マイケル・ラフ、シェリー・ブルックバッカ―

アメリカ全土の消防署で女性の貢献が進み、伝統的に男性の職場と言われた分野で新たな金字塔を打ち立てています。

2月、オハイオ州ワシントン区消防局に勤める3人の女性消防士は、消火要請に応じる同消防局初の「女性消防チーム」を結成しました。2020年9月、フロリダ州パームビーチガーデンズ消防・救命救急局でも同じような動きがありました。1963年の設立以降初めて、女性消防士だけでシフトを組むチームを立ち上げました。

ウエストバージニア州フレームタウン自警消防団に所属する消防員の半数以上は女性です。ここは女性が多数を占めるアメリカ唯一のボランティア消防団として知られています。

パームビーチ消防隊のクリスティナ・クラコウスキは、地元メディアの取材に「私たちはどんなことでもできる」と述べ、消防士を目指す少女たちに「自分の夢を何かに邪魔させてはだめ」とアドバイスしました。

復員軍人の日のパレードに参加するマイアミビーチ消防署の女性消防士 (© Jeffrey Greenberg/Universal Images Group/Getty Images)

復員軍人の日のパレードに参加するマイアミビーチ消防署の女性消防士 (© Jeffrey Greenberg/Universal Images Group/Getty Images)

バイデン大統領は機会均等を「アメリカの民主主義を支える土台」と呼び、国内の政府機関や社会だけでなく、世界中でインクルージョンの推進を重視することを掲げています。

ジョージア州サウスフルトン消防署でアフリカ系女性として初めて隊長の階級に就いたアンドレア・ホールは、バイデン大統領の就任式で忠誠の誓いを手話とともに朗読しました。

2021年1月20日、連邦議会議事堂で開かれた第59回大統領就任式にて、忠誠の誓いを朗読するアンドレア・ホール (© Andrew Harnik/AP Images)

2021年1月20日、連邦議会議事堂で開かれた第59回大統領就任式にて、忠誠の誓いを朗読するアンドレア・ホール (© Andrew Harnik/AP Images)

アメリカは女性消防士の歴史が古く、第2次世界大戦中は海外に従軍する男性に代わり、女性が消防の仕事を担っていました。非営利団体「ウィメン・イン・ファイヤー」によると、当時は女性消防士のみの消防署もありました。しかし1970年代になると、男性が多数派の消防署に女性が入るようになり、女性だけの消防署はなくなりました。

1982年11月5日、103人の男性とともに消防学校を卒業し、ニューヨーク市消防局に入った女性消防士たち (© David Bookstaver/AP Images)

1982年11月5日、103人の男性とともに消防学校を卒業し、ニューヨーク市消防局に入った女性消防士たち (© David Bookstaver/AP Images)

2018年の統計を引用した全米防火協会の報告書(2020年2月発行)によると、女性の職業消防士は1万5200人、ボランティア消防士は7万8500人となっています。

アメリカ全体の消防士に占める女性の割合は8%にすぎませんが、女性消防士の数は増加傾向にあり、その存在感も高まっています。隊長もしくは副隊長の階級にいる女性は数百人おり、150人は方面隊長、消防司令長、小隊長や副隊長などの任務に就いています。

ミネソタ州インバーグローブハイツ消防署のジュディ・シル署長は、シェアアメリカの取材に、女性幹部の登用は女性消防士の採用や訓練に役立っていること、そして女性消防士の仕事への取り組み方は男性と異なる場合があると言います。

2020年8月14日、ミネソタ州インバーグローブハイツ消防署は63年の歴史で初めて、女性消防士だけでシフトを組むチームを結成 (© Inver Grove Heights Fire Department)

2020年8月14日、ミネソタ州インバーグローブハイツ消防署は63年の歴史で初めて、女性消防士だけでシフトを組むチームを結成 (© Inver Grove Heights Fire Department)

「女性が他の女性にはしごの登り方を教えてあげるのは大切なことだと常々考えていました。私は男性と同じぐらい速く登ることができます。ただやり方が違うだけです」(シル)

2020年8月、インバーグローブハイツ消防署は63年の歴史で初めて、女性消防士だけがシフトを組むチームを立ち上げました。

マリー・ヒルシュはロサンゼルス消防署に入る訓練として、食生活を変え、週に10時間の筋力トレーニングやコンディショニング運動を行っていました。トレーニング計画の動画の中で、「消防士になりたいのは人助けが好きだから。人生の新しい一歩を踏み出すことが楽しみです」と語っています。

2017年8月3日、ロサンゼルス消防学校を卒業したクラス唯一の女性、マリー・ヒルシュ (© Ronen Tivony/NurPhoto/Getty Images)

2017年8月3日、ロサンゼルス消防学校を卒業したクラス唯一の女性、マリー・ヒルシュ (© Ronen Tivony/NurPhoto/Getty Images)

高校生の頃から消防士になるのが夢だったキャロル・ステイプルスは1985年、バージニア州アーリントン郡消防署に入りました。配属された日、そこには女性用更衣室はなく、上司の更衣室を使わせてもらっていました。

25年間勤務した後、2010年に退職。消防士は難しくもあり、やりがいのある仕事と振り返ります。シェアアメリカの取材に対して、「本当に素晴らしい仕事。また消防士になりたい」と答えました。

バナーイメージ:男性社会の消防署で女性消防士の活躍が目立っている。2014年4月、ニューヨークの資金集めイベントに参加する女性消防士 (© John Minchillo/AP Images)

*この記事は、ShareAmericaに掲載された英文を翻訳したものです。