ポール・ウルフスバーグ

米国では、この30年でサッカーの人気が急速に高まりました。

サッカーは今や、アメリカンフットボール、バスケットボール、野球に次いで4番目に人気のあるスポーツです。2019年に行われたギャラップ社の調査によると、史上最高となる31%の米国人がサッカーファンを自称しています。好きなスポーツとしてサッカーをあげる米国人の数は、1990年から2017年の間に7倍に増加しました。

では、なぜサッカーをしたり観戦したりする米国人がこれほどまでに増えたのでしょうか?

米国チームのディフェンダー、アレクシー・ララスに扮して、ワールドカップ米国対ブラジル戦の開始を待つファン。1994年7月4日、カリフォルニア州スタンフォード (© Eric Risberg/AP Images)

米国チームのディフェンダー、アレクシー・ララスに扮して、ワールドカップ米国対ブラジル戦の開始を待つファン。1994年7月4日、カリフォルニア州スタンフォード (© Eric Risberg/AP Images)

きっかけはワールドカップ

サッカーを通じて青少年を育成するボストンの非営利団体「サッカー・ユニティー・プロジェクト」の会長で共同設立者のキャロライン・フォスカトは、米国で開催された1994年のFIFA男子ワールドカップと1999年のFIFA女子ワールドカップが、米国内のサッカー人気に火をつける「大きなきっかけとなった」と言います。

ルーカス・リチャードソンは、10歳だった1994年にテレビでワールドカップを観てサッカーに心を奪われました。「試合を観たのを覚えています。その時にサッカーにはまりました」。リチャードソンは現在、スポーツを通じて世界的な公平性を推進する「サッカー・ウィズアウト・ボーダーズ」というグループに所属しています。

カリフォルニア州カーソンで6月18日に行われたメジャー・リーグ・サッカーの対ポートランド・ティンバーズ戦で、シュートを決めるロサンゼルス・ギャラクシーのフォワード、デヤン・ヨヴェリッチ(左) (© Alex Gallardo/AP Images)

カリフォルニア州カーソンで6月18日に行われたメジャー・リーグ・サッカーの対ポートランド・ティンバーズ戦で、シュートを決めるロサンゼルス・ギャラクシーのフォワード、デヤン・ヨヴェリッチ(左) (© Alex Gallardo/AP Images)

米国女子チームの活躍

米国男子代表チームがヨーロッパや中南米の強豪チームに追い付こうと苦戦する一方、米国女子代表チームの活躍は、米国内のサッカー人気を高める一助となりました。女子チームは、1991年の第1回FIFA女子ワールドカップ以来4回優勝し、オリンピックでは金メダルを4回獲得しています。1999年に女子代表チームが中国に勝利した試合は、4000万人の米国人が観戦しました。

フォスカトは言います。「海外の試合であれ国内の試合であれ、米国内でサッカーの人気を高めたのは女性たちなのです」

米国の若者の間ではサッカーの人気が高まっている。2017年6月19日、ニューヨークで練習後に子どもたちと片付けをするコーチのマーク・ボーハン (© Mark Lennihan/AP Images)

米国の若者の間ではサッカーの人気が高まっている。2017年6月19日、ニューヨークで練習後に子どもたちと片付けをするコーチのマーク・ボーハン (© Mark Lennihan/AP Images)

加入者が増える高校のチーム

全米州立高校協会(NFHS)によると、2021年から2022年にかけて80万人以上の学生が高校のサッカーチームに所属しており、陸上競技、バスケットボール、アメリカンフットボールに次いで4番目の多さとなりました。1969年から1970年にかけては、サッカーの人気順位は11位で、高校のサッカーチームに所属する学生の数は5万人以下でした。

ボストンに住むティム・バズルは、国務省のサイト「シェア・アメリカ」のインタビューで、サッカーから得られる価値観に共感したこと、またアメリカンフットボールと比べて比較的安全なことから、8歳の息子をサッカークラブに入れたと話しました。

バズルは言います。「アメリカンフットボールから得られるスポーツマン精神、チームワーク、助け合い、価値観と同じものをサッカーからも得られるんだ」

7月18日、メキシコのモンテレーで試合に臨む米国女子代表チームのスター選手、アレックス・モーガン(右) (© Fernando Llano/AP Images)

7月18日、メキシコのモンテレーで試合に臨む米国女子代表チームのスター選手、アレックス・モーガン(右) (© Fernando Llano/AP Images)

NFHSによると、1978年-1979年に2万3475人だった高校の女子サッカー選手の数は、2021年-2022年には37万4773人に増えました。背景には、1972年に可決された「タイトル・ナイン」と呼ばれる法律がありました。この法律は、教育の財源における性差別を禁止し、公立の学校や大学に対して運動プログラムや奨学金を男女平等に提供するよう義務付けたものです。

サッカーをする若者の増加に伴い、米国内ではプロの試合の観客数も増加しています。2022年には、メジャー・リーグ・サッカーで観客数が1000万人以上、ナショナル・ウィメンズ・サッカーリーグで100万人以上となり、男女双方のリーグで最高観客数を記録しました。

リチャードソンは自身がサッカーと出会った1994年を思い返し、サッカーは「自分が子どもだった頃と違って、主流文化の一部となった」と言います。

*米国のサッカーについての詳細は、シェア・アメリカのインスタグラム動画をご覧下さい。

バナーイメージ:米国女子代表チームの活躍は、米国内のサッカー人気を高める一助となった。写真は、2019年にフランスのリヨンで開かれたワールドカップで優勝し歓喜する米国女子代表チーム (© Francisco Seco/AP Images)

*この記事は、ShareAmericaに掲載された英文を翻訳したものです。