リー・ハートマン

地表温度が摂氏460度にまで到達する金星。

この過酷な環境の惑星を探査しようと、アメリカ航空宇宙局(NASA)では、車輪ではなく棒を相互につなげた軽量タイプのロボット型探査車(写真下)の投入を検討しています。

金星の過酷な環境で動作するよう設計されたTANDEM探査車のグラフィックイメージ (Javid Bayandor)

金星の過酷な環境で動作するよう設計されたTANDEM探査車のグラフィックイメージ (Javid Bayandor)

この探査車プロジェクトTANDEMは、NASAが初期段階にある革新的かつ先進的なアイデアを助成するプログラム(NIAC)に選ばれた1つです。

NASAはNIACを「先見性のあるアイデアを育むプログラムで、アメリカの発明家や起業家を探査事業にパートナーとして関与させつつ、NASAの将来のミッションを、大幅に優れた新規性の高いアイデアなど、画期性にあふれたものに変える可能性を秘めたプログラム」と説明します。

NASAが支援する先見性に富んだアイデアのいくつかを紹介します。

まずは他の惑星の地表探査に着目しているプロジェクトです。上は、金星探査用の固定翼機で、金星の大気から放出される熱をエネルギー源として動く設計になっています。ページトップは木星の衛星エウロパに人工衛星を運搬する原子力推進タイプの超軽量型探査機です。

また、今年NIACに選ばれた初期段階プロジェクトの中には、海洋惑星の底を探査するロボットが地球と交信する方法、星の光を使って宇宙を航行する新たな方法、ロケット燃料を作り出す遺伝子組み換え生物などもあります。

NASAの宇宙技術ミッション部門のウォルト・エンジュランド管理官は、「時間とリソースを新たに投入して新コンセプトの研究がどのように進むか楽しみにしている」と期待を示します。

月クレーター電波望遠鏡 (LCRT)

月クレーター電波望遠鏡 (LCRT)。直径3~5キロメートルのクレーターの中に、直径1キロメートルの展開型ワイヤメッシュがある。中央部には吊り下げ式受信機を設置しており、地球からのノイズが低い状態で長波・長電波放射をとらえることが可能となる (Saptarshi Bandyopadhyay)

月の裏側のクレーター内に望遠鏡を建設する構想もあります。この望遠鏡を使えば地球から障害を受けることなく宇宙研究が可能になります。

「この月クレーター電波望遠鏡(LCRT)は太陽系最大の開口電波望遠鏡となります」。このアイデアの提案者サプターシェ・バンドバダエイはこのように説明します。「人類にとって未知の初期宇宙を観測することで、宇宙論で驚くような科学の発見があるかもしれません」