ローレン・モンセン、レノア・アドキンス

アメリカの夏の集まり。その中心にあるのは屋外でのグリルとバーベキューです。

ホットドッグやハンバーガーだけではありません。直火や熱した炭火で食材(たいていは肉)をゆっくりと焼いて作る、食欲をそそるバーベキューは大人気です。また、バーベキューのスタイルは行く先々によって異なると、食の歴史家で「ブラック・スモーク:アフリカ系アメリカ人とバーベキュー合衆国 (Black Smoke: African Americans and the United States of Barbecue)」の著者、エイドリアン・ミラーは言います。焼いた野菜のメニューが増えてきましたが、地元のバーベキューファンは、肉の部位や調理法、ソースの材料など、その地域特有のレシピにこだわります。

サウスカロライナ州チャールストンにある「ロドニー・スコット・ホール・ホッグ・バーベキュー」で食事を楽しむ「ブラック・スモーク」の著者エイドリアン・ミラー (Courtesy of Adrian Miller)

サウスカロライナ州チャールストンにある「ロドニー・スコット・ホール・ホッグ・バーベキュー」で食事を楽しむ「ブラック・スモーク」の著者エイドリアン・ミラー (Courtesy of Adrian Miller)

南部は肉が大好きです。南北カロライナ両州では、豚肩や丸ごとの豚を串焼きにしたポークバーベキューがメインです。アラバマ州、ジョージア州、ミシシッピ州など、さらに南に行くと、ポークと同様にチキンバーベキューも人気があります。

カンザスシティ周辺のレストランでは、グリルした肉に加える糖蜜ベースの甘いソースが自慢です。テキサス東部では、「テキサス州三大名物」のブリスケット、ソーセージ、ポークリブを探すのが通です。

シカゴではポークリブティップ(リブを一口大にカットしたもの)やチキンが人気です。また、テネシー州メンフィスでは、豚肉にスパイスをたっぷりかけて食べます。セントルイスでは、「スヌーツ(豚のあごや鼻)」が食べられます。

レシピのルーツ

アメリカのバーベキューには、ネイティブ・アメリカンの強い基盤があると、ミラーは言います。初期のアフリカ系アメリカ人の料理人は、ネイティブ・アメリカンの技術を取り入れ、回転串や高くした調理台のほか、浅いピットを使って肉を燻したり焼いたりしていたそうです。

現在のアメリカ人のバーベキュースタイルは、1700年代にバージニアのイギリス人植民者がアフリカ人の奴隷に食べ物を調理させたことから徐々に生まれました。アフリカ系アメリカ人はバーベキューに熟練し、この頃からそれを広めていきました。彼らの調理法が進化する中で、現在各地域で人気のあるバーベキュースタイルが生まれたのです。

ミラーによると、黒人のバーベキュー調理人たちは、船や駅馬車、列車で移動しながら、本場の「南部バーベキュー」の味を国中に広めていきました。「アフリカ系アメリカ人は長い間、最も効果的にバーベキュー大使を務めたのです」とミラーは言います。彼らは多くの場合、都市部でバーベキューを販売した最初の起業家で、時には自宅や路地、レストランでも販売を行いました。

20世紀に入り、バーベキューが農村部から都市部へと移行するにつれ、特定の都市に関連した地域のスタイルが形成されるようになったとミラーは言います。

家族の絆

セントルイスのレストラン「スモーキ・オーズ・バーベキュー・アンド・ケータリング (Smoki O's BBQ and Catering)」は、共に70歳を迎えたアーリン・ウォーカーと夫のオーティスが1997年に開店しました。それ以来伝統を守り続けており、世界中から客が訪れます。

「スモーキ・オーズ」の有名なバーベキュー・ピッグ・スヌート (Courtesy of Smoki O’s BBQ and Catering)

「スモーキ・オーズ」の有名なバーベキュー・ピッグ・スヌート (Courtesy of Smoki O’s BBQ and Catering)

彼らの目当ては、テレビで紹介されたこともある名物の「バーベキュー・ピッグ・スヌーツ」。アーリンによると、このスヌーツはベーコンのような風味があり、メキシコのチチャロンのようなカリカリした食感だそうです。「バーベキューソースをかけるだけで、さらに美味しくなるの」。アーリンはこう話します。

1940年代、セントルイスのレストランで働くためわずか15歳でミシシッピ州を離れたオーティスの母親のレシピをもとに、ウォーカー夫妻はこのレストランをオープンしました。母の死後、自分の店を持ちたいとオーティスが考えたのです。なぜなら「彼の母親のようにバーベキューを料理する人はいなかったから」とアーリンは話します。

「スモーキ・オーズ」は長年にわたり地域に根付いた老舗です。地元の若者グループと共によくボランティア活動をするウォーカー夫妻は、これまでに16人の大学生の学費を支援してきました。また、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが発生した際には、地元の消防署や警察署にランチを提供しました。

夫婦は生まれ育った場所の近くに住んでいます。「だからこそ、人々を助け、思いやりを持ち続けることがとても大切なのです」。オーティスはこう語りました。

笑顔を見せるセントルイスの「スモーキ・オーズ・バーベキュー・アンド・ケータリング」のオーナー、アーリンとオーティス・ウォーカー夫妻(右)、スタッフのセドリック・ウィリアムズ(左)とアンティオン・グレイ(左から2番目)(Courtesy of Smoki O’s BBQ and Catering)

笑顔を見せるセントルイスの「スモーキ・オーズ・バーベキュー・アンド・ケータリング」のオーナー、アーリンとオーティス・ウォーカー夫妻(右)、スタッフのセドリック・ウィリアムズ(左)とアンティオン・グレイ(左から2番目)(Courtesy of Smoki O’s BBQ and Catering)

バナーイメージ:バーベキューしたポークリブ、ブリスケット、ビーフリブ、チキンの盛り合わせ (© Marie Sonmez Photography/Shutterstock)