高地万理子 在日米国大使館 報道室インターン

 「生臭い刺身」や「真っ黒な海苔」など、一昔前の日本食はアメリカ人にとって敬遠されがちな「健康食品」だった。私がニューヨークに住んでいた時、学校のお弁当のおにぎりに巻いてある海苔を見て友人が「黒いのに食べるの?」と驚いていたのを覚えている。しかし、それはもう過去の話。今ではアジアンカフェなどで提供される人気メニューにまで成長している。実はここ数年、おにぎりに限らず、アメリカでは日本食が一大ブームを巻き起こしているのだ。

 1960年代から、日本食は最先端の流行発信地であるニューヨークを中心に発展してきた。2014年ゴールデングローブ賞をとった映画『ウルフ・オブ・ウォールストリート』に出てきたBENIHANAも、元祖海外日本食チェーンのひとつだ。コンセプトは「見ても、食べてもおいしい鉄板焼き」なのだろうが、タワーのように重ねた輪切りの玉ねぎから蒸気を出したり、打楽器のように音を出しながら調理する光景は、日本人の私の目にはとても不思議に映った。

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CC photo from flickr "Benihana Toronto - Onion Volcano" by jara_mae

 最近ではスーパーに行けば中華デリやベトナムデリと同じ割合で寿司が並ぶことが多くなった。日本人になじみ深いかっぱ巻きからカルフォニアロールはもちろん、キャタピラーロール(鰻のかば焼きときゅうりの巻きすしの上にアボカドをのせたもの)やスパイダーロール(ワタリガニの天ぷらとレタスの巻きすし)が、定番メニューとしてAMERICAN SUSHI業界に普及している。

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CC photo on flickr "Ramen Burger- TDB" by ManEatManila

 また、現地の有名アメリカ人シェフと日本の料理人とのコラボにより精進料理や懐石料理のお店がニューヨークに出店され、和食好きなニューヨーカーや評論家たちに絶賛されている。素材の味を生かした料理は見た目も美しく、「食べるアート」としてセレブの間で人気を博している。もちろん、イーストヴィレッジ側にある庶民派日本料理も忘れてはいけない。仕事帰りの一杯を楽しむ居酒屋、関西代表のお好み焼き、そして大注目のラーメンが流行している。あっさりした塩ベースや濃厚な豚骨ベースなどの昔ながらのラーメンの他、最近ではラーメンバーガーがヒットしている。日本にも福島県の喜多方市が商標登録をしたラーメンバーガーが存在するが、これはチャーシューやナルトなどが挟んであり、ラーメンをそのままバーガーにしたような感じだ。一方、日系二世の島本圭造さんが立て役者として考案したニューヨークのラーメンバーガーは、バンズの代わりに焼き固めたラーメンの麺、牛肉パティ、醤油ベースのソース、ねぎ、ルッコラを使う。アメリカンなバーガーと日本のラーメンを組み合わせたこの料理は、まさに多種多様なアメリカ文化そのものを表しているように感じる。

 これからも独自の発展を続けていくであろうアメリカの日本食。今度アメリカに行く機会があったら現地のJapanese Foodをぜひ試してみて!!