TOMODACHIイニシアチブは日米両国の深い結びつきを体現しています。悲劇的な東日本大震災の直後、米国はトモダチ作戦を通じ、最も大きな被害を受けた地域で緊急救援・援助活動を実施し、日本の友人を支援できたことを誇りに思っています。また米国の民間部門や国民から驚くほど多くの精神的支援や義援金が寄せられ、米国から大勢のボランティアが駆けつけたことで、被災地で両国の新たな結びつきが生まれました。

福島県南相馬市の県立原町高校を訪れた(写真前列右から)ルース大使、ソフトバンクの孫正義社長、桜井勝延・南相馬市長(写真 在日米国大使館)

私たちが東北と日本全体の長期的な復興への貢献の仕方について考え始めたのは、震災の発生から1カ月もたたない頃でした。ルース駐日米国大使は震災直後に会った陸前高田市の戸羽市長から、同市の子どもたちに米国に行く機会が与えられれば、それが最善の支援策のひとつになるという話を伺いました。米国で英語力を強化し、さまざまな経験をすれば、子どもたちは世界的な視野で物事を考えられるようになり、将来、陸前高田市の長期的な復興という重要な仕事に携わる準備になります。戸羽市長の言葉に触発され、私たちはアイリーン・ヒラノ氏および米日カウンシルと協力し、東日本大震災からの長期的な復興の基礎となる若者たちへの投資を重視する官民パートナーシップ、TOMODACHIを設立しました。

TOMODACHIは、近い将来、日本と米国、そして日米関係を担うことになる日米の若者たちへの投資に力を注いでいます。この新しいTOMODACHI世代がつくり上げる絆は、将来の日米関係の基盤となるでしょう。TOMODACHIは教育・研究、スポーツ・音楽・芸術、起業支援・指導者育成という3つの主要分野で重点的にプログラムを実施します。

教育・研究

教育・研究プログラムは、互いの国、文化、考え方に触れるという経験を通じて日米両国の若者の人生を豊かにし、彼らに刺激を与えることを目的としています。TOMODACHIは既存の教育・研究プログラムを向上させるとともに、東北地方と連携し、日米関係全般の強化に資する新たなプログラムづくりを目指します。

例えばTOMODACHIは日本、特に東北の子どもたちに米国での短期交流プログラムに参加する機会を提供します。ゼネラル・エレクトリック、コカ・コーラ、ソフトバンクなど日米の企業から支援を受け、今年は最大で450人の東北の子どもたちを米国に派遣し、研修の機会を提供する予定です。

著名ミュージシャンのウィル・アイ・アムもTOMODACHIへの支援を表明しました(写真 在日米国大使館)

また日米の生徒をつないで英語学習を支援するバーチャル・クラスルームも推進しています。最先端のソフトウエア・ハードウエア技術を活用し、生徒同士の交流を深め、日常生活で英語を使う機会を増やす取り組みです。

GEファンデーションは東北地方の大学向けの医療教育プログラムを後援しています。このプログラムには次世代の医療情報の専門家を育成する大学課程や、地域の保健分野での協力を推進する開業医、介護専門家、地方自治体を対象にしたセミナーなどが含まれます。

スポーツ・音楽・芸術

 日米両国の人々が互いの文化について学び、長く興味を持ち続けるきっかけとなるのがスポーツ、音楽、芸術です。TOMODACHIは長年続いている数多くの権威あるプログラムや、日米の著名スポーツ選手、芸術家、ミュージシャンや音楽家、芸能人と協力します。 ウィル・アイ・アムやトム・クルーズなどの著名人が日本でのイベントでTOMODACHIへの支援を表明しており、被災した方々とも交流しました。

鉄人リプケンが開催した野球教室(写真 在日米国大使館)

TOMODACHIは米大リーグとも協力し、野球をするという両国共通の楽しみを通じ、東北の子どもたちが元気を取り戻すよう支援してきました。元大リーグ選手でアメリカ野球殿堂入りを果たした「鉄人」カル・リプケン・ジュニア氏が国務省のスポーツ特使として来日し、ボルチモア・オリオールズの元チームメートであるブレイディ・アンダーソン氏、日本プロ野球の「鉄人」として知られる衣笠祥雄氏と共に、東京、大船渡、西宮、京都で野球教室を開催しました。また震災で被害を受けた東北地方の野球場や施設の再建、野球の道具やユニフォームを東北の子どもたちに提供して、再び野球ができる環境を整えようとしています。

起業支援・指導者育成

多くの若者や地域社会の指導者たちが、東北地方の復興と長期的な経済の繁栄に向け、起業家精神と指導力の発揮を求める声に応えて立ち上がりました。TOMODACHIは成功するために必要な技能、専門知識、資金をそうした若者や指導者に提供することで彼らの取り組みの支援と進展を促すプログラムを推進しています。

東京アメリカンセンターは先ごろ慶応大学と合同で、東北地方の経済復興に重点を置いた「アントレプレナーシップ・セミナー・アンド・ビジネスプラン・コンテスト」を開催しました。このイベントには10校から50人の学生が参加し、東北地方および北海道の大学に所属する学生が半数以上を占めました。このセミナーを通じ、学生たちはセミナーで知り合ったアドバイザーや支援者からの助言を受けながらビジネスプランを実施する意欲を持つようになりました。「TOMODACHI世代への投資」がこの合同セミナーのテーマであり、参加者にはルース大使の署名入りの認定証が贈られました。

ルース大使を見送る福島県川俣南小学校の子どもたち(写真 在日米国大使館)

TOMODACHI世代への投資

 東北地方の人々は東日本大震災で全てをなくしたように思われました。しかし被災地の若者たちが将来の希望や夢をなくすことは一度もありませんでした。むしろ私たちが目にしたのは、東北を再建し、この国を活性化しようという日本全国の若者たちの決意でした。TOMODACHIは日本と米国の若者の向上心を支援し、夢を持ち、その実現に向け計画を立て、実行する日米の将来の世代、すなわち互いの文化や国を理解し、成功と社会への貢献に必要な世界中で通用する技能と国際的な視点を備え、日米関係の将来に深く関わるTOMODACHI世代の育成を目指しています。