世界各地の新型コロナウイルス感染症との闘いで、ワクチン開発と感染症治療におけるアメリカの指導力が必要不可欠となっています。

アメリカの研究開発は、黄熱病や麻疹、ポリオといった恐ろしい感染症から世界中の人々を守るワクチンを生み出してきました。エイズウイルス(HIV)対策にも多額の資金を投じ続けています。

このような過去の科学的進歩から得た教訓は、安全で効果的な新型コロナウイルスワクチンを一日も早く開発する上で役立っています。例えば、既存の麻疹ワクチンを使ったワクチン開発研究も進んでいます。

エイズ救済大統領緊急計画(PEPFAR)や世界健康安全保障アジェンダ(GHSA)といった取り組みを通じた世界保健プログラムへのアメリカの投資は、国際連携を構築し、今では世界の新型コロナウイルス対策を支えています。

ポンペオ国務長官は9月2日、安全で効果的なワクチンを発明しようとするアメリカの熱心な研究活動に関して、「アメリカは世界中の人々にワクチンを届ける使命に最も献身的に取り組んでいる国であり、今後もそうあり続ける」と述べました。

アメリカは世界の新型コロナウイルス対策に総額205億ドルを拠出しています。そのうち数十億ドルはワクチン開発への投資です。

このような熱心な研究活動の土台となっているのが、アメリカで世界の感染症対策研究を行ってきた科学者たちの歴史的偉業です。

黄熱病

黄熱病は何世紀にもわたり人類を苦しめてきた感染症でしたが、原因や予防法は解明されていませんでした。多くの人が出血や臓器不全などの症状に苦しみ、時には死に至ることもありました。

1900年、黄熱病研究委員会を率いていた陸軍医のウォルター・リードは、黄熱病は蚊が媒介して運ぶウイルスが原因であることを突き止めました。この画期的な発見をきっかけにウイルス研究が進み、1937年にはニューヨークのロックフェラー財団に勤務していた南アフリカ出身のウイルス学者マックス・タイラーが、ニワトリ胚細胞を使ったワクチン開発に成功しました。

黄熱病ワクチンは現在も使われ、何億人もの人に接種されてきました。

ポリオ

ポリオウイルスワクチンは、アメリカ人医師であり研究者、そしてウイルス学者であるジョナス・ソーク博士によって1950年代に開発されました。開発される前までは、毎年何十万人もの子どもたちがポリオウイルスから発生するまひに苦しんでいました。

ルーズベルト財団は、全米各地で実施した100万人以上の子どもが参加した対照試験観察でソークのワクチンの有用性を検査しました。有用性を示す試験結果が得られたことから、ワクチンは1955年4月12日に認可されました。

1988年、アメリカは「世界ポリオ撲滅推進活動(GPEI)」の立ち上げを支援、連邦議会は1990年代からポリオ根絶に向け数億ドルを拠出してきました。これにより1988年から2013年にかけ世界のポリオ感染件数は99%以上減少しました。2020年、アフリカは野生株ウイルスによるポリオ感染の根絶を宣言しました。

麻疹

麻疹ワクチンは1963年、アメリカ人生物医学研究者ジョン・エンダースによって開発されました。ワクチンが開発される前までは、毎年およそ260万人もの人が命を落としていました。

モーリス・ヒラーマン博士。風疹、おたふくかぜといった感染症ワクチンを開発、多くの人の命を救った功績がたたえられている。写真は1963年3月頃 (© AP Images)

モーリス・ヒラーマン博士。風疹、おたふくかぜといった感染症ワクチンを開発、多くの人の命を救った功績がたたえられている。写真は1963年3月頃 (© AP Images)

5年後の1968年、モーリス・ヒラーマンは麻疹ワクチンに改良を加えました。現在使われているワクチンは、この改良版です。アメリカ疾病予防管理センターによると、2018年まで世界の麻疹死亡件数は14万2000件にまで減少しました。

ヒラーマンはその後、おたふくかぜ、A型肝炎、B型肝炎、髄膜炎、肺炎、風疹など40種類以上のワクチンを次々と開発しました。

エイズウイルス(HIV)

2003年にアメリカが立ち上げたPEPFARは、一つの国による単一疾病対策としては史上最大の支援事業です。現在まで世界のエイズウイルス対策に総額850億ドル以上の資金援助を行ってきました。この枠組みは、50カ国以上で1800万人以上の人たちの命を救い、多くの人を感染から防ぎ、感染予防に向けた取り組みの推進力となっています。

PEPFAR設立に関わったウォルター・リード陸軍研究所・感染症研究センター所長のネルソン・マイケル博士は、エボラ出血熱とジカ熱のワクチン開発を支援しています。現在、人類をエイズウイルスと新型コロナウイルスから守るためのワクチン研究を進めています。

「PEPFARは大きな影響をもらしました。(このおかげで)多くの人が今も元気に暮らしています」。マイケル博士はこのように述べています。

バナーイメージ:1954年2月23日、ピッツバーグの小学校。世界初のポリオウイルスワクチンを開発したジョナス・ソーク博士からで予防接種を受ける子ども。アメリカのワクチン開発の歴史から得た教訓が、安全で効果的な新型コロナウイルスワクチンの開発に役立っている (© AP Images)