ローレン・モンセン、リンダ・エプスタイン

自由な社会では、自らの才能を政府の干渉なしに追求することができます。2021年に功績が認められ世界的な賞を受賞した人の中に、アメリカ人映画製作者、物理学者、ワクチン研究者が名を連ねました。中でも特筆すべき受賞者たちを紹介します。

ビリー・アイリッシュ (© Stefan Jeremiah/AP Images)

ビリー・アイリッシュ (© Stefan Jeremiah/AP Images)

3月、毎年恒例のレコーディング・アカデミーによるグラミー賞授賞式が開催され、さまざまな分野のアーティストに賞が与えられました。栄冠を勝ち取ったのは、3人の女性シンガー・作曲家です。最優秀R&Bパフォーマンス賞を含む4部門で賞を獲得したのはビヨンセで、黒人の遺産、誇り、孤独に敬意を表した曲「ブラック・パレード」が高く評価されました。テイラー・スウィフトは、心温まるフォーク系ポップ「フォークロア」で最優秀アルバム賞を受賞、ビリー・アイリッシュは、幻想的な曲「エブリシング・アイ・ウォンテッド」で最優秀レコード賞に輝きました。

アンソニー・ホプキンス (© Alexandre Meneghini/AP Images)

アンソニー・ホプキンス (© Alexandre Meneghini/AP Images)

4月に行われた直近1年の優秀な映画作品と作品制作者をたたえる映画芸術科学アカデミー主催のアカデミー賞(オスカー)授賞式では、認知症を共感的な視点から描いた「ファーザー」で主役を演じたアンソニー・ホプキンス(ウェールズ出身。2000年から米国籍)が、最優秀男優賞を受賞しました。

最優秀主演女優賞は、車で生活をしながら日雇いの仕事をし、アメリカ各地を転々とする女性を描いた「ノマドランド」で主役を演じたフランシス・マクドーマンドに贈られました。(中国出身でアメリカを拠点に活動する映画監督のクロエ・ジャオは、有色人種そして中国人女性として初めて最優秀監督賞を獲得、オスカーの歴史塗り替えた。ノマドランドは中国では検閲された。)

6月、コロンビア大学(ニューヨーク州ニューヨーク)が、アメリカの優れた報道に与えられるピューリッツァー賞受賞者を発表、新疆ウイグル自治区に住む数千人のイスラム教徒を収容するため中国政府が秘密裏に建設した大規模監獄と強制収容所の所在を明らかにしたバズフィードのメーガ・ラジャゴパランと2人の協力者(イギリス人建築家アリソン・キリング、オーストリア人情報記者クリスト・ブシェック)に栄誉が贈られました。

9月、シカゴに拠点を置くジョン・D & キャサリン・マッカーサー財団は、2021年マッカーサー「天才助成金」(旧マッカーサー財団助成金)の授与者を発表しました。この助成金は、芸術、社会活動、歴史、文学、科学分野で才能ある個人を支援するもので、62万5000ドルが各授与者に無条件で支給されます。授与者は財政の心配なしに、安心してさまざまな研究に打ち込むことができます。2021年は、不遇の黒人映画製作者による映画界への貢献を研究するジャックリーン・スチュワート、触地図などの目の見えない人や視覚障害者のための道具を設計するジョシュア・ミーレ、南北アメリカにあるヒスパニック地域間に存在する社会的、文化的なつながりを記録した作家兼ラジオ番組プロデューサーのダニエル・アラクロンに贈られました。

ダニエル・アラクロン (© MacArthur Foundation)

ダニエル・アラクロン (© MacArthur Foundation)

10月には、スウェーデンのノーベル委員会が、人類に著しい恩恵を与えた13人の受賞者を発表しました。その一人が、地球の気候変動と自然災害をコンピューターで再現する研究を先駆けて行ったプリンストン大学の気象・気候学者、眞鍋淑郎です。眞鍋教授は、日本で教育を受け、後にアメリカ国籍を取得しました。(今回のノーベル物理学賞は、ドイツのクラウス・ハッセルマンと共同で受賞。)

眞鍋淑郎 (© Alex Brandon/AP Images)

眞鍋淑郎 (© Alex Brandon/AP Images)

ノーベル医学・生理学賞は、温度と触覚を感知する受容体の発見が慢性的な痛みの治療に何らかの影響をおよぼすことを明らかにした生理学者デービッド・ジュリアスと、分子生物学者で神経科学者のアーデム・パタプティアンの2人のアメリカ人研究者に贈られました。

また10月には、国家の安全と強じん化に貢献した連邦政府職員をたたえるサミー賞(正式名、サミュエル・J・ヘイマン国家奉仕メダル)も発表され、非営利団体「パートナーシップ・フォー・パブリック・サービス」は、新型コロナウイルスの遺伝子情報を使って、現在世界各国で接種されているワクチンの基本構造を設計した国立衛生研究所の2人のワクチン研究者、バーニー・S・グラハム博士とキズミキア・コーベット博士に最優秀賞を授与しました。

国立アレルギー感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長は、「2人の名前は後世にわたり歴史に刻まれていく」とたたえました。(ファウチ博士は2020年にサミー賞を受賞。)

コロナワクチンについて議論するグラハム博士(左)。研究室で働くコーベット博士 (© Evan Vucci/AP Images)

コロナワクチンについて議論するグラハム博士(左)。研究室で働くコーベット博士 (© Evan Vucci/AP Images)

バナーイメージ:テイラー・スウィフト (© Jordan Strauss/Invision/AP)