デーブ・オーナウアー

ハリー・チェン選手は、このチャンスを逃すつもりはありませんでした。チェンは生まれてからずっと米海軍横須賀基地で暮らし、基地内にあるナイル・キニック・ハイスクールのアメリカンフットボール・チームで4シーズンプレーしました。しかし今年の1月、彼は家族と共に住み慣れた横須賀を離れ、日本から西に5000マイル離れたバーレーンに引っ越したのです。

チェン選手が飛びついたのは、3月11日に東京のアミノバイタルフィールドで開催される第7回トモダチボウルでプレーし、14人のチームメートに再会するチャンスです。そのために中東から10時間かけて来日し、最後のアメリカンフットボールの試合に参加しました。今はバーレーン・ハイスクールに通うチェン選手はこう言いました。「もう一度、友達やチームメート、コーチたちとプレーしたかったから」

試合は、チェン選手とチームUSAのチームメートが望んだような展開にはなりませんでした。主に日本の大学1年生で構成されるチームライジングサンが、アメリカの高校生チーム、チームUSAに42対8で完勝したのです。けれどもチェンにとっては価値ある試合でした。

「ずっと横須賀で暮らしてきたから、この町は僕の一部のようなものです。試合には勝てなかったけど、チームメートと再会できただけで十分です」

「チームのメンバーはとても良い関係を築いています」とキニック・ハイスクールのコーチで、チームUSAでもコーチを務めるダン・ジョリー氏は言います。「彼らはお互いを大切に思い、信頼し合っています。ハリーは仲間たちともう一度プレーしたかったのです。試合はおまけのようなもので、ただ仲間と会いたかったのです」

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毎年3月の第2日曜日、太平洋地域の米軍基地に付属する12校の高校のアメフト・トップ選手と、日本の大学1年生のベストメンバーが一堂に会し、トモダチボウルが開催されるにあたり、試合自体は多くの点で、どちらかといえばあまり重要ではありません。

フィールドでプレーする以外にこのイベントに何か大きなテーマがあるとすれば、それは「記憶」でしょう。2011年3月11日午後2時46分に東京周辺にいた人なら、そのとき自分がどこにいて何をしていたかを忘れることはできないでしょう。地震が発生したとき、地面がぐらぐら揺れるのを多くの人々が感じ、その後、津波が東北地方を襲う恐ろしい映像をテレビで見ました。

肌寒い日曜日の午後、来場していた2000人を超える観客の多くは、当時、米軍が東北地方の被災者の救援に駆けつけたことも覚えていました。「トモダチ作戦」―トモダチボウルの名前の由来となった米軍の活動です。

トモダチボウルは互いの文化に触れる機会です。日本人とアメリカ人の選手が、アメリカで生まれ、日本でもプレーされるようになったアメリカンフットボールの試合で、ラインを越えてヘルメットとパッドをぶつけ合い、試合後は食べ物や飲み物を広げたり、表彰式で互いの健闘をたたえて、連帯感と友情を分かち合います。

「教育的に見ても、文化交流の点でも、子どもたちにとってまたとない機会で、決して忘れることのない思い出となります」と沖縄のクバサキハイスクールのチーム、ドラゴンズのコーチを務めるフレッド・ベールズ氏は言います。「トモダチボウルは、これからの彼らの人生において、非常に多くの点で、その考え方に大きな影響を及ぼすでしょう。3月11日の震災の映像を見ると、『国には同盟国があり、人々には友人がいる』ことが分かります。この週末はまさにそれを体現しています。教育というパズルの大変価値ある1ピースです」

「異なる国の選手たちが友情を確認する良い機会です」と日本大学のコーチであり、チームライジングサンのヘッドコーチ、森琢氏は言います。

トモダチボウルは1日かけて行うアメリカンフットボールのイベントで、午前中は日米の小中学生によるフラッグフットボールの試合で始まりました。その間ずっと、日本の大学生とアメリカの高校生プレーヤーたちは、フィールド周辺でメインイベントの試合に向けウォームアップをしていました。観客はフラッグフットボールを楽しむ傍ら、フィールドの南西側出入り口近くの売店で食べ物を買い、味わいました。そのなかにはトモダチボウルの日の定番メニュー「タッチダウンカレー」もありました。

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チームUSAとチームライジングサンの試合開始前、両チームは整列して東日本大震災の犠牲者と今もつらい思いをしている被災者を思い、黙とうをささげました。長友貴樹・調布市長が試合開始前に恒例のコイントスを行いました。試合は一方的な展開となり、チームライジングサンが42対8で勝利しました。2010年に「カメリアボウル」で両チームが初めて対戦して以来、最初の4試合はチームUSAが勝ち、その後の4試合は直近の2試合を含む3試合でチームライジングサンが勝っています。ちなみに前半4試合の総得点はアメリカ側236点に対し日本側は51点、後半の4試合は175対70で日本がアメリカを上回っています。

試合後アメリカチームの選手にも各賞が授与されました。韓国のハンフレーズハイスクールのエリック・グライズ選手が「最優秀ディフェンシブ・ラインマン」、沖縄のクバサキハイスクールのコービー・カール選手が「最優秀ディフェンシブ・バック」、東京のアメリカンスクール・イン・ジャパンのジャック・アンブロシノ選手が「最も印象に残ったプレーヤー」に選ばれました。最優秀選手賞は法政大学のレシーバー、神優成選手に決まりました。

表彰式の後、両チームの選手たちが集まって記念に集合写真を撮影しました。その後は小グループに分かれてスマホで自撮りする光景が見られました。

コーチのジョリー氏はこう言っています。「素晴らしい。両チームの友情は測り知れません。お互いの文化を分かち合うのにアメリカンフットボールほどふさわしいものはありません」

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デーブ・オーナウアー
Stars and Stripes紙のスポーツライター・フォトグラファー。沖縄在住。2010年のカメリアボウル、2012年以降はトモダチボウルを毎年取材している。ツイッター@ornauer_stripes