2歳になるボーダーコリーのグレーシーには任務がある。グレーシャー国立公園初の「バークレンジャー」として、シロイワヤギやオオツノヒツジが観光客に近づかないよう見張りをする。このような役割を担う犬を、犬が「ほえる」ことを意味する英単語“Bark”を用いて「バークレンジャー」(bark ranger)と呼ぶ。

グレーシーは、公園を訪れる人たちに守るべきマナーを教えるパークレンジャーのお手伝いもする。例えば、自撮りしようと野生動物に近づきすぎるのは、動物と人間双方にとって好ましくない。また野生動物に触ろうとするのも良くない。いずれの行為も国立公園では問題となる。

野生動物と観光客の双方を管理するのがパークレンジャーの仕事だ。野生動物が一般の人たちに近づかないようにする従来の方法は、主に大きな音を出すことだが、それには限界がある。

グレーシャー国立公園のパークレンジャーで自然資源管理部長のマーク・ビエルは、他に何か良い方法はないかと考えていた。その時ふと、ペットのグレーシーがレンジャーとして役立つかもしれないと思いついた。

サリー・ジュエル前内務長官、パークレンジャーのマーク・ビエルとポーズをとるグレーシー(NPS/Jacob W. Frank)

サリー・ジュエル前内務長官、パークレンジャーのマーク・ビエルとポーズをとるグレーシー(NPS/Jacob W. Frank)

こうしてグレーシーは、モンタナ州にある、カレリアン・ベアドッグを訓練して、公園内のクマを人に近づけないようにする機関ウィンド・リバー・ベア協会に送られた。

成績優秀で訓練を終えたグレーシーは、オオツノヒツジを追いやる番犬として採用された。グレーシーが姿を見せるだけで野生動物を遠ざける効果があった。恐るべき天敵のオオカミに似ているからだ。「グレーシーを見ると駐車場から逃げ出し、数時間は来なくなる」とビエルは言う。

「オオツノヒツジたちは間違いなくグレーシーを脅威と認識している」と広報担当のティム・レインズは言う。

パークレンジャーが観光客と交流する機会をつくる人気者のグレーシー (NPS/A.W. Biel)

パークレンジャーが観光客と交流する機会をつくる人気者のグレーシー (NPS/A.W. Biel)

野生動物の管理で大活躍のグレーシーは、広報活動にも大きく貢献する。公園を訪れる観光客との交流だけでなく、ソーシャルメディアでの交流も10倍に増やしたとレインは言う。グレーシーのインスタグラム@barkrangernpsのフォロワーは、3日間で4000人から約1万人に急増した。

「グレーシーは野生動物管理を推進する役割を担うことができる。我々のチームの新しいメンバーだ」。レインはこう述べた。

犬はさまざまな形で人間の助けになっている。障害者の日常生活の支援や地雷の探知、ホワイトハウスの警護などだ。

 

公共サービスで活躍する犬たち

ボーダーコリーのパイパーは、ミシガン州トラバースシティーでは有名な存在だ。空港警備犬として、航空機と鳥の衝突を防ぐため駐機場から鳥を追い払う。

ミシガン州トラバースシティーのチェリー・キャピタル空港でパトロールするパイパー (airportk9.org)

ミシガン州トラバースシティーのチェリー・キャピタル空港でパトロールするパイパー (airportk9.org)

カナダガン対策を専門とする民間企業に所属するボーダーコリーたちは、ワシントンのナショナル・モールにいる鳥がさまざまな記念建造物を汚さないように見張っている。リンカーン記念館のリフレクティングプールはかつて鳥のふんだらけだったが、今ではまったくない。

カナダガンを追い払うためリフレクティングプールの内外をパトロールするベル (Courtesy photo)

カナダガンを追い払うためリフレクティングプールの内外をパトロールするベル (Courtesy photo)

グレーシャー国立公園に話を戻そう。ボート検査の日になると、ゴールデンレトリバーのトビアスがこの公園に派遣され、カワホトトギスガイなど外来水生種がいなか嗅ぎ出す。外来種の貝がまん延すると生態系を破壊し、取水システムを詰まらせる原因となる。

外来種がいないかボートを検査するゴールデンレトリバーのトビアス (NPS/A.W. Biel)

外来種がいないかボートを検査するゴールデンレトリバーのトビアス (NPS/A.W. Biel)

ビエルは、来年の夏グレーシーと公園内のローガンパスに戻って来ると言う。グレーシーは、自分に挑もうとする背の高い雄のオオツノヒツジに誰がボスか教えてやることだろう。

3月3日は世界野生生物の日。地球上の野生生物の多様性を記念する日だ。ツイッターで@WildlifeDayをフォローし、ハッシュタグ#WorldWildlifeDayで会話に参加しよう。