ノエラニ・カーシュナー

熱帯雨林といえば、アマゾンやコンゴなどの緑豊かな熱帯雨林を思い浮かべる人が多いでしょう。

実は、米国にも熱帯雨林が存在することをご存じですか?

熱帯雨林とは、年間降雨量が2000ミリメートル以上の地域を指します。世界中の陸地のわずか6%ですが、そこは生命にあふれ、世界の動植物種の過半数が生息しています。

米国内にもこのレベルの降雨量に達する地域がいくつかあり、そのために熱帯雨林や温帯雨林が存在するのです。ここでは、そのうちの四地域を紹介します。

チュガッチ国立森林

アラスカ中南部に位置するチュガッチ国有林(写真上)は、海と氷河期に形成された高山帯に挟まれた温帯雨林を取り囲んでいます。

ここには、ベイトウヒ、マウンテンヘムロック、ウェスタンヘムロックの木々が生い茂り、ヘラジカ、クマ、ハクトウワシも生息しています。森林内に生息するハクトウワシの数は、米国の他地域の生息総数を上回ります。

チュガッチには、氷河や河川、そして広い流域も存在しています。ニューハンプシャー州とほぼ同じ広さでありながら、森林局の道路は145キロしか通っておらず、米国で最も保護された森林地帯となっています。

エルユンケ国立森林

プエルトリコのエルユンケ国有森林にあるバニョ・デ・オロ・トレイル。淵の小川には橋が架かる。2020年3月撮影 (© Joe Ferrer/Alamy)

プエルトリコのエルユンケ国有森林にあるバニョ・デ・オロ・トレイル。淵の小川には橋が架かる。2020年3月撮影 (© Joe Ferrer/Alamy)

米国森林局が管理している唯一の熱帯雨林がプエルトリコのエルユンケ国立森林です。

広さ約117平方キロメートルで、米領内では最小の熱帯雨林の一つですが、生物の多様性では群を抜いています。エルユンケには225種の在来樹木があり、そのうちの23種はここでしか見られないものです。また、絶滅の危機に瀕しているプエルトリコオウムなど、164種の脊椎動物が確認されています。

エルユンケ国立森林の一部では、年間降雨量が6000ミリメートルにも達します。気温は温暖で、一年を通して摂氏21度前後です。

ホー温帯雨林

コケに覆われたスギ、ヘムロック、トウヒ、ヒロハカエデの木々。2021年9月15日、ワシントン州フォークス近郊のホー温帯雨林にて (© George Rose/Getty Images)

コケに覆われたスギ、ヘムロック、トウヒ、ヒロハカエデの木々。2021年9月15日、ワシントン州フォークス近郊のホー温帯雨林にて (© George Rose/Getty Images)

ワシントン州のオリンピック国立公園内に位置するホー温帯雨林は、緑豊かな景観で知られています。年間平均降水量は3500ミリメートルにもなります。

針葉樹と落葉樹が林冠を形成し、その下にはシダや柔らかなコケが群生し、岩や木の幹、林床を覆います。林に生い茂る下草のおかげで、バナナナメクジ、ヘビ、カタツムリ、サンショウウオ、小型のげっ歯類が生態系の中で繁栄しています。

多くのヘラジカ、アメリカクロクマ、マウンテンライオン、ボブキャット、カワウソもこの温帯雨林に生息しています。

トンガス国立森林

アラスカのプリンスオブウェールズ島にあるトンガス国立森林。2021年7月2日撮影 (© Georges/The Washington Post/Getty Images)

アラスカのプリンスオブウェールズ島にあるトンガス国立森林。2021年7月2日撮影 (© Georges/The Washington Post/Getty Images)

アラスカ南東部に位置するトンガス国立森林は、6800万平方キロメートルという国内最大の国立森林です。

ここは、スギ原生林、ベイトウヒ、ウェスタンヘムロックからなる、地球上で最大の手つかずの温帯雨林です。また、ハクトウワシ、ヘラジカなど、400種を超える野生生物の生息地でもあります。アメリカクロクマの生息地としては、世界最大です。

アラスカ先住民は1万年以上前からこの森に住み、現在もここを故郷としています。

バナーイメージ:アラスカ中南部キナイ半島のチュガッチ国立森林にはターミガン湖がある。2021年6月撮影 (© Ray Bulson/Alamy)

*この記事は、ShareAmericaに掲載された英文を翻訳したものです。