リー・ハートマン

1979年、南ベトナムを脱出し、難民としてアメリカに渡ったキー・ホイ・クァン。ハリウッドスターから映画学校の学生に戻り、その後さまざまな経歴を経て、数十年後に映画界最高の栄誉に輝きました。

「私の旅は船上から始まり、難民キャンプで1年を過ごしました」。クァンは3月12日、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』の役でアカデミー助演男優賞を受賞し、こう述べています。「そして、なぜかこのハリウッドの大舞台に立つことになったのです」

家族とともに南ベトナムから脱出したクァンは、父と香港に渡りました。母ときょうだいはマレーシアを経由し、一家はアメリカで再会したのです。

第95回アカデミー賞で助演男優賞を受賞したクァン。2023年3月12日 (© Carlos Barria/Reuters)

第95回アカデミー賞で助演男優賞を受賞したクァン。2023年3月12日 (© Carlos Barria/Reuters)

12歳のとき、弟のオーディションに同行したクァンは、1984年の大作『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』の大役を獲得しました。その39年後、ハリソン・フォードが、かつての共演者にアカデミー賞を贈りました。

現在51歳のクァンは、映画の学位を取得し、スタントコーディネーターや助監督として働いてきました。

『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』はSFアドベンチャーです。クァンが演じるのは、中国系アメリカ人移民一家の夫と父親です。平行宇宙を行ったり来たりしながら世界を救う役です。この作品はアカデミー作品賞を受賞しました。

家族の絆や、仕事のストレスを乗り越えた移民の姿を描くこの映画は、アジア系アメリカ人の共感を呼びました。そして多くの人々が、この映画と出演者の成功を、自分たちは何でも成し遂げられるというサインだと考えています。

アカデミー主演女優賞を受賞したミシェル・ヨーは、この名誉が人々に希望を与えるはずだと語る (© Myung J. Chun/Los Angeles Times/Getty Images)

アカデミー主演女優賞を受賞したミシェル・ヨーは、この名誉が人々に希望を与えるはずだと語る (© Myung J. Chun/Los Angeles Times/Getty Images)

クァンはベトナム系アメリカ人として初めて演技賞を受賞し、共演のミシェル・ヨーは、主演女優賞を獲得した初のアジア人となりました。

マレーシア出身のヨーは、ロンドンのロイヤル・アカデミー・オブ・ダンスでバレエを学んでいました。練習中の怪我がきっかけとなり、演技の道へ進んだのです。武術の正式な訓練を受けていないにもかかわらず、振り付けされた格闘シーンを得意にしてきました。香港で役者として活躍し、自らスタントをこなし、武術のヒーローであるジャッキー・チェンやジェット・リーとも共演しています。

1990年代にはハリウッドに進出。ジェームズ・ボンド・シリーズの『トゥモロー・ネバー・ダイ』や、アン・リー監督の『グリーン・デスティニー』に出演しています。「昔の私のように、今夜これを目にしている小さな男の子や女の子にとっては、希望と可能性の光となることでしょう」と、ヨーは受賞スピーチで述べています。

クァン「このような話は映画の中だけだといわれます。自分の身に起こっているなんて信じられません。でも、これがアメリカンドリームなのです!」

バナーイメージ:難民としてアメリカに渡ったキー・ホイ・クァンは、アカデミー助演男優賞を受賞し、「これがアメリカンドリームなのです」と語った。2023年3月12日、カリフォルニア州ハリウッド (© Rodin Eckenroth/Getty Images)

*この記事は、ShareAmericaに掲載された英文を翻訳したものです。