レーン・ミクラ

もし皆さんがアメリカに留学したら、多くの大学生だけでなくあらゆる人々がこの時期に熱狂する「マーチ・マッドネス(3月の熱狂)」を体験するでしょう。バスケットボールの大学ナンバーワンを決める全米大学体育協会(NCAA)1部所属チームのプレーオフトーナメントが行われるからです。この盛り上がりは3月中旬から4月上旬まで続きます。

マーチ・マッドネスの期間中は、インターネットのスピードが遅くなります。あまりにも多くの人がオンラインで試合を観戦するからです。2018年の最新データによると、テレビ放送された試合の広告収入は13億2000万ドルでした。また、昨年は9700万人がトーナメントを観戦しました。

以下の質問と回答で、このアメリカ特有のイベントがよく理解できるでしょう。来年キャンパスで声をからして自校を応援をしているのは皆さんかもしれません。

ソルトレークシティーで行われた今年のNCAA男子バスケットボールトーナメント。試合中ドリブルでベイラー大学のマカイ・メイソン選手をかわすゴンザガ大学のザック・ノーベル選手 (© Jeff Swinger/AP Images)

ソルトレークシティーで行われた今年のNCAA男子バスケットボールトーナメント。試合中ドリブルでベイラー大学のマカイ・メイソン選手をかわすゴンザガ大学のザック・ノーベル選手 (© Jeff Swinger/AP Images)

人気の理由は?

アメリカ人は母校に強い愛着を持っています。入学後2カ月の新入生であれ、30年前の卒業生であれ、自分とつながりのある大学を応援するファンは、そのチームが最高であり勝利が当然と信じています。

そして何よりエキサイティングです。プロバスケットボールと比べ、大学のプレーオフは試合数が少なく、一発勝負のトーナメントが短い期間に行われます。たとえ応援しているチームが全米選手権に出場できなくても、ファンは試合を観戦します。お金のためにプレーするプロ選手と異なり、大学の選手は純粋に大学のため、そしてバスケットが好きという理由でプレーするからです。

出場できるチームは?

NCAA1部では300以上のチームが競い合います。トーナメント出場校を決める今年の「セレクション・サンデー」は3月17日で、選考委員会が男子68チームの対戦表を発表しました(発表と同時に60校は出場が確定し、下位8チームは最終64チームの4枠をかけて予選を戦います)。女子64チームについては、別の選考委員会が対戦表を発表します。

毎回、各カンファレンスで優勝した32校は自動的に選出されます(カンファレンスとは地域ごとに大学を分けたグループのこと)。選考委員会は、残りの36チームをシーズンの成績やスケジュール上の問題などを考慮して選び、その後全チームを4つの地区に振り分けます。

各地区の最上位チームは「第1シード」枠を与えられ、次の上位4チームは「第2シード」という順番で対戦が組まれていきます。トーナメント1回戦で、第1シードのチームは第16シードのチームと対戦し、第2シードのチームは第15シードのチームと当たります。つまり、最上位チームと最下位チームが対戦するわけです。中間シードのチームは、トーナメント前半戦では力が互角の相手と対戦することになります。

2018年NCAA女子バスケットボールトーナメントの準決勝。コネチカット大学との延長戦で勝利のシュートを決めたノートルダム大学のアリケ・オグンボワレ選手 (© Ron Schwane/AP Images)

勝利の行方は?

マーチ・マッドネスの人気が高いもう一つの理由は、専門家でさえ勝者の予想が困難なことです。

今春の男子の第1シード2チームは、デューク大学とノースカロライナ大学チャペルヒル校という強豪常連校です。いずれもバスケットボールの歴史に名を連ねてきました。残り2枠はバージニア大学とゴンザガ大学で、これまで好成績を残していながらも、マーチ・マッドネスで優勝したことはありません。しかしながらマーチ・マッドネスをスリリングにするのは、シンデレラチームの出現です。バスケットボールでは注目度の低い「アンダードッグ」と言われるチームが、無敵の強豪として名が通ったチームを破る番狂わせが起こるからです。

昨年の大会では、ロヨラ大学シカゴ校が第11シードから勝ち進み、ベスト4に入りました。大番狂わせは、総合第1シードだったバージニア大学が、1回戦で第16シードのメリーランド大学ボルチモア校に敗れたことです(第1シードの1回戦敗退は史上初)。今年は、第12シードのオレゴン大学が「アンダードッグ」と言われていました。マーチ・マッドネスで活躍し、「ブラケット・バスターズ(番狂わせを起こすチーム)」になる可能性もありましたが、3月25日のゲームでバージニア大学に敗れました。一方で多くのファンが優勝を予想していた総合第1シードのデューク大学は、2回戦で第9シードのセントラルフロリダ大学にあわや敗北を喫するところでした。その後勝ち進みましたが、ミシガン州立大学の前に敗退しました。つまり今大会では、何が起きてもおかしくないのです。

準決勝では、バージニア大学とオーバーン大学、ミシガン州立大学とテキサス工科大学が対戦します。それぞれの勝者が翌日の決勝で対決し、チャンピオンが決まります。

女子の大会でもベスト4が出揃いました。コネチカット大学、ノートルダム大学、ベイラー大学、そしてオレゴン大学の4校です。