サウスダコタ州はアメリカ中西部のグレートプレーンズと呼ばれる大平原にあり、州の面積の約90%が草原という緑豊かな土地です。州の名前である「ダコタ」はアメリカ先住民族のスー族の言葉、ダコタ(仲間)に由来します。州都は州のほぼ中央に位置するピアですが、州最大の都市スーフォールズがある州の東部に州民の大半が住んでいます。一方、州の西側は牧畜業が盛んな地域で、特にブラックヒルズと呼ばれる低木の松におおわれた山地は、スー族が聖地としてあがめた場所でもありました。1870年代後半に聖地を守ろうとするスー族と白人との間で激しい戦いが繰り広げられたブラックヒルズは、「壮烈第7騎兵隊」や「ダンス・ウイズ・ウルブス」など多くの映画の舞台にもなっています。そのブラックヒルズ一帯で最も有名な観光スポットが、4人の大統領の顔が彫られたマウントラッシュモア国立メモリアルです。

ここはおさえたいマウントラッシュモア

ブラックヒルズへの旅のゲートウェイはラピッドシティが便利です。マウントラッシュモア国立メモリアルはラピッドシティから車で40分ほどの場所にあります。マウントラッシュモアに刻まれている4人の大統領は、一番左がアメリカ建国の父と呼ばれる初代大統領ジョージ・ワシントン、その隣がルイジアナ買収でアメリカの国土を拡張した第3代大統領トーマス・ジェファソンです。ジェファソンの隣がパナマ運河を建設し、経済の発展に貢献した第26代大統領セオドア・ルーズベルト。そして一番右は民主主義の理念に基づき奴隷解放を行った第16代大統領のエーブラハム・リンカーンです。ニューヨークの自由の女神と並ぶアメリカ民主主義のシンボルともいえるマウントラッシュモアは、14年の歳月をかけ1941年に完成しました。マウントラッシュモアのふもとには800メートルほどのプレジデンシャルトレイル(遊歩道)があり、各大統領の紹介と功績がわかりやすく記されています。

マウントラッシュモアはアメリカ民主主義のシンボル (©Osamu Hoshino)

マウントラッシュモアはアメリカ民主主義のシンボル (©Osamu Hoshino)

アメリカ先住民の象徴クレージーホース

マウントラッシュモアが民主主義の象徴であるのに対し、アメリカ先住民族のシンボルがクレージーホースです。侵入者に対して勇敢に立ち向かったスー族の戦士、クレージーホースをたたえた記念碑です。1948年、スー族の長ヘンリー・スタンディングベアの依頼により、マウントラッシュモアの彫刻に携わった一人の彫刻家、コーチャック・ジオルコウスキーが彫り始めました。1982年に彼が亡くなった後は、彼の家族がその意志を引き継いでクレージーホースを彫り続けています。完成すると高さ169メートル、幅192メートル、顔の大きさだけでも27メートルとなり、マウントラッシュモアの数十倍の世界最大の彫刻になります。アメリカ連邦政府からの援助の申し入れを断り、民間からの寄付のみで支えられている現在進行中のプロジェクトです。

 

アメリカ先住民族のヒーロー、クレージーホース (©Osamu Hoshino)

アメリカ先住民族のヒーロー、クレージーホース (©Osamu Hoshino)

 

まだまだあるブラックヒルズの魅力

ブラックヒルズ一帯には、他にも見逃せない観光スポットが多数あります。中でも、風と水が長い年月をかけて草原を削り、鋭い尾根、大小のキャニオンを作り出した奇怪な景観が広がるバッドランズ国立公園や、全米の州立公園の中で2番目に大きな面積を持ち、全米屈指の野生動物の保護区としても知られているカスター州立公園などは必見です。どこまでも果てしなく広がる大草原と悠然と草をはむバッファロー、まさにアメリカならではの風景を求めてぜひサウスダコタ州にお出かけください。