ミシェル・オバマ米国大統領夫人が3月18日から22日までの日程で、日本とカンボジアを訪れました。世界の女子教育の向上を目的とするアメリカの新たなイニシアチブ“Let Girls Learn”を推進するためです。アメリカがこのイニシアチブを実施する上で、日本は重要なパートナーです。一方カンボジアは、“Let Girls Learn”プログラムが最初に実施される国の1つです。

今回の旅で参加したイベントや訪れた場所の印象について、ミシェル夫人がつづった旅行記の一部をご紹介します。


3月17日

現在、学校に通っていない少女は世界中で6200万人います。その多くは、単に授業料が払えないことが理由ですが、たとえ授業料が払えても、最寄りの学校から遠く離れた場所に住んでいて、毎日歩いて通うのが危険なため学校に通えない場合もあります。一部の国では、幼くして結婚し子どもを生むことを強要されるため、教育を受けられない少女もいます。これは少女たち自身だけでなく、彼女たちの家族、住む地域、そして国にとっても大きな損失であり、痛ましいことです。

米国政府が先ごろ、世界の女子教育を推進する新たな取り組み「女子に教育を」(Let Girls Learn) イニシアチブを開始したのはそのためです。しかし世界の女子教育の危機という問題はあまりにも深刻で、アメリカだけで解決することはできません。世界各国の助けが必要です。私の旅を日本から始めるのはそのためです。今週、日本とアメリカは世界の女子教育に関する新たなパートナーシップを発表し、他の国にも参加を呼びかけます。その後「女子に教育を」プログラムの運用が最初に始まる国の1つ、カンボジアを訪問します。教育の力で人生が変わろうとしている少女たちと話をするのを楽しみにしています。

3月19日

昨晩、東京に着き、今朝は安倍昭恵首相夫人と共に、世界中の少女が学校に通えるようにする新たな日米間のパートナーシップを発表しました。

日米連携発表後のイベントで日本の学生と意見交換をするミシェル夫人と昭恵夫人。2015年3月19日、東京の外務省飯倉公館にて (Official White House Photo by Amanda Lucidon)

日米連携発表後のイベントで日本の学生と意見交換をするミシェル夫人と昭恵夫人。2015年3月19日、東京の外務省飯倉公館にて (Official White House Photo by Amanda Lucidon)

飯倉公館に集まった子どもたちと握手するミシェル夫人。2015年3月19日 (Official White House Photo by Amanda Lucidon)

飯倉公館に集まった子どもたちと握手するミシェル夫人。2015年3月19日 (Official White House Photo by Amanda Lucidon)

3月20日

京都は1000年以上にわたり日本の都でした。三方を山に囲まれた景色のせいか、かつてここに住んでいた貴族たちは「雲の上の住人(雲上人)」と呼ばれることもあったそうです。現在、京都は歴史、文化、そして四季折々の色に彩られています。この季節は、梅の花がきれいに咲いていました。もう少しすれば、ここ京都の桜もワシントンDCのそれと同様、満開になることでしょう。実は、ワシントンのタイダルベイスンやナショナルモールにある桜は1912年に日本から贈られたものなのです。つまり、日本とアメリカは美しい桜の木によって1世紀以上も前から結ばれているのです。

京都を訪問中、私たちは清水寺と伏見稲荷大社に立ち寄りました。この2つの寺社はそれぞれ、デザイン的にも技術の面でも卓越しています。またこの2つを訪れると、神道と仏教が日本の歴史においていかに大きな役割を果たしてきたかがよく分かります。

清水寺の大西英玄執事補(写真左)から同寺の説明を聞き、能を鑑賞する、ミシェル夫人、ケネディ大使、大使の息子ジャック・シュロスバーグ氏 (Official White House Photo by Amanda Lucidon)

清水寺の大西英玄執事補(写真左)から寺の説明を聞き、能を鑑賞する、ミシェル夫人、ケネディ大使、大使の息子ジャック・シュロスバーグ氏 (Official White House Photo by Amanda Lucidon)

まず清水寺を訪問しました。はるか昔、仏教がアジアそして日本で普及していく中で、日本全国の町や山中に、雄大で素晴らしいお寺がたくさん建造されました。そのうちの1つです。清水寺では能も鑑賞しました。そして最後に、日本の伝統的な茶道のお手前を拝見し、私もトライしてみました。茶道の所作は細部にまでこだわっていて、とても繊細です。

茶道を体験するミシェル夫人とケネディ大使

茶道を体験するミシェル夫人とケネディ大使(写真奥)、ジャック・シュロスバーグ氏(手前) (Official White House Photo by Amanda Lucidon)

「鳥居のトンネル」を通るミシェル夫人 (Official White House Photo by Amanda Lucidon)

「鳥居のトンネル」を通るミシェル夫人 (Official White House Photo by Amanda Lucidon)

清水寺の後は伏見稲荷を訪れ、「鳥居のトンネル」を抜けて山の上まで登りました。トンネルのそばにはキツネの像もありました。キツネはお稲荷さまの使いであり、稲荷神社では欠かせない存在として、他にも境内のあちこちに見られました。また神社、特に稲荷神社には、絵馬に願い事を書くという伝統的な風習があるそうなので、私もその伝統に習うことにしました。伏見稲荷では、キツネの形をした絵馬の片方には願い事を書き、もう一方にはキツネの顔を描くそうなのですが、私は両方にキツネの顔を書きました!

パフォーマーと一緒に太鼓をたたくミシェル夫人

パフォーマーと一緒に太鼓をたたくミシェル夫人 (Photo by U.S. Consulate General, Osaka-Kobe)

その後、高校生たちによる和太鼓の生演奏を見ました。大勢のパフォーマーとたくさんの太鼓による躍動感溢れるダイナミックな演奏を楽しむことができました。私も太鼓の演奏に挑戦しましたが、とても楽しくて大好きになりました! 今回の滞在中に日本国内に何万とある寺社を代表する2つを訪れることができ、とても光栄に感じています。

3月21日

「ルーム・トゥー・リード」プログラムで学校に通う女子生徒たちと言葉を交わすミシェル夫人 (Official White House Photo by Amanda Lucidon)


「ルーム・トゥー・リード」プログラムで学校に通う女子生徒たちと言葉を交わすミシェル夫人 (Official White House Photo by Amanda Lucidon)

カンボジア初日はまず、私と同じく女子教育の充実に力を注いでいるブン・ラニー首相夫人と共にフン・セン・バコン高校を訪問しました。この高校では、ルーム・トゥー・リード(Room to Read)という団体による、学校から離れたところに住む女子生徒を対象とする特別な奨学金プログラムが組まれていました。カンボジアでは、学校から離れたところで暮らしている少女は、通学が危険である、あるいは交通費が払えないという理由で、しばしば学校に通うのを諦めてしまいます。しかし、ルーム・トゥー・リードはこうした女子生徒に対し、学校内に住んで教育を受けられるよう、住居費、そして食費、教材費等をカバーする奨学金を提供しています。この奨学金を受給している女子生徒たちと会って話をしたのですが、彼女たちはとても聡明で、勉強に対し情熱を持っており、夢を追い求めていました。

それから、アメリカの平和部隊のボランティアや、地元のリーダー、学生、教育関係者を対象にカンボジアで行われている「女子に教育を」トレーニングを視察しました。彼らは女子のリーダーシップ育成など素晴らしい仕事をしていますが、このトレーニングを受けることで、女子教育や能力育成に欠かせないスキルや知識をさらに身に付けることになるでしょう。

アンコールワット
その後、私はアンコールワットを訪れました。アンコールワットは、カンボジアの国旗にも描かれているほどカンボジアのシンボルとして有名になっています。カンボジアの古代王国クメール帝国の首都であったシェムリアップにあります。寺院を歩いていると、この寺院を建設した高度な文明の名残を目にしました。壁に刻まれた何百もの美しい彫刻が古代の人々の息遣いを伝えていました。彼らが祈りをささげたに違いない大きな回廊、古代の人々も歩んだであろう支柱の立ち並ぶ長い廊下も目にすることができました。なぜ古代の帝国がこの寺院を捨てたのかは知る由もありません、しかし15世紀に人々はこの寺院は残して去ってしまったのです。しかしその後も、巡礼者や観光客によるこの地の訪問が途絶えることはありませんでした。あれから数世紀―私もこの偉大な寺院を訪問でき心から感謝しています。

3月22日

今回の旅で、私は女子教育に力を注いでいるリーダーたちと意見を交換しました。加えてとても優秀な少女たちや、女子教育を懸命にサポートしているボランティア、教師の方々ともお話しする機会を得ました。同時に、日本とカンボジアの豊かな文化と歴史にも触れることができました。とても有意義な旅でした。

*この記事はホワイトハウスのウェブサイトに掲載された The First Lady's Travel Journal からの抜粋を日本語に翻訳・編集したものです。英語の全文はこちらをご覧ください。