なぜアメリカ人は感謝を伝えるときに食事を共にするのか ?

アメリカの感謝祭は、家族や友人と集い、伝統的な料理を食べ、日々の生活に感謝する日です。

感謝祭は、1621年に現在のマサチューセッツ州で3日間にわたり行われた豊作祭を起源としており、毎年11月の第4木曜日にお祝いします。もともとは、原住民であるワンパノアグ族が新大陸で生き延びるために必要な農作物の育て方や、狩猟や漁の仕方などをイギリス人入植者に教えたことのお礼に、入植者たちがワンパノアグ族を食事に招待したことが始まりといわれています。入植者たちは野生の七面鳥、アヒル、ガチョウ、魚介類、トウモロコシ、野菜、そしてドライフルーツなどを振舞い、ワンパノアグ族は鹿肉を持ってきたそうです。

Turkey is the main course at a typical American Thanksgiving dinner. (© AP Images)

七面鳥は感謝祭の食事のメインディッシュです。(© AP Images)

感謝祭の料理には今も、南北アメリカ大陸原産の材料が多く使われています。七面鳥、クランベリーソース、マッシュポテト、パンプキンパイなどが食べられますが、地域ごとの特色もみられます。北東部では、七面鳥はメープルシロップでつやを出し、パンで作ったスタッフィングには栗が入っています。メリーランド州のボルチモア市ではザワークラフトも出てきます。南部ではコーンブレッドのスタッフィングに牡蠣を加え、飴がけをしたスイートポテトを火であぶったマシュマロと一緒に供すところもあります。南西部ではアンチョチリ(唐辛子の一種)とクミンをまぶした七面鳥が出ます。

感謝祭は今でもアメリカ人にとって、神の恵みに感謝し、それを分かち合う日です。アメリカの多くの都市では、ボランティアが貧しい人々に感謝祭の食事を振舞い、教会、モスク、寺院などの宗教団体が宗派を超えて感謝祭を祝います。異なる宗教間の理解促進に取り組む非営利組織「ショルダー・トゥー・ショルダー」のクリスティーナ・ワーナー氏によると、感謝祭は、他のアメリカの祝日とは違い特定の宗教と関係していません。そのため異なる宗教を持つ人々同士でも共に祝うことができます。ワーナー氏は「異なる宗教に属する人々が互いを知るには食事を共にすることが基本です」とも言っています。

例えば、テネシー州メンフィスでは、ハートソング合同メソジスト教会とメンフィス・イスラミックセンターが毎年合同で感謝祭を祝います。イスラミックセンターの理事であるダニッシュ・シディクイ氏は「私たちはよい関係を構築するためにさまざまな取り組みをしてきました」と言います。イスラム教徒が2009年にイスラミックセンターの建設を待っていたときには、ハートソング教会がラマダンの夜間礼拝の場所を提供しました。そしてイスラム教徒の礼拝者たちは食べ物を持ってきて、メソジスト信者と分かち合うようになりました。ハートソング教会の人々が合同で感謝祭の食事を囲むことを提案すると、イスラミックセンターの人々はその提案に賛成しました。ただし「自分たちが料理を作る」という条件付だったそうです。

アメリカ人が感謝祭の意味を語るビデオをご覧ください(英語のみ)。