アメリカ南東部に位置するテネシー州は、雄大なグレートスモーキー山脈、音楽にまつわる伝説的な名所の数々、南部特有の心温まるおもてなしなど、さまざまな魅力に溢れる州です。州のスローガンは「America at its Best」。「アメリカ最高の地」を自認するのもうなずけます。

「テネシーには楽しみがたくさんあります」と、ナッシュビル出身のウィリアム・ハガティ駐日米国大使は言います。「アウトドアや音楽、料理ではメンフィスのバーベキューリブやナッシュビルのホットチキンを楽しみたい人は、とにかくテネシーに来てください!」

色濃く残る音楽文化

テネシーは、ブルース、ブルーグラス、カントリー、ロックンロールの聖地として有名です。ハガティ大使が日本人観光客に勧めるのは、テネシー州各地を巡り、今なお人々を魅了するテネシー発祥の幅広いジャンルの音楽に触れる旅です。「エルビス・プレスリーが暮らしたメンフィスから旅を始めてはいかがでしょう。ブルースとロックンロールの長い歴史がある町です。ナッシュビルはカントリー・ミュージックの本場として知られています。グランド・オール・オプリ(カントリー・ミュージックをライブ放送するラジオ番組)が、ナッシュビルの歴史あるライマン公会堂で開催されたこともあります。ブルーグラス人気が根強いテネシー州東部もお勧めです。州北部のブリストルでは、カントリー・ミュージックのルーツと魂を感じることができます」

世界一の長寿ラジオ番組「グランド・オール・オプリ」は、ナッシュビルのグランド・オール・オプリ・ハウスから中継されています (AP Photo/Mark Humphrey)

メンフィスのダウンタウンにある繁華街ビールストリートは、ルイ・アームストロングやB.B.キングといった巨匠たちがかつて演奏していた豊かな歴史があり、連邦議会が制定した法令により「ブルースの故郷」と定めれれています。町を散策し、ナイトクラブやレストランからもれ聞こえてくるライブ演奏に耳を傾けると、この地域に深く根付いた音楽文化に浸ることができます。

全米、そして世界の多くの国で放映されている人気テレビドラマ・シリーズ「ナッシュビル」もまた、音楽に満ち溢れたテネシーの魅力を発信しています。テネシー州経済地域開発局長時代、ハガティ大使は、ドラマの新シーズンが制作されるたびに、ナッシュビルでのロケを続けるよう働きかけました。「この番組を通して『アメリカの音楽の都』としてのナッシュビルとテネシー州の認知度が高まり、世界各地から音楽ファンが訪れるようになりました。誇りに思います」と大使は言います。

メンフィスにあるエルビス・プレスリーの邸宅「グレースランド」に入る観光客たち (AP Photo/Mark Humphrey)

驚くべき大自然、数々の史跡

テネシー州には、米国で最も人気のある国立公園、グレートスモーキー山脈国立公園があります。「スモーキー」という名前は、青みがかった霧が頻繁に山脈にかかる様子からつけられました。ここでは、アパラチア地方の山岳文化について学んだり、ハイキングコースを歩き、静寂のなか流れ落ちる滝を見ることができます。冬は、スキーやスノーボードも楽しめます。他にも、水しぶきを上げながら川を下るラフティング、木から木へとジャンプするジップライン、ミシシッピ川を巡るリバークルージングなど、アウトドアを満喫できます。州内の多くの川や湖では、マスやバス釣りもできます。

グレートスモーキー山脈国立公園内のリトルリバー・ロード沿いにあるメイグズ滝 (Photo: U.S. National Park Service)

観光客にとっては、歴史探訪もテネシー州の魅力の1つです。州全体が南北戦争遺産地域に指定されており、州内に残された数多くの戦跡や史跡が、150年以上前に国を分断した戦争の様相を、今も力強く語り続けています。メンフィスには、1968年4月4日にマーティン・ルーサー・キング・ジュニアが暗殺されたロレイン・モーテルがあり、現在は国立公民権博物館として利用されています。この博物館はアメリカの公民権運動にまつわる主な出来事を記録し、今日の国際的な公民権・人権問題を研究しています。

南北戦争でのシャイローの戦いで戦ったテネシー出身の兵士たちをたたえる記念碑 (AP Photo/Adrian Sainz)

素朴な郷土料理とおもてなし

伝統的な南部料理も、テネシーの魅力の1つです。中でも、豚1匹を丸ごと、かまどの中で20時間かけてじっくりとスモークするバーベキューは、テネシーの名物料理です。出来上がった肉の身をほぐし、ビネガーソースにつけて食べます。リブ肉の場合は、甘めのトマトソースにたっぷりつけて食べるか、ハーブや香辛料で味付けします。ナッシュビルの地元グルメと言えば、辛いホットチキンです。カイエンペッパーをまぶしたフライドチキンを、白パンの上にのせ、ピクルスと一緒に食べます。また、コーンブレッドやバターミルクビスケット、ナマズのから揚げ、バナナプディングも、絶対に食べたいテネシーの郷土料理です。

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テネシーにも、日本同様、ウイスキー作りの歴史があります。リンチバーグにあるジャックダニエル蒸留所では、限定商品を試飲し、およそ150年前から続く、家族に伝わる製法を用いたウイスキー作りの伝統を学ぶことができます。「テネシーウイスキー街道」には、小規模の蒸留所から、代々ウイスキー製造を手がける老舗まで、大小あわせて約30の蒸留所が立ち並びます。ノックスビル、メンフィスやナッシュビルには、クラフトビールの醸造所も数多くあり、冷たいビールを提供しています。アルコールが苦手の人には、南部でよく飲まれる甘めのアイスティーもお勧めです。すっきりとした味わいです。

退屈とは無縁の場所

モータースポーツ、フットボール、アイスホッケーやバスケットボールなど、テネシーでは、さまざまな人気スポーツイベントがあり、スポーツファンたちを飽きさせることはありません。観光客の皆さんは、テネシアンたちの熱心な応援を見て、彼らが地元チームに寄せる誇りを肌で感じることができるでしょう。ナッシュビルでは、プロのサッカーチームがまもなく創設される予定で、ハガティ大使も楽しみにしています。「新しい要素が加わることで、ナッシュビルは、特にサッカーを愛するミレニアル世代にとって、文化的に豊かで興味深い都市へと変貌していくでしょう」と大使は言います。

ナッシュビルで開催されたNFLのテネシー・タイタンズ対ヒューストン・テキサンズの試合の前半、タイタンズを応援するファンたち (AP Photo/James Kenney)

テネシーは、誰もが心から楽しめる場所です。長年にわたって多くの日本企業がテネシーに進出していることから、地元の人たちにとって、日本人観光客は特別な存在です。「テネシーと日本は深い絆で結ばれており、その関係の始まりは約40年以上前にさかのぼります」と大使は説明します。「私の地元テネシーには180社の日本企業が進出し、4万人以上を雇用しています。私は、進出している日本企業および経営者たちとの間に強い絆を感じています。日本企業の皆さんもテネシーとの間に深い絆を感じていると思います」