「ベートーベンの交響曲第9番を30回以上聴きましたが、今回のアジアユースオーケストラの演奏ほど心を揺さぶられたものはありません」
2015年8月29日、東京オペラシティコンサートホールで、アジアユースオーケストラが創立25周年記念ツアーの最終公演を行いました。これはそのときに聴衆から寄せられた感想です。
コンサートでは、アジアの12の国・地域から参加した、才能あふれる若い音楽家たちが、満員の会場で素晴らしい演奏を披露しました。第9の演奏が終わると、ほとんどの観客が立ち上がり、「ブラボー」と惜しみない声援を送りました。アンコールは、エドワード・エルガーのエニグマ変奏曲から「ニムロッド」。深い感情を込めて演奏される荘厳な曲で、演奏が進むにつれ若い音楽家たちの目からは涙があふれ、鼻をすする音が聞こえ始めました。観客でさえも、涙を必死にこらえていました。オーケストラのメンバーにとって、まさに人生が変わる瞬間であり、生涯忘れることのない思い出として心に刻まれることでしょう。
アジアユースオーケストラは、伝説的バイオリニスト、ユーディ・メニューインと芸術監督・指揮者のリチャード・パンチャスが1987年に設立しました。「私たちは大きな志を持っていました」と、パンチャス氏は立ち上げ当時を振り返ります。「ユーディ・メニューインに、アジアの若い演奏家を集めてオーケストラを作りたいという話をもちかけたところ、すぐに賛同してくれました」。パンチャス氏はニューヨーク生まれで、オーケストラ設立前は、上海、台北、東京で音楽講師として働いていました。そしてアジアの若い音楽家の才能を高く評価し、国際舞台で活躍する道を探してあげたいと考えていました。

アジアユースオーケストラを設立したリチャード・パンチャス(左)とユーディ・メニューイン(右)
アジアユースオーケストラの参加者は、アジア各地で開かれる厳しいオーディションを経て慎重に選ばれます。選抜された17歳から27歳までの若者は、夏に香港で3週間の集中講習を受けた後、ツアーを行います。過去にオーケストラと共演したソリストには、世界的に有名なチェリストのヨーヨー・マやバイオリニストの諏訪内晶子らがいます。
「このプロジェクトには高い緊張感が伴います」とパンチャス氏は言います。「子どもたちは素晴らしい演奏をしなければなりません。3週間でこのレパートリーを美しく弾きこなすオーケストラに仕上げると公言しているのですから。これは安全ネットを張らずに綱渡りをするようなものです。講師陣は子どもたちをオーケストラとしてまとめ上げるという重圧を受け、子どもたちは大きな期待を背負い、1日9時間のリハーサルをこなします」

パンチャスの指導の下、リハーサルをするオーケストラのメンバー
世界各地に若者をメンバーとする地域のオーケストラがありますが、アジアユースオーケストラは他のオーケストラと異なり、選考過程で国や地域ごとに定員を設けていません。選考基準は音楽的能力のみです。これは、選考基準で妥協しないというマエストロ・パンチャスの姿勢を表しています。アジア地域の変化を反映して、長年のうちにオーケストラの国籍別の内訳も変わってきています。パンチャス氏によると「オーケストラ創立当初は日本が大きな役割を果しており、日本人のメンバーが多数を占めていました」が、最近は国別の割合のバランスがとれてきて、日本人が減り、アジアの他の国々からの参加者が増えています。今年のオーケストラのメンバーは、103人中13人が日本人でした。
アジアの変化は他の局面にも反映されています。この点についてパンチャス氏はこのように語っています。「20~25年前には、世界の様相は全く異なっていました。北京の人民大会堂で台湾人のバイオリニストと中国本土のバイオリニストが肩を並べて演奏し、その後南京にある国民党が使っていた建物で公演し、次の日に台北に移動するなんて。当時参加したメンバーは、今も覚えています。彼らは大いに啓発されました」
子どもたちはツアー中、ホストファミリーの家に滞在することもあります。日本人家庭に滞在することになっていた中国人の学生は、パンチャス氏に「どんな気持ちがするかわかる?」と言い、最初はホームスティに消極的でした。しかし、2日後、彼女はすっかり家族に溶け込んでいました。ホストファミリーの赤ちゃんを抱っこしながら、別れを惜しんでいたのです。
音楽は、国籍、文化、言語といった全ての壁を取り除いてくれます。ある日本人の参加者は「文化が違っても、『音楽という言葉』があるので意思疎通は難しくありません。一緒に演奏した後は、幼なじみのような気がしました」と感想を書いています。
パンチャス氏によると、言葉の壁にもかかわらず、さまざまな国から参加する子どもたちは、ある程度の英語を使って互いにコミュニケーションを図ろうとするそうです。「彼らは前置詞やピリオド、コンマなどはおかまいなしです。何らかの方法でコミュニケーションをとっており、それがうまくいっているわけです。彼らは音楽を演奏する、懸命に取り組むという共通の絆で結ばれています」
パンチャス氏はなぜ、わずか6週間で異なる環境で育った子どもたちの間に仲間意識を芽生えさせることができるのでしょうか? おそらく、彼がアメリカ人だということが1つの要因でしょう。つまり、アジア地域出身の人と比べて、彼には文化的なしがらみがあまりありません。

アジアユースオーケストラの芸術監督・指揮者、リチャード・パンチャス
アジアユースオーケストラは参加者に、フル・オーケストラでの演奏を経験し、音楽家としての夢について深く考えるチャンスを与えます。「音楽の仕事には、いろいろな道があります。若者は往々にして一方向にばかり目を向けがちで、他にどのような機会があるのか見えていません。参加者の大多数は、どのような形であれ、将来音楽の道に進むでしょう。彼らはこの出会いがあったから、そして外に飛び出すことを恐れないから、勇気を手にすることができるのです」とパンチャス氏は語っています。
音楽はこうした若者を奮起させる原動力です。しかし、パンチャス氏は彼の取り組みの最大の成果は、友情の構築だと言います。アジアユースオーケストラで得た経験について過去の参加者に聞くと、その答えは皆同じ。「人生が変わった」と言うそうです。

パンチャスの指揮でベートーベンの交響曲第9番を演奏するアジアユースオーケストラ(2015年8月29日、東京オペラシティコンサートホール)
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