子力発電所は人々に電力を提供します。

しかし、先端技術や機密技術が悪者の手に渡ると、それは安全保障上の深刻なリスクとなります。コンピューターのチップはミサイルを誘導することも可能です。ならず者政権は、核物質を武器の製造に使用するでしょう。

そのため、米国やその他多くの国々が多国間組織に参加し、危険性のある製品や技術が武器を拡散させる人物やテロリストなど、悪意のある者の手に渡らないようにしつつ、イノベーションの恩恵を共有しています。

これらの多国間組織に参加する国々は、信頼関係を築き、責任を持って技術と機器を管理するために必要な方針や手段を定めます。また、危険性のある技術が悪意のある者の手に渡らないようにするため、製品や軍民両用技術を見極め、他の国が輸出規制を定めるのを支援します。

輸出規制が効果的に実施されれば、企業や研究機関による武器拡散への関与や、国際安全保障に対する悪影響を否定することになり、適正な貿易が可能になります。

ロケットエンジンなどの軍民両用技術や軍需技術は、人間を宇宙に送ると同時にミサイルの発射も可能なため、厳密に管理されている (© Shutterstock.com)

ロケットエンジンなどの軍民両用技術や軍需技術は、人間を宇宙に送ると同時にミサイルの発射も可能なため、厳密に管理されている (© Shutterstock.com)

このような製品と技術の輸出規制を定める国際的な不拡散組織は、以下の4つです。

  • オーストラリア・グループ(AG):1985年発足。42カ国が参加し、輸出により化学および生物兵器開発を助長することのないよう、共同で政策に取り組む。
  • ミサイル技術管理レジーム(MTCR):1987年発足。35カ国が参加し、ミサイルの開発、製造、操作に使われる機器、材料、ソフトウェア、技術を共同で管理する。
  • 原子力供給国グループ(NSG):1975年発足。48カ国が参加し、核兵器拡散を防ぐため、材料、危機、技術の輸出についての指針を制定する。
  • 通常兵器及び関連汎用品・技術の輸出管理に関するワッセナー・アレンジメント:1996年発足。42カ国が参加し、武器、偵察かつ通常兵器に関連する軍民両用製品とその技術の輸出についての指針を制定する。

これらの協力関係により拡散の危険性は抑えられていますが、世界の平和と安全保障は依然として脅威にさらされています。

例えば、中国は世界各国との関係を悪用して、軍事目的の製品と技術を入手しています。米国家情報長官室は4月、中国が合法的手段からスパイ行為や窃盗に及ぶまで、あらゆる手段を使って技術力を向上させようとしていると警告しました。

また中国は、軍民融合戦略と国家情報法を通じ国内の企業や専門家に対して、平和的な目的に使われる技術であっても、彼らの持つ技術を軍と共有するよう命じたり、奨励したりしています。

軍民融合戦略は、中国全体の制度を再構築し、先端技術や機密技術を通じて経済と軍の近代化を図るものです。

2019年8月、米商務省は中国軍に提供する目的で米国の民間原子力技術を入手しようとした中国の原子力発電会社4社を新たに輸出禁止対象企業一覧に追加しました。この一覧は、企業が特別な許可なしに米国のソフトウェア、技術などを得ようとすることを阻止するものです。

米国のリンダ・トーマスグリーンフィールド国連大使は、武器の拡散を制限する多国間制度を厳守するよう11月2日に国連で各国に呼び掛けました。大使は、世界貿易を発展させるためには輸出管理が不可欠だとしました。

大使はこう述べています。「技術を活用しつつ、それらがテロリストなど悪意のある者の手に渡ることによって人々の健康、安全、人権、国際安全保障に悪影響を与える可能性を最小限にしたいというのは各国共通の願いです。私たちは協力してこの課題に取り組まなくてはなりません」

バナーイメージ:世界各国は、武器の拡散を防いだり、テロリストなどの悪意ある者が危険性のある技術を手に入れないようにするため、輸出管理を支持している (© Shutterstock.com)