アメリカのポップミュージックの歌詞は時に、場所が重要な意味を持つことがあります。作詞家たちは有名な土地の名前を、象徴として歌詞に入れるのです。つまり、その場所を知れば、その文化的メッセージが明らかになります。そのような象徴的メッセージの中には、世界的に有名なものもありますが、アメリカ国外ではあまり知られていないものもあります。それにはちょっとした解説が必要でしょう。
(上の写真:ニューヨークのセントラルパークで歌うジェイ・Z (© AP Images))
ニューヨーク:“Empire State of Mind” ジェイ・Z、アリシア・キーズ
ジェイ・Zとアリシア・キーズがデュエットした“Empire State of Mind”には具体的な地名がたくさん出てきます。歌詞に登場する“560 State Street”(ステート通り560番地)はブルックリンのボアラムヒル地区にあり、1990年代後半にジェイ・Zの家があった場所です。また“out that Bed-Stuy now I’m down in TriBeCa”「ベッドスタイを出てトライベッカに住んで」というフレーズは、ブルックリンのベッドフォード・ステイベサンド地区(略してベッドスタイ)から、マンハッタンのキャナル通りの南側にあるトレンディーな地域トライベッカ(TriBeCa、Triangle Below Canalの略で、キャナル通りの南側の三角地帯という意味)に住むことができるようになった、すなわち経済的な成功を象徴しています。
コロラド:“Rocky Mountain High” ジョン・デンバー
ロッキー山脈は全長4800kmにも及び北米を縦断していますが、その最高峰であるエルバート山はコロラド州に位置します。ジョン・デンバーはエルバート山から60kmほど離れたコロラド州アスペンで暮らしていたことから、自身の芸名の「デンバー」をコロラド州最大の都市からとりました。彼の1972年のヒット曲“Rocky Mountain High”の歌詞は、ロッキー山脈に降り注ぐように見える流星群の情景を描写しています。
フィラデルフィア:“Streets of Philadelphia” ブルース・スプリングスティーン
ブルース・スプリングスティーンの“Streets of Philadelphia”は、トム・ハンクスが主演し、エイズ患者役を演じた映画「フィラデルフィア」の主題歌です。この曲のプロモーションビデオでは、スプリングスティーンが自由の鐘やリッテンハウススクエアなど、フィラデルフィアで最も魅力的な名所を訪れていますが、同時にこの町で最も貧しい荒廃した地区も訪れており、ハンクスが演じた主人公が衰弱していくさまと重なり合っています。
ニューヨーク:“Ho Hey” ルミナーズ
ニューヨークはルミナーズのヒット曲“Ho Hey”にも登場します。ウェズリー・シュルツはこう歌います。“If you took a bus to Chinatown, I’d be standing on Canal and Bowery.”「もし君がバスで中華街に来たのなら、僕はキャナル通りとボウリー通りの交差点に立っていただろう」。アメリカの多くの都市では、安い路線バスが中国人居住地域を結んで運行されています。この歌詞に登場するキャナル通りとボウリー通りの交差点は、ニューヨークの中華街の中心部に実在しています。
ラスベガス:“Viva Las Vegas” エルビス・プレスリー
「ロックンロールの王様」とも称されるエルビス・プレスリーはこの曲で、カジノの町ラスベガスについてあらゆることを教えてくれます。 “Bright light city gonna set my soul my soul on fire / Got a whole lot of money that’s ready to burn / So get those stakes up higher.”「まばゆい光の街は、俺の魂に火をつける」「金なら燃やせるほどどっさりある」「だから賭け金をもっと上げろ」
2002年にラスベガスは、この曲を市の公式ソングにできないかとプレスリーの遺産管理団体と交渉しましたが、著作権問題からその努力はかないませんでした。
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