マイケル・ラフ

人権、気候危機、公衆衛生といった多くの課題は国境を越えて存在します。

当然ながら、解決策も国境を越えたものでなければなりません。

ブリンケン国務長官は5月7日、「多国間主義は依然として、難しいグローバル課題に対応する最善の手段」と述べました。

多国間主義とは、3カ国以上の国による組織化した関係性です。志を同じくする国が連携することで、それぞれがグローバルな課題を解決するよう互いに働きかけることができます。

バイデン大統領は9月の国連総会で、「我々共同の未来は、我々が同じ人類であることを認識し、共に行動を起こすことができるかにかかっている」と述べました。国連は、世界で最も知られ、かつ世界最大の多国間組織です。第2次世界大戦後の1945年、世界の平和と安全を守ると固く決意した国々によって創設されました。

多国間の取り組みとアメリカの関与をいくつかの例で紹介します。

コバックス(COVAX)

国ベースでは、アメリカはコバックスの最大支援国。コバックス経由でケニアに出荷されるワクチン (© Brian Inganga/AP Images)

国ベースでは、アメリカはコバックスの最大支援国。コバックス経由でケニアに出荷されるワクチン (© Brian Inganga/AP Images)

コバックスは、国際的な官民パートナーシップです。この枠組みを通じて、新型コロナウイルスワクチンが144カ国に住む数億人の人々に届けられ、全ての人が多国間主義から直接恩恵を受けることができました。コバックスは、コロナの診断、治療、ワクチンに革新的かつ公平なアクセスを提供しています。

アメリカは、11億回分以上のコロナワクチンをコバックス経由で他国に寄付しています。現在まで、コバックスは144の参加国に4億3500万回分のワクチンを出荷しました。

コバックスは、Gaviワクチンアライアンス、感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)、国連児童基金(UNICEF)、国連専門機関の世界保健機関(WHO)が連携して取り組んでいます。

北大西洋条約機構(NATO)

トルーマン大統領以降現在まで、全ての大統領がアメリカのNATOへの強い関与を確認してきた。アメリカ、ドイツ、オランダ、ルーマニア軍が10月に共同訓練を実施。写真は物資を運ぶドイツ軍のヘリコプター (U.S. Army/Michele Wiencek)

トルーマン大統領以降現在まで、全ての大統領がアメリカのNATOへの強い関与を確認してきた。アメリカ、ドイツ、オランダ、ルーマニア軍が10月に共同訓練を実施。写真は物資を運ぶドイツ軍のヘリコプター (U.S. Army/Michele Wiencek)

NATOは第2次世界大戦後の1949年にアメリカの働きかけで設立され、加盟国を攻撃から守ることを目的とし、75年近く大西洋を挟んだアメリカとヨーロッパの強固な関係の柱となってきました。

イェンス・ストルテンベルグNATO事務総長は、6月にバイデン大統領と会談し、強いNATOはヨーロッパ、アメリカ双方のためになると述べました。

6月14日にバイデン大統領は、2001年9月11日にアメリカを襲った同時多発テロに言及し、「NATOは、アメリカが第2次世界大戦以降初めて領土攻撃にあった際に立ち上がってくれた。私は国民に対して、このことを忘れないよう伝えている」と述べ、アメリカのNATOへの強い関与を確認しました。

東南アジア諸国連合(ASEAN)

10月26日にオンラインで開催されたASEAN首脳会合に出席するバイデン大統領。ASEANは、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムの10カ国からなる (© Brunei ASEAN Summit/AP Images)

10月26日にオンラインで開催されたASEAN首脳会合に出席するバイデン大統領。ASEANは、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムの10カ国からなる (© Brunei ASEAN Summit/AP Images)

域内同盟は、経済、安全保障問題に対応する上で不可欠です。アメリカは40年以上にわたり、経済、安全保障で、ASEANと連携してきました。最近では、10月26日にオンライン開催されたASEAN首脳会合に出席したバイデン大統領が、東南アジア諸国との関係の重要性を訴えました。

アメリカはASEANに対して、健康、気候、経済、教育、ジェンダーの公正と平等を支援するため、1億200万ドルの拠出を約束しました。

バイデン大統領は会合で、「アメリカとASEANとのパートナーシップは、長年にわたり我々が共有する安全と繁栄の土台となってきた自由で開かれたインド太平洋を維持していくうえでなくてはならない」と述べました。

オーストラリア、インド、日本との4カ国関係「クアッド」の一員でもあるアメリカは、自由で開かれたインド太平洋地域を確実なものにしようと取り組んでいます。9月24日には、バイデン大統領の呼びかけでクアッド・サミットが開催されました。

パリ協定

バイデン大統領が就任初日に真っ先に行ったのは、気候変動という地球規模の脅威に取り組むためパリ協定に復帰することでした。

4月には、史上初の気候サミットを開催し、参加した40カ国以上の首脳が、前例のない国際協調と炭素排出削減の必要性を確認しました。9月には、メタン排出削減などの取り組みへの支援を呼びかける首脳会合も開催しました。

国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)開催中の11月1日、バイデン大統領は、「我々がもし共に取り組み、それぞれの責任を真摯に果たせば、気温上昇を1.5℃以内に抑えるという目標が実現可能となる」と述べました。