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2007年4月23日にシカゴ国際問題評議会で行った「The American Moment(アメリカの時)」と題する講演からの抜粋

米国民を守ることこそ、すべての大統領にとって最も重要な責務です。そして同じように確信を持って言えることは、21世紀という時代に大統領の職 務を効果的に果たす上で必要なのは、米国が発揮すべき指導力についての新しいビジョンと、国家安全保障に関する新たな構想である、ということです。過去の 教訓から学びながらも、時代遅れの考え方に縛られないビジョンが必要です。
地球規模のテロであれ、世界的流行病であれ、劇的な気候変動であれ、大量破壊兵器の拡散であれ、21世紀の幕開けに私たちが直面している脅威は、もはや国境や境界線によって封じ込めることはできません。昨今のグローバル化した世界において、米国民の安全は、世界中のすべての人々の安全と切っても切り離せない状況にあります。中南米で民主主義を脅 かす麻薬密売や汚職は、米国の問題でもあります。インドネシアの貧しい村人が、鳥インフルエンザに感染した鶏をやむを得ず市場に出荷しなければならない事 態を、対岸の火事だと見過ごすことはできません。パキスタンの神学校で幼い子供たちが憎しみを教え込まれているときには、米国の子供たちも脅威にさらされ ることになります。

米国民の中には、国内にのみ目を向けて、国際問題での指導者という役割を返上したくなる人たちが数多くいるかもしれません。

しかしながら、そのような指導的立場の放棄は、米国が犯してはならない誤りであると、私は強く訴えます。米国は単独で21世紀の脅威に立ち向かう ことはできません。しかし、世界もまた、米国なくしてその脅威に立ち向かうことはできないのです。米国は世界から退いてはなりませんし、また世界を強引に 服従させようとしてもいけません。米国は行動し模範を示すことによって世界を先導しなければならないのです。

私たちは米国民の安全を確保し、すべての人々の安全を向上させるための21世紀型の軍隊をつくり上げることによって、指導的役割を果たさなければ なりません。世界で最も危険な兵器の拡散を阻止するための地球規模の取り組みで先頭に立つことによって、指導的役割を果たさなければなりません。また共通 の課題に取り組み、そして共通の脅威に打ち勝つために必要な協力関係と同盟を構築・強化することによって、指導的役割を果たさなければなりません。

そして米国は、世界の忘れ去られた片隅で、孤立した、絶望的な人生を送るすべての人々に手を差し伸べることによって、指導的役割を果たさなければ なりません。なぜなら、憎しみに屈して、体に爆弾を巻きつける人間は必ずいますが、その一方で、それより何百万人も多くの人々が、別の道を選ぶことを望 み、私たちの希望の光が彼らの行く手を照らすことを望んでいるからです。

米国は、狂人の行進から大陸を解放するために尽力した国です。また、分断された都市に住む勇敢な人々に、私たちもまたベルリン市民であることを伝 えた国でもあります。世界各国で平和使節を務める若者を、何世代にもわたって送り出してきました。そして、壊滅的な被害を与えた津波の被災者のために、ア ジア全土に緊急援助を行った国でもあります。

私たちが指導力を発揮する時が来ました。私たちの世代が、新たな、素晴らしい米国の物語を語る時がやって来たのです。いつの日か、私たちは子供た ちにこう伝えることができます。米国が中東和平を築くための貢献をしたのは、この時代なのだと。気候変動に立ち向かい、人類を滅ぼす危険のある兵器の拡散 を防いだのも、この時代なのだと。世界の忘れ去られた片隅に生きる人々に機会を与えたのも、この時代なのだと。そして、何世代にもわたり、世界中からの疲 れきった旅人たちを導き、米国に機会と自由と希望を見出させてきた米国をよみがえらせたのも、この時代なのだと。